30話 二階からは飛び降りるな
あざす
結果から言うと窓から飛び降りた。みんなまじでやるなよ?オススメしない、足がクソ痛い。
よく燃えてる学校を見て、よく燃えてるなあと思いながらマンションに向かう。
道中にもパンダはいたが、学校にいたやつらと変わらず速さは歩く程度だった。
「それにしてもパンデミックの映画やゲーム作る人の想像力ってすげえな。まんまだ…あ、喋っちゃまずいか」
太陽がが出始め、朝日に照らされた町は俺の知っているものではなく、死体がそこら中に転がり、電柱に車が突っ込んだりと酷い有り様だった。
1人の寂しさを耐えるためには独り言を言うしかないが、音を出したらパンダが寄ってくるため喋れなさそうだ。友達は少なかったけど、喋るのは好きだから苦痛だな。友達は少なかったけど…
「くあぁ…お?」
寝不足のため欠伸をしながら歩いていると、パトカーが停まっているのが目に入る。
近づいてドアを開けると、中には警官のパンダが入っていて襲いかかってきた。
「きゃー!?」
なんとか頭を潰すことができた。危なかった…今の誰にも聞かれてないだろうな?
警察とパトカーの中を漁ってみると拳銃と弾、警棒が見つかった。ミリオタでもなんでもないから拳銃の種類とか知らないけど、引き金を引けばいいんだろ?後たしか撃つ時以外は指かけちゃいけないんだっけ、うお!すっげぇ…。
初めて見る生の拳銃に少し興奮する。だって男の子なんだもん。
バットは沢山叩いた所為でひしゃげていたから警棒に持ち替えてそこに置いていくことにした。今までありがとうな、政宗…今日からこいつが政宗二号だ!よろしくな!
寂しさのあまり、警棒を相棒にしてしまった。
ネコにやられた怪我は何故か治っているが、その後についたであろう傷は治ってなかった。具体的に言うと二階から飛び降りた時に少しひねった足とか。
しかし歩くしかないので進んでいくと、マンションが少し見えてきた。あれが会長の言ってたやつか。
会長が言うことによると、あのマンションは災害時でもマンション一つで解決できるとウリにしているため、金の有り余っている人たちが部屋を買うだけで普段は使われていないようだ。それにこのマンションを買う人は都会に住んでいるからたぶん帰ってこないだろう、だそうだ。ほんとあの人なんでも知ってんな。
ようやくマンションに着き、入り口から入るとみんなエントランス?らしき所にいて、一斉にこっちを向いて驚いた顔をしていた。え?なに?
「アズマ!生きてたか!!!」
田中が声を上げる。うるせえな、体に響くだろ。
それにしても何か重い空気だな。ここは一つ、死にかけジョークでもかましてやるか(人と喋れてなかったから少しウキウキしている)。
「え?どうしたの?みんなして死人見たようなか「ケイー!!!」グボァ!?痛え!怪我してんだけ「ケイくん!」ガハッ!?いてててててっ!だ、だから怪我して「アズマっち!」ぐ「アズマくん!」は「アズマ!」話聞いて!?」
まず詩乃がタックルかましてきて俺を抑えつける、その後にみんなが続いて完全に抑え込みに来た。不審者認定ですか?怪我が治ってないから泣きそうなくらい痛い。
「し…しぬ…」
そう言うと詩乃以外みんな慌てて離れてくれた。詩乃さん、あなたも離れなさい。恥ずかしいから。
「ななななんだよ詩乃!ん?お前顔すげーことになってんぞ!ぶはははブッホォ!?え?めっちゃ痛ごべんなさい!?」
恥ずかしさを誤魔化すために詩乃の泣きっ面をイジろうとしたら会長に二発ビンタされた。あの、一応ぼく怪我人なんですけど…。何故かわからないがタケさんが同情したように頷いていた。あんたもなんかやらかしたんか。
「し、詩乃、今のは冗談であって決してお前が可愛くないとかそういうわけではなく、むしろ俺としてはお前は可愛い部類に入るかと――」
「…よかった」
「え?」
「ケイが生きてて本当によかった…」
「…はぁ、ちゃんと遅れて行くって言ったじゃねえか」
「嘘よ、だって生き残る気が少なかったもの」
バレちゃってるじゃん。演技の練習とかしようかな。
演技の練習について考えていると、詩乃が俺から離れた。べ、別に寂しくないし。
「ケイ、おかえりなさい」
「え、あー、うん、ただいま」
真っ直ぐ目を見て言われたので、こちらも負けじと目を逸らしながら返事をした。こんな返事で良かったのだろうか、詩乃は満足したように立ち上がり、どこかに行ってしまう。
他の人も詩乃について行き「よかったねー!」「よかったよかった」「うん、これで気兼ねなく次の作業ができるわね!」「みんな、ありがとう」といった様子で離れて行く。詩乃の笑顔は目が泣き腫れているのにとても美しく、魅力的だった。
…。
……。
………。
…………。
……………。
「あんだけした後に俺放置!?」
豆知識
アズマが名付けている政宗の理由は、なんとなく。
刀についての知識は全く無いから適当につけている。




