20話 幼馴染は見えないもので繋がっている説
あざす
黒木先生と話せたから元気100倍だぜ!!!
俺は用事をすませるために職員室に入った。するとそこには会長とタケさんの幼馴染コンビがいた。
「あら、アズマくんじゃない」
「どうも」
「職員室に何の用?」
「いや、生徒名簿を探してるんですよ。死んだ人の名前とか確認したいんで」
「アズマってそんな事気にすんのか?意外だな」
「仕事もサボれますしね」
「それをよく私の前で言えるわね?はぁ…生徒名簿は私が死んだ人の所に斜線を引いといたわ、たしかそれよ」
「あ、見つかりました。あざす」
えーと2年2年、あった。生徒名簿で死んだ人とか生きている人を確認していく。
「斜線引かれてない生徒多くないですか?」
「ああ、それは死体が確認されてない人たちよ。学校から逃げ切れた人もいるみたいね、今も生きているかはわからないけど」
線を引かれてない生徒の中に俺の数少ない友人の名前もあった。あ、やっぱりあいつ学校から逃げ切れてたのか。でもどっかで野垂れ死んでんのかな?…いやアイツはアホだから生き延びてそうだな…
「そうそう、アズマくんにはまだ話していなかったけど、学校な外に出る準備ができたわ。火葬が終わったらいよいよ外に出るわよ」
「前から思ってたんですけど、なんで外に行くんですか?学校にずっといてもいいんじゃないんですか?」
「危険ではあるけれど、これから向かう場所のメリットの方が大きいからだね」
「どこですか?」
「ほら、数ヶ月前くらいにここからだいたい10キロ離れた所にマンションが建ったじゃない?」
「あー、よく覚えてますねそんなこと」
「あのマンションは近くにとても広い範囲でソーラーパネルを置いて住民の苦情とかで少し有名になってたのよ」
「そうなんすね」
「でもそのパネルのおかげでマンションのだいたい3分の1は補える電力を供給することができるの。金持ちの道楽で作られたのかどうかは知らないけど、今の私たちにとっては喉から手が出るほど欲しいものよ」
「じゃあ風呂とか入れるんですか?」
「そう、重要なのはそこよ。さっき言ったメリットはそこなのよ。私たちは2週間弱風呂に入ってないわよね?体が不潔というのはストレスになるし、なにより病気につながるわ」
「へえ」
生徒名簿を流し読みしながら会長の話を聞く。たしかに危ないけど、危険を冒すだけの価値はあるってことか。
「その他のメリットは近くに田んぼや畑もあって自給自足できることとかかしら、非常食はあるけれど無限ではないしね」
「俺ら農業でも始めるんすか?」
「農業はいいぞアズマ。心が豊かになる」
「そういえばタケさんは園芸部だって言ってましたね。クソ驚いたんで覚えてます」
「そうなのよ。猛は昔から見た目とのギャップがすごくてね、よく見た目で他の人からは勘違いされるけど中身は優しいのよ」
「俺も性格知らなかったら話すだけで漏らしますよ」
「あらそう?私にはわからないわ」
意外だとでもいうように、会長は切れ長の目をぱちくりさせた。この人、容姿は端麗なんだよな。腰あたりまで伸ばした本来なら艶のある髪、体は程よい筋肉で引き締まっているが女性ながらの部位は包まれたいような姿…ブラック企業の社長みたいな中身を知ってるから付き合いたいとは思わないけど。
「だって金髪じゃないですか」
「ああ、これか。これは菜々に、イメチェンでもしてみれば?って言われて髪染めようとしたんだけどブリーチしたまま寝ちまってな、起きたらこの有様だ」
「ドジっ子は似合わないですよ」
「私はドジっ子可愛くていいと思うけど」
「…ずっと思ってたんですけど、2人は付き合ってるんですか?」
「別に付き合ってないわよ?」
「親同士の付き合いで昔からよく一緒にいるだけだ。ガキの頃からの仲だから守れるもんなら俺が守ってやりたいからな」
「めちゃくちゃかっこいいじゃないすか」
「そうなのよー。猛は私専用のナイト様なの」
「それでよく付き合ってないって言えますね…」
「あら?もしかして付き合ってなかったら私に告白するつもりだった?ごめんなさい彼氏はいないけど付き合えません」
「なんで俺は告ってもいないのに振られてるんですかねぇ…」
「はは、アズマ。こいつはやめとけ、お前じゃ手に負えん」
「もちろんそのつもりですよ」
「な!?猛まで言わなくていいじゃない!」
「あ?お前の性格の悪さは筋金入りだぞ?」
「さてと、見たいものも見れたし帰ろっかなー」
言い合いを始めた2人を尻目に教室を出て行く。口喧嘩をしてても2人は楽しそうで、2人だけの世界をすぐに作ってしまった。
いやもう結婚しろよ。
僕の知人に「俺は幼馴染が欲しい!でも幼馴染は幼稚園からの知り合いで家が隣!それ以外は幼馴染とは言えない!異論は認めん!はい解散!」っていう人がいるんですよ。控えめにいって頭おかしいですよね。




