1話変質者来た時の放送ってあるよね?
開いていただきありがとうございます。
元々、生きることに興味がなかった。
あの時から俺の芯にあるものは腐り果てていた。
海外はもちろん県外にもあまり出たことがない自分にとっては、住んでいた田舎町だけが自分の世界だった。
しかし本日、俺の世界は終わりを告げ―――
てかなんなら俺の世界以外も終わり告げられてね?俺の世界とかかっこつけて言ってみたけども、なんだよそれ。もうわけわからんわ、なんでこんな目に遭うの?泣かしたいの?なら成功だよ、俺泣きかけてるもん。
閑話休題
そんな世界が終わりかけている中あの女は俺に言いやがった。
「あなたはこれからどう生きたい?」
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2年に進級し高校生活にも慣れ、周りは新しく入学してきた後輩とも良好な関係を築きはじめた今日この頃。私、東 京次は後輩とも先輩とも関わらず、いつものようにつまらなそうに学校生活を送っていた。つまらないからと言って授業をサボったりしたことは数えるくらいしかない。真面目だから、俺。
「アズマくん」
「はい?」
「ここの文章を現代語訳してください」
先生、理系を舐めてもらっちゃ困りますよ。
「わかりませ「大変だ!みんな逃げろ!」は?」
教室のドアを壊す勢いで開け、大声で叫びながら男が入ってきた。あいつはたしか…
「田中くん、どうしたんですか?授業中に」
「先生!あいつらが生徒指導の山本先生を…とにかくやばいんだって!」
「山本先生?落ち着いてください田中くん、山本先生がどうしたんですか?」
「あいつらが山本先生に噛み付いて…」
その時、ぱりん、と遠くから窓ガラスが割れた音と叫び声が聞こえた気がした。
『豊田先生、豊田先生、至急体育館に来てください』
これは変質者が来た時にする放送だ。豊田先生なんてうちの学校にはいない。
『豊田先生、豊田先生…あ、あなた誰ですか!来ないでください!警察呼びますよ!え?痛っ、やめ、いだだだ――――』
え?嘘でしょ?なんか襲われたように聞こえたんだけど。放送が止まってから数秒間。教室には誰もいないかのような静寂が訪れた。しかし、女子生徒の叫びによって軽井沢の別荘のような静けさから激安タイムセールのような騒がしさになった。
「キャー!」「何が起きたの!?」
「に、逃げようぜ!」「今の声はやばいって」
「おい!どけよ!」「どうするの!?」
「押さないで!」「電話繋がらねえぞ!」
うるさいな、あんまり騒ぐなよ雑種。と厨二病のようなことを考えながら俺はすでに教室を出て一階の昇降口に向かっていた。
昇降口につき、靴に履き替えていると
「おいっ、お前!」
誰かと思えばさっき叫びながら教室にきた田中くんじゃないか。
「…なに?」
「外はまずい、あいつらが数人いるぞ」
まじかよ
「田中はどうするんだ?」
「とりあえず職員室に逃げ込もうと思う」
「職員室は二階だぞ?まさか、俺のために…?」
「んなわけあるか!一階にいる後輩を連れに来たんだよ!てかお前だけなんで昇降口にくるの早いんだよ!」
「いや普通だろ、そんなことより後輩を連れてこなくていいのか?」
「そうだった、こんな奴に構ってる暇ねぇ、早くあずさを連れてこねえと。お前も手伝ってくれ」
「そのお前って呼ぶのやめてくれよ、俺には名前があんだよ」
失礼な奴だ
「す、すまんアズマ」
「知ってたんかい、まあ外が無理なら職員室で時間を過ごすのはいいかもな、よし、お前の案に乗ってやる」
「っ…皮肉な奴だな!とりあえず武器になりそうなものを持て!棒状のやつがいい、噛まれたらおしまいだと思うからな」
「りょ」
2人とも清掃用具入れからモップを取り出し、あずさちゃんとやらがいる教室に向かうと、1年の教室も阿鼻叫喚の巷と化していた。
「あずさ!どこだ!」
「大毅先輩!」
あらかわいい、腹が立ってきたぞ。
そこには茶髪ショートにパーマをかけていて、ぱっちり二重で元気はつらつそうな女子がいた。
「とりあえず職員室に逃げ込むぞ!付いてきてくれ」
「はいっ…あっ、この子も連れてっていいですか?」
「す、すみませんお願いします」
あらまたかわいい。この子は黒髪ショートで日本の美人さんって感じだな。てか田中って大毅って名前なのか。
「数人なら構わない、こっちにも1人助っ人がいるから」
「え?それって俺のこと?」
「当たり前だろ!こういう時は男が助けてやるんだよ!」
吐き気がするかっこよさだな
「えぇ…」
「あなた大毅先輩の友達でしょ?ちゃんとしてよ!」
なんでタメ口なんだよ、緊急事態だがここはひとつ年上としてガツンと言ってやるか。
「ごめんなさい」
「よし!あずさ行くぞ!」
「他の1年はほっといていいのか?」
「今は自分達だけで精一杯だ」
「意外とそういう判断はできるのな」
「安全な場所を確保できたら助けに行く」
「やっぱアホだった」
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外に出ようとする生徒の波に逆らいながら職員室に向かうと、職員室周辺に人はいなくなっていた。
「よし!とりあえず職員室に入るぞ!」
田中を先頭にして職員室に入ると先程漢文を教えていた黒木先生が1人でいた。
「あ!あなたたち無事だったのね!よかった…」
「先生!他の先生はどこに?」
「みんな逃げちゃったのよ、自分の身を案じて」
「先生はなぜここに…?」
「生徒の安全が第一よ、それに何が起きているのかも把握しないと」
いい先生なんだなあ、と会話に参加せず聞きながら外を見てみると。外では生徒が変質者に噛み付かれ、見るに耐えない光景が広がっていた。さらには喉元を食い千切られて事切れていた生徒が立ち上がり逃げ惑っている生徒を襲っていた。…これはまずい。
「おい田中、まずいぞ」
「何がだ」
「外の様子を見ていたけど変質者が増えて校内に入ってきている」
「何!?どうするか…」
「え、どんな感じなんですか?」
「お前は見るな!ちゃんと覚悟してから見たほうがいいぞ」
「は、はい」
「あ、ごめん」
美少女に怒鳴ってしまった。涙ぐんでるじゃないか、減点。
俺があずさちゃんに謝っていると田中が話し始めた。
「黒木先生、この学校に防火扉はありますか?」
「もちろんありますよ、ただこの学校は広いので全部閉めるには時間がかかります」
「俺とアズマで手分けして一階から二階に繋がる階段の防火扉を閉めてきます。まだ二階にはあいつらが上がってないだろうし安全性は格段に高まると思います」
「おい、また勝手に俺を巻き込むな」
「大毅先輩がやるんだからあなたもやりなさいよ!」
おいおいあずさちゃん。数秒前に泣かされたの忘れちゃったの?しょうがないからガツンと言ってやるよ。
「わかりました頑張ります」
「悪いわね、アズマくん。それと田中くん、先生も行きます。これでも空手の段位を持ってるんだから」
「なるほど、気をつけてください。あずさ達はここにいてくれ、他の生徒が逃げてくるかもしれない。ただ噛まれているかどうか確認してくれ、確認できるまでは鍵をかけたままでいい」
「わかりました!」「わ、わかりました」
「よし!行くぞアズマ!」
死なないように祈っとくか。特に信仰もしてないからさっき見えたあずさちゃんのパンツにでも。
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