3.スター☆彡レボ★☆彡リュー☆彡ション
ワォンチュー!! キミのハートに、レヴォリュー↑ション↓!!
もうそろそろ時間なので、マスターにお礼と挨拶をして、私は喫茶店を出た。
〔……徒歩なんだから急げよ。遅れるぞ〕
分かってますー。もう、イグニスは心配性なんだから。
ARフォンをつけたまま、そしてスター☆彡レボ★彡リュー☆彡ションを立ち上げたまま、私は街道を歩く。
もちろん、天才的な私のこと。あたりに警察官がいないかどうか常に確認しながら、炎の体を持ったイグニスにあらかじめ曲がり角を確認してもらってから先に進んでいる。……いやまあイグニスが言い出したことだけど……と、ともかく! このプロっぽさ! もはやエスパー! わっはっは!
〔そんなんやってるから遅れるんだろ……〕
言いながら、律儀に〔クリアだ〕と言ってくれるイグニスはなんだかんだいい頭の中の住人だ。わるい住人にあったことはないけど。
ちなみに、イグニスはなぜか、このスター☆彡レボ★☆彡リュー☆彡ションを起動すると見えるようになるのだけど、他の人が同じくスター☆彡レボ★☆彡リュー☆彡ションを起動しても、イグニスの姿は見えないらしい。まさに頭の中の住人。
こういうのを幻想友達……だっけ? とかなんとか言うらしいんだけど。まあ困ってないしいっか。
そんなこんなで、無事学校です。
校門前は人がいないけれど、どんと広い校庭が続くのでまっすぐ進めば丸見えだ。
物陰に、葉っぱを被って隠れながら、私は学校の様子を見る。
〔早く行け〕
待ってイグニス。今何時?
〔……。9時45分だ〕
ふむふむ。まだぎりぎり授業中……つまり皆は机にべったり。これは目立たず行けるよ!
よっしゃーゴーゴーゴー!!
五秒後、校門の裏に隠れた体育教諭のおじさんゴリラにつかまって説教でした。なんでそんなところに隠れているのか聞いたら、次の授業に備えて罠を仕掛けていたんだそうです。なかなか知的ね。
さて、私たち1-B組の二限目は、皆大好き“超能力科目”、通称「超力科」だ。外履きと体操服になって、今私たちがいるのは校庭。太陽が眩しい。
──はい、そういうわけでやってまいりました第何回目かの超力科! 今回はうちのクラスのイかれたメンバーを紹介するぜ!
はいエントリーナンバー1! わたしです! 安済ほのか!! 説明不要!! 美少女サイキッカー、あるいは変な声が聞こえる人!! もしくはそのどちらもいいとこどりのスーパーウーメンことわたしです!!
で、2番目ェ!!
「ひっ。な、なに、ほのちゃん」
しっとりつやつや長めの黒髪! 前髪で見えぬお顔はしかし、上げて見てみれば超かわいい!! ちょっと色々控えめなところもまたかわいい!! わたくし自慢のお友達!
「その名は!?」
「え……わたし、の名前? なんで今……あ、わかった、わかったから」
早く早くとうりうりしたら、ほっちゃんは名前を言ってくれた。……あ、言っちゃった。
「えと、万乗 加歩です。よろしく……?」
「いつもよろしくね!」
「? う、うん」
私のマイベストフレンズことほっちゃんとハイタッチをかまして、よし次!
ナンバー3! 名前は天蓋 才湖、私の最強最悪なエスパーライバルである!
あそこにいる金髪ロングがそうだ。
きれい、きちがい、きわどいの3Kそろって、一部の男の人たちには人気がある。さらに一部の女の子からも人気があるので一部は完璧ぱーぺきな人物と言えるだろう。うむむ。
……まあサイコのことはもういいや。 メンバー紹介続き続きと。
で、4人目! 男の人……えーっと……あ! とんで7人目まで、みんな男の人だよ! つまり、男の人がこのクラスは全部で4人だぁ!
はい八王子! じゃなかった、八番目。これでラストだ。
そう、このクラスの人数は全部で八人である。だいぶ少ないと思う。
……かもだけれど、うちの学校は少数精鋭の方針だそうで、1年生から三年生の全部を合わせてみても100人にもならないらしい。そうなんだ。へー、ありがとほっちゃん!
