34話 コーヒーショップとかあんま行かない、友達いないから
あざす
「あ、ずま……?」
倒れていたネコが、驚いたように俺見上げてくる。そんなに驚くか?
ネコが死ぬような最悪の事態は免れたみたいだな、間に合ってよかったよかった。
〜1時間前〜
俺と詩乃はハツメを会長たちの所に連れて行き、ウイルスに関する話を聞いていると、ハツメが驚くべきことを言い始めた。
「は?血清のデータ?それを山本先生が持ってたってのか?」
「そうです。もともと彼は私からウイルスを盗んだ組織にいたんですが、どうやら表の顔として教師をやっている時に改心したみたいなんですよ。それでパンデミックが起こる前に、血清を作るよう私に連絡をしてきたんですけど…」
「幸治さん…」
黒木先生が口を手で押さえて悲しんでいる。そりゃ自分の彼氏がこんな災害引き起こした組織の一員だなんて知ったら、誰でもこたえるか。
…ん?これってまずくね?
「ちょ、ちょっと待て!」
「なによケイ、いきなり」
「血清ってやつのデータを取り返さないとまずくないのか?ネコの親父はウイルスを盗んだ組織の人間だとしたら、パンダになるのを抑えるデータとかあったら壊しちまうんじゃねえの?」
「「「「「あ…」」」」」
「早くデータを取り返さないと!ハツメちゃん!支部のある場所ってわかる?」
「わかりますよ。でも菜々氏、私が調べたところによるとあの組織の支部長クラスになるとウイルスの力を使って人間を超えてますよ」
「それって普通の人間じゃ無理ってこと?」
「うーん…人によりますね、やっぱり個人によってパフォーマンス能力は違いますから、猛氏とか田中氏なら対応できるかもしれませんが」
みんな慌ただしくなる中、会長だけがこっちを見てくる。いやどんだけガン見してくんのこの人?
「はぁ、会長、俺が行きますよ」
「え?別にそういうつもりで見てたわけじゃ――」
「どっちにしろ早く行った方がいいんでしょ?だったらその力を使える俺が行きますよ。使い方わかんないけど」
「ケイ、あなたまだ怪我してるのよ?」
「だったら誰がネコを助けんだよ?あいつは唯一信用していた親にも裏切られたかも知れねえんだぞ」
「それは…」
「いいから、ネコも力使ってたじゃねえか、あいつがこっちの味方になりゃ2対1だ」
「敵なら1対2になるわよアズマくん?」
「そんときはそんときですよ、恥ずかしいけどあいつは俺の少ない友達なんです。助けられるなら俺が助けてやりたい」
「アズマくん…わかったわ、ただ、絶対に死なないこと、これだけは約束しなさい。また詩乃ちゃん泣かしたらビンタじゃ済ませないわ」
「死んだ人間になにするつもりなんすか…」
――――――――――――――――――――――――
結局、場所を知っているハツメと、車を運転してそこまで連れてく黒木先生と俺の3人で行くことになった。タケさん達はマンションにパンダを近づけないための作業などをやってもらうことにした。ここで戦力を失うのは良くないからな。
移動中、ハツメから力の使い方を聞いた。本当かはわからないが聞いといて損はないらしい。
「あの力を使うには、スイッチが必要らしいです」
「スイッチ?」
「スイッチというものは個人によって違うんですよ。大半は殺意らしいですけど、アズマ氏はどうやって使いました?」
「あんま覚えてねえけど、俺も殺意かな?パンダ全員殺そうとしてたし」
「そうなんですか、では殺意がスイッチだと思って使ってください」
「わかった」
「あと、力にはフェーズがあるらしいんですよ、どこまでパンダ化ができるかの。これも個人によって違います。アズマ氏だと、現段階では1割ですね」
「どうしてわかるんだ?」
「髪の毛の白髪の量に比例するってデータがあるんです。本当かは知りませんが」
「じゃあネコは半分くらい白髪だったけど、俺はあいつに勝てないんか?」
「いえ、そうとも限りません。そこは力の質の話になるらしいです。それにフェーズは成長できるんですよ、その原因となるものは分かってませんが素質によるものなんです」
「へぇ」
難しくてよくわかんねえな。とりあえず頑張ればいいって話だったよな?
「…そういえば、アズマ氏は力を使った代償ってありました?」
「代償?」
「力を使うにはそれに伴った代償が必要なんです」
「なにそれ怖い、俺死ぬの?」
「いえ、代償っていうのは――」
「ハツメちゃん、ここでいいのね?」
「あ、はい、どうやらここの地下にやつらの基地があるみたいです」
話をしていると、黒木先生が車を止めた。少し先にはリア充が溜まりそうなコーヒーショップがあった。あそこの注文わかんないからいつもブラックにしちゃうんだよな。
「じゃあ行くわ」
「アズマくん、私たちはここまでしか行けないけど気をつけてね?」
「アズマ氏!なんとしてでも組織の人間をぶっ飛ばしてください」
「おっけー」
「「軽い…」」
黒木先生たちはここで待っててくれるらしい、それまでパンダは黒木先生が倒すことになってるけど、あの人なら大丈夫だろ。
走ってコーヒーショップに向かう。生きている人間に対して殺意なんて抱けるのだろうか、あの時はパンダ相手だからできたけど今回はどうなるかわからない。
コーヒーショップの前に着くと、壁がガラス張りになっているから中の様子がよく見える。そこにはネコが男に首を絞められている光景があった。それを見たと同時に視界の半分が少し赤くなり始めた。
「あ、大丈夫だ。殺せそう」
相手にバレないように慎重に店に入る。
カランカラーン♪
…なんでドアベルあんの!もう!
幸いこちらを気にした様子はなかったから、コーヒー買いに来ましたよマンを装って近づき、警棒を手に構える。
「ん?すまないが、見ての通り今取り込み中なんだ。後で話は聞ガハッ!?!?」
こめかみを叩きつけると男は吹っ飛んだ。くそ、やっぱビビって本気で殴らなかった。
ネコはというと、咳き込みながら荒い呼吸をしている。もしかしてまだ俺に気づいてないのか?こういう時はなんて声かけりゃいいんだ?あぁ…
「ようネコ…死ぬ時にはあいさつに来るんじゃなかったのか?」
そう声をかけると、首がもげるんじゃないかって程の速さでネコが見てくる。
だめだ、少しカッコつけて恥ずかしくなってきた。
連日投稿してたのにパタリと止んで、自分で驚いてました。ビックリしたぁ。
ほんとすみません。




