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パンデミック起きたけど生き残る気力がない  作者: ちぐい
二章 ろりと犬とダッシュと編
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2話 なまえ

あざす

 他の子供の話を聞いて田中が話しだす。


「真っ白になってから?じゃあこの子は「田中、お前は他の子連れて外出てろ」え?でも…わ、わかった」


 俺の顔を見て焦ったかのように、子供達にこっちを見させないように出て行った。1人だけこっちを見た子が泣きそうになっていた。え?俺今から女の子と話すのにそんなに怖い顔してて大丈夫?

 両膝を折って少し下から少女に目線を合わせるが少女は無表情のままだ。


「…」


「…よお」


「…」


「…」


 どうしよ、勢いで田中を外に出したけど戻ってきてもらおうかな。


「ん?お前レイって名前なのか、いい名前じゃねえか」


「…」


 少女の胸元には名札が付いていて『かんなぎ れい』と書かれていた。名前を呼んでも少女は表情を変えない。


「…頭が痛くて辛いか?」


「…」


 無表情のままだが、どこか肯定したような気がした。


「そうか、落ち着けばそれも治るぞ」


「…」


「…ほら、俺も同じだ。少し違うけどな」


「…!」


 力を使ってレイに見せると、表情を変えないまま少し驚いたような雰囲気になった。視界の半分が赤くなり、気持ち悪くて吐きそうだけどこの小さい少女のためになるなら安いものだと思えた。


「この力はな、すげぇんだぜ?みんなを守れる特別な力なんだ」


「…」


「でも使いたくなけりゃ使わなくていい、俺が守ってやるからよ」


「…」


「だから落ち着け、な?」


 そう言いながら手を伸ばすと、レイは体を硬直させたが頭を撫でると落ち着いたのか、目が赤くなくなっていった。よかったあ…頭撫でて泣かれたらあいつらに何されるかわかんねえよ…


「楽になったか?」


「…」


 喋らないまま頷いた。


「よし、じゃあこれ食え、俺のとっておきのやるからよ」


「…」


 俺の必殺技『飴ちゃん』を口元に運ぶと、大人しく小さな口に含んでくれた。必殺技を切り口にして、食糧を食べさせることができた。やっぱ飴ちゃんすげえな。


「…とう」


「ん?」


「…ありがとう」


「はは、いいってことよ!」


 頭を撫でると、レイは目を細めた。やばい、すでに撫でるのが癖になってきている。幼女…!恐ろしい子!

 少し落ち着いてから、みんなに合流するために校庭に向かう。しかしなにやらレイが自分の髪の毛を弄っている。


「…」


「その髪嫌なのか?」


「…うん」


「なんでだよ、めちゃくちゃ似合ってんじゃねえか」


「…!」


 そういうとレイは嬉しそうな顔をした(無表情)なんか俺、もうレイの表情わかるようになってきたな。


 会長たちに合流すると、レイを見てみんな驚いたようだが様子を察知してくれてそのまま帰ることになった。みんな大人だな、俺なら絶対騒ぐ。


 ――――――――――――――――――――――――


 その日はマンションで歓迎会を開いた。どうやらこのマンションには俺たち以外にも住人がいたらしい。俺はネコのごたごたで気づかなかったが、3組の家族がいて、食糧を分けるのを条件に俺たちが住むのを許してくれたようだ。それどころか男性陣は探索に混ざってくれるようだ。でもそれって当然のことじゃないのか?こんなこと言ったらまた張られるけど。

 その家族も含めて歓迎会を開いた。家族に関しては歓迎する側じゃねえのか?