ちなみに栄えある八王子番目に輝いたメンバーはお休みです。たまにくるけどほとんど学校に来ません。うーん。
「……というか、お前は何をしれっと混ざっているんだ安済」
「あ、せんせー。おはようございまーす。今日もいい天気ですね!」
そして、今現れましたこの人こそ1-B、影の009! プロフェッサーJD! 生粋のJD! 教育実習生だそうです!
「……後で職員室に来い。いや、授業が終わったら連れていく」
「いやー!? 嫌ですせんせー!」
「駄目だ。そろそろ覚えろお前も」
「そうだよ、ほのちゃん」
ほっちゃんまで……!? おのれはかったなJD!
「……休みかと思って、いつも心配するんだから」
ほ、ほっちゃん……!!
チャイムが鳴った。
1-B全員が集まっているのを確認できたのか、JD先生はぐるっと周りを見て、あと腕時計をちょっと見てから、私たちに呼びかけた。
「では、授業を始めるとしよう。……とはいっても、やることは前と変わらんな。全員、スターレボリューションを起動しろ」
せんせー。発音が違いますよー? スター☆彡レボ★☆彡リュー☆彡ションです。そんな声があちこちから飛ぶ。
「いいから早くつけろ。潰すぞお前たち」
きゃーこわーい。
そういうことでスター☆彡レボ★☆彡リュー☆彡ション起動。ヴぃいいい、とARフォンが全開して、視界を塗り替えていく。
あ、言ってなかったけれど、ARフォンのような電子機器は学校から貸与されているもので、授業中は着用が義務付けられている。だから、こうして堂々RPGゲームのアプリを起動なんてしてもばれなきゃセーフですよ! というわけなのだ。
まあ、超力科の授業にこのゲームは欠かせないから、セーフもセーフなのだけど。
「──今日は『伯爵城』かあ。暗いんだよね、ここ」
〔明るくなったくらいで力の精度は変わらんだろ〕
スター☆彡レボ★☆彡リュー☆彡ションは、さっきも言ったかもだけど、ファンタジーな並行世界がARフォンで見えるようになったーとか、とにかくそんな感じの設定をしたMMORPGだ。
だから、こうして起動をすると、イグニスが見えるようになる以外にも視界に変化がある。
空は夕焼けもかくやの真っ赤っか。太陽の位置にあるのは、白く白光しているはずなのに空の色せいでピンクっぽく見える満月だ。
土のグラウンドは妙な草っぱらに、敷地外周の校門は洋風の城塞門に。そして、校舎はすごいとんがった血錆の洋館へ。
要するに視界がこんな風にファンタジー世界になるのだ。ステージ選択みたいなものかな。
「さてと」
「あ、いた、ほのちゃん」
「……ふふふ、ここであったが何年目だよほっちゃん!」
視界にREADY? と60秒のカウントが表示されて、59,58……と秒間で減っていく。
その向こうには、道着に各所プロテクターを装着した姿のほっちゃんと、各所、一対一で構えをとる人たちが何組か。最初は私とほっちゃんで模擬戦だね。
周りを見て、転がっているアイテムや他の組とぶつからないかを確認すると、私は構えをとる。
──このゲームは、こうしてファンタジー世界を追体験できる。だけど、視界だけそうなってもそれはそれで味気ないものだ……と、作った人は思ったのかもしれない。
そこで各プレイヤーは、ゲームを遊ぶための色々なサービスを図ってもらっているわけだ。それはゲーム内の装備だとか、洋服だとか。
そのサービスの最たるものが、プレイヤー1人1人に異なる内容の特殊能力を授けること。つまり、超能力である。
ここで、当初の目的はなんだったっけかというと、二限の超能力科目。そう、超能力についてのお勉強だ。
……ふふふ、天才的な方々はもうお気づきかもしれない。現に私もその辺で気づきました。えっへん。
「よし、授業記念に爆発させるね!!」
〔アホ。……まあいい、どうせなら派手にやれ〕
「っ、ほのちゃん、やめ──」
このゲームは現実の超能力を反映するそうです。
つまり爆発させ放題なのだー!!!
万乗 加歩
高校一年生
能力:身体強化
天蓋 才湖
高校一年生
能力:精神干渉(魅了系)