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パンデミック起きたけど生き残る気力がない  作者: ちぐい
一章 パンデミックがやってきた編
36/76

36話 エピローグ

自分の中の亀さんを許してあげてください

 車の中の静寂と暗闇を切り裂いていくつもの声が生まれそうな時に、ネコが口を開いた。


「…ごめん」


「なにが」


 俺は窓から外を見ているからネコの表情はわからない、決していい顔はしてないだろ。


「アズマの反対を押し切ってデータを盗んだこと…」


「気にすんなよ」


「き、気にするよ!だって、あれには血清のデータがあったのに、それが壊されたなんて」


「気にすんな、お前の立場になって考えりゃ何とも思わねえよ」


 正直、本当に気にしてなかったから大したことが言えない、誰か助けてくれ。


「なんで…なんでアズマは助けてくれたんだい?」


「なんで…ああ、お前が大変そうだったからかな」


「それだけで?だってアズマはボロボロになったんだよ?それに、ボクはアズマのことをあの時ボコボコにしたのに」


 めっちゃ食いついてくんなこいつ。


「だって、俺ら友達だろ?」


「…え?」


「え?そう思ってたの俺だけ?うっわ恥ずかし、黒木先生、ちょっと車から飛び降りていいですか?」


「ダメに決まってるでしょ」


 珍しくキメてやろうとしたらこれだよ、まじで車から飛び降りようかな。ネコの様子を見ると、彼の頬に一筋の涙が溢れていた。え?


「な、なに泣いてんだよ」


「だって、あんなに、傷つけたのに、友達って言ってくれたから」


「だってあれは喧嘩両成敗だろ?お前も傷ついたし、気にはしない。…たしかに俺が圧倒的にボコボコにされてたけどさ、はは」


「ありがとう…ありがとう…!」


「は?なんだよ急に「ありがとう!」いっで!」


 ネコは狭い車内の中俺に抱きついてきた。俺はそっちの気はないんだ。悪いがその面は他を当たってくれないか。


「男が泣くなって!それに、お前はこれから周りの信頼を得るために馬車馬の如く会長にこき使われるんだから、頑張れよ」


「もちろんだよ…!もう二度と誰かを裏切ったりしないよ!」


「そうか」


「…」


 ネコは泣き止んだのに、まだ俺にしがみ付いたまま離れようとしない。


「なんだよ、気持ち悪いな」


「キシシ、相変わらずアズマは厳しいね…一つアズマに言い忘れてたことがあってね」


「みんな、良いところで申し訳ないけれどマンションに着いたわ、降りていきましょう」


「あ、はーい!」


「全然聞く気ないねアズマ…」


 あ?そんなもん後でいくらでも聞けんだろ?今は黒木先生について行くしか脳がないマンになってるから諦めてくれ。体の方も限界だ。

 車を降りて見ると、マンションの前から少し離れた所に停めていたようだ。何故そうしたかというと、別の車が置かれていて、通れないからだ。これ、バリケードなのかな。


 ネコに手伝ってもらい、車を越えてマンションに入ると、いつもの人達が待っていた。もう寝ていいですか?


「あらアズマくん、お帰りなさい」


「よくボロボロの俺見てそんな普通に言えますね…もっとこう、感動してくれた「ケイー!」ブッホォ!?やっぱ良いです!またこれはやだ「アズマっち!」「ケイくん!」「アズマ!」「アズマ氏!」いっでぇ!ハツメテメェ!お前はさっきやんなかったろうが!まじで死ぬ、死ぬから…」

「キシシ!やっぱりアズマは面白いや」


 遠のく意識の中、ネコが笑っていた。その笑顔は今までみたいなどこか暗いものではなく、まるで憑き物が取れたかのような明るい笑顔だった。なんだよ、お前笑えんじゃねえか。


 これから俺らがどう生き残るのか全然わからない、でも、こいつらと居られるならもう少し生きてみようかと思えてくる。自分の中で少し生きる気力が湧いてきた気がした。

 あ、でもその前に死ぬかも。そのまま俺は意識をぶん投げて眠りについた。

とりあえず一章終わりですかね。ここまでありがとうございました。感謝の極みです。

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