 みんなが楽しそうにしているのを蚊帳の外からネコと2人で見ている。やっぱり俺らって浮くのな。ただでさえ会話できないのに加えてこの見た目はなあ。


「キシシ、やっぱりボクらは浮いちゃうね」


「そうだな。まあ浮かなかったところで会話できないしな」


「キシシ、たしかに」


「どうだネコ?馴染めてきたか?」


「…本当にアズマには感謝してもしきれないよ、みんなを裏切ったのに話しかけてくれる人が多かったから驚いたよ、羅夢さんとか」


「ああ、あいつはたぶん何もわかってないだけだ」


「キシシ、それは失礼だよ」


「ケイ、根本くん、2人で何してるの?」


 ネコと話していると詩乃が来た。最近泣いてるとこしか見てなかったから久しぶりにちゃんとした顔見た気がする。


「あ?浮いてんだよ、このままだと宇宙まで浮けるぞ」


「しっかり他の人と話さないとダメよ?」


「お前は俺のオカンか」


「神崎さん、本当にごめん…」


「根本くん、何回も言ってるでしょ?私はもう気にしてないわ。それに、ケイと折り合いがついているなら私はもう何も言うことないもの」


「でも」


「でもじゃない、探索に加わってくれてるし私が文句言うことなんてないわよ。ケイも話し相手がいて嬉しそうだし、こちらがお礼言いたいわ」


「お前は俺のオカンか」


 まだ2人はギクシャクしてるけど、この件に関しては時間が解決すんだろ。

 まだ話している2人を尻目に盛り上がっている方を見ると、田中が小学生組にお兄ちゃんお兄ちゃん言われていて人気だった。小学生組はみんなのことを「◯◯兄ちゃん」「◯◯姉ちゃん」と呼んでいる。ちなみに俺は怖がられているので名前すら呼ばれない、ふざけんな泣かすぞ。

 煙草に火をつけて詩乃にビンタされていると、誰かが俺の裾をクイクイと引っ張った。


「ん?レイじゃねえか、どした?」


「…」


「レイちゃん、このヤニカスに何か用?」


「ヤニカス言うな」


 レイが来たのでつけたばかりの煙草を消しながらレイを見ると何か言いたそうだった。


「…なまえ」


「名前?」


「…たなかにいが、ちょくせつききなって」


「あいつ自分のこと田中にいなんて呼ばせてんのか?おい通報しようぜ」


「無理よ、絶対あなたが負けるわ」


「…なまえ」


「おお、そうだったな。てかまずこいつらから教えるよ。こっちが詩乃だ」


 そう言うとレイは詩乃の方を向く。


「…しのちゃん」


「はーい、よろしくねレイちゃん?私は神崎詩乃って言います」


「…かんなぎれい」


「…」


「おい詩乃、どうした?」


「ほんと可愛い!娘にしたいくらいだわ!」


「…くるしい」


 詩乃がレイに抱きつき、頬ずりをしている。田中より先にこいつを通報するべきだったのか。レイは苦しいと言っているが嫌がっている様子はない。


「それぐらいにしとけ詩乃。レイ、こっちがネコだ」


「キシシ、本名は根本康太だよ。レイちゃんよろしくね?」


「…ネコちゃん」


「猫は好きかい?」


「うん」


「ならネコって呼んでいいよ、ボクも結構気に入ってるからね」


「ネコちゃん」


「キシシ、ちゃんは勘弁して欲しいかな…」


「…?」


 首を傾げている。ネコが女に見えてんのかな、どっちとも取れる顔だから難しいか。てかこいつ本当に男か?


「レイ、ネコはお前と同じ力を使えんだぞ?」


「そうそう、ほらねレイちゃん?」


「…!ネコちゃんもいっしょ」


 そう言うとネコは目を赤くした。やっぱこいつは優しいな。それを見るとレイは喜んだような雰囲気になった。

 その後も4人で話していると、レイがまた裾を引っ張ってくる。


「どした?」


「…なまえ」


「あ、そういえば言ってないじゃない。あなたってたまに名前を教えたがらないわよね」


「キシシ、たしかに。どうしてだい?」


「それに関してはなんとなく教えたくないだけだ。それに、レイは田中たちと関わった方がちゃんと育つと思うから俺とあんま関わって欲しくないんだよ」


「…なまえ」


「ケイ!レイちゃんが可哀想じゃない!会長に言って張ってもらうわよ!」


「張らないでちょーだいよ…」


「…」


「レイ、悪かったな。俺は東京次って言うんだ。よろしくな」


「…けいじ」


「いきなり呼び捨てかよ」

久しぶりに東のフルネーム出ましたね。ちなみにレイの名前は漢字で巫 嶺です。たぶん漢字だったら東は読めなかったでしょう。

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