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パンデミック起きたけど生き残る気力がない  作者: ちぐい
一章 パンデミックがやってきた編
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17話 俺のソフレ

ソフレはいいぞ〜

 見張りの仕事が終わり、そろそろ寝ようかと理科準備室に行くと既に詩乃がいた。


「あらケイ、お疲れさま」


「おー、今日は俺がソファだよな。おやすみ」


「ケイ、私明日休みなの」


「そうか、おやすみ」


「だから今日はお話できるわね!」


「ならたまには僕の声も聞いてよ…」


「ほらほら、ソファ座って。我慢してとっておいたお菓子あげるから」


「夜に食うと肌荒れるぞ」


「私、そうならない体質なの」


「無敵かよ」


 ふふん、と平均よりも大きめな胸を張る詩乃を見る。そういえばなんでこんな美人と俺は毎晩寝てるんだ?最初の頃はすぐに田中の方に行くと思ってたのに全然行かないなこいつ。ウキウキした感じの詩乃が話し始める。


「まずは何から話そうかな。ケイは前彼女とかいた?そうよね、ごめんなさい」


「まだ何も言ってないんだけど」


「私もいなかったから安心しなさい」


「意外だな。詩乃ぐらいなら引く手数多だろうに」


「そうね、告白は沢山されたわ。あなたとは違って」


「やかましい、なんで付き合わなかったんだ?」


「あの頃は何もかもつまらなかったのよ。勉強も運動も少しやればできちゃって、友達と話しても全然面白くなかったの。だから、彼氏作っても何も変わらないんだろうなって。あの頃の私はケイには負けるけど目が死んでたと思うわ」


「お前は俺を蔑まないと会話できないの?」


 どうやら才色兼備を地で行く詩乃さんは以前の生活がつまらなかったようだ。持っている人には持っていない人の苦悩がわからないって言うけど、その逆もまたしかりなのか。


「だからパンダが学校を襲ってきても何となく避難しただけだったの。別に助かっても助からなくてもいいと思ってた」


「そう言う割には俺が助けに行った時慌ててたよな」


「そりゃできれば死にたくなかったもの。できなかったら死んでもよかったけど」


「人に生きる気力だなんだ言えねえじゃん」


「今は違うからいいのよ。私、今生きる気力に満ち溢れていると思うわ」


「そうかい」


「あなたのおかげよ、ケイ」


「あ?俺の?」


「あなたに初めて会った時思ったの、『なんでこの人生きてるんだろ?』って」


「ねえ、それ本当に俺のおかげ?」


「あなたはいつ死んでもおかしくないくらいに生気が感じられなかったわ、見ているこっちがハラハラするくらいにね。それで『あ、死んじゃうかも。私がなんとかしないと』って思ったの」


「…」


「ケイ、何か約束しましょうよ」


「は?なんで?」


「あなたがこれからも生きていきたいと思えるようにするためよ。約束果たすまで死んじゃだめだからね」


「別に心配しなくても自殺なんかしねえよ。俺は親からもらった体を粗末にするようなアホじゃねえ」


「自殺じゃなくてもあなたピンチになったらすぐ諦めて死を選びそうじゃない。約束自体はなんでもいいの、最後まで諦めずに抗って欲しいのよ」


「お前との約束がそうさせるってか?」


「そうよ?こんなに可愛い子との約束だもの、守らないわけにはいかないじゃない」


「ふっ、自分で言い切るのがお前らしいな」


「決定ね!何にしようかしら…ボウリングがしたいわ。ここは海なし県だから海を見に行きたいわ、これはマストね。あと、映画も一緒に見てみたい。それからそれから…」


「多い、多いよお嬢」


「あら、楽しみは沢山あった方がいいじゃない?」


「てか約束ってそんな感じのやつなのか」


「うん。ここで堅っ苦しい約束をしたってしょうがないでしょ?」


「そういうもんなのか?何でもいいけどよ」


「それから。もうすぐここを出るけど、余裕ができたらまたここに戻ってきて一緒にソファに座ってお話ししましょ」


「わかったよ」


「約束だからね!」


「保証はないけどな」


「ふふっ、あなたは守ってくれるわ。そんな気がするのよ」


 それから俺たちは今まで出会ってこなかった分を埋めるように沢山の話をした。詩乃はクォーターで茶髪の髪は地毛だとか、俺は小学校まではクラスの中心人物だったとか、これは一切信じられてなかったけど…とにかく沢山話した。好みはほとんど同じだった時はふざけて合わせてるだろと喧嘩になりかけた。


「今日はとても楽しかったわ。そろそろ寝ましょ」


「ああ、俺も楽しかったよ。おやすみ」


「あなたがそんなこと言うなんて珍しいわね…ねえケイ?」


「あん?」


「これからは一緒に寝てもいいかしら?」


「は?」


「ほ、ほら!最近寒くなってきてるじゃない?だから添い寝をした方があったかくて寝やすいかなーって」


「あー、でも寝れるのか?」


「なに?私がビビってるとでも?」


「いやそうは言ってないけど…恥ずかしいじゃん」


「あら、美人と寝れるチャンスよ?」


「んー、それもそうだな」


 深夜テンションとでも言うのか、俺たちは一緒にソファに寝転んだ。寄り添えばなんとか寝れるくらいの広さだから俺と詩乃は同じ方向を向いて密着した。


「…て、照れるわね」


「だから言ったろ、やめるか?」


「やめないわ、温かいのは事実だもの。ほらケイ、腕貸して」


「え?腕枕って痺れるんじゃないの?」


「いいから!」


「耳元で叫ぶなよ…ほら」


「ふふ…おやすみ」


「ああ、おやすみ」


 最初は心臓が破裂するんじゃないかって思うくらいにバクバクしていたけど、少し経てばうとうととすぐにでも寝れそうになってきた。こいつ頭軽いな、ちゃんと脳みそ詰まってんのか?

 風呂には入れてないので詩乃はお世辞にも臭くないとは言えなかったが、体臭なのだろうか、いい匂いもしてきた。この匂い前にも嗅いだことあるような…なんでもいいか、もう眠い。母さん、彼女はまだだけど俺にもソフレができたよ。


「ケイ…私を置いて死なないでね」


 遠のく意識の中詩乃の声と、おでこに濡れた感触があった気がした。


 心配すんな詩乃。俺はモブキャラでも、ちゃんとかっこよく死ぬタイプのモブキャラだから…


 そこで意識は完全に途絶えた。

今回みたいに会話文の間にスペース入れた方が読みやすいですか?これに関しては感想欲しいです。感想の見方わからないんで困ってますけど。

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