1-6. 「オツェン神」
読んでくれている方々、有難う御座います。
暑さにめげずに更新していきます!
白い髪、白い髭を蓄た顔が俺を見下ろしている。
歳は30台後半だろうか。
ベロベロベロベロベロベロー
舌を出して顔を崩している。
俺はそれを凝視する。
ヘトロス=シーファ
彼が俺の父親に当たる。
俺をあやしているのだが、俺からの反応が無ければこれを永遠続ける親馬鹿だ。
仕方ないなぁ。
俺がキャキャッと笑うとシーファは満足したように部屋から出て行った。
「あなたも大変ねぇ」
寝かされているベビーベッドの横から、カラカラと笑う声がした。
未発達で首が動かないので、目線だけをそちらへ向ける。
「あらあら、まだ首も動かせないのね」
ブロンドのおかっぱ頭が俺の顔を覗く。
子供だ。
艶めかしい声の主は赤いボディースーツを着てないどころか、不〇子ちゃん体型でもない。
騙されたっ!
オレオレ詐偽にあった気分である。
「はじめまして。
私がこの世界の、そうねぇ、管理人て言うのかしら、オツェンよ。
ヤマちゃんに救世者候補の支援を頼んだ者よ」
ほほぅ。
詳しく聞かせてもらおうか。
喋れないから聞くだけだがな!
「魔波旬の群勢が強力でね、私だけの力じゃ追いつかなくなってきちゃったのよ。
だからちょーっと協力して欲しくてね。
ヤマちゃんが貴方とは契約済みって言ってたけど、この世界のことはどこまで聞いてる?」
ねぇさん、すまんの。
ワイは未だ喋れんのや。
と、眼で訴える。
「あらあら、言葉も喋れないの?赤ん坊みたいね!」
カンラカンラと笑う。
――赤ん坊だわぁぁぁあ!!!
あほぉぉおぉおおおおお!!!
「今ならもうちょっといじれるかしらねぇ」
オツェンはそう言うと俺の顔に手を当てる。
ポゥッという光と共に暖かい空気に包まれる。
「はい、おしまい。もう喋れるわよ」
はやっ。
一瞬の出来事であった。
「喋れる?ほんまかいな」
――はっ!!
今のは俺の声か!?
「うんうん。ちゃんと機能している様ね。
で、ヤマちゃんからはどこまで聞いてる?」
「あ、はい。えーと、」
自分のやたら高い声に困惑する。
「救世者候補として魔波旬を浄化しろ、と。
あと、詳しいことは要請者に聞け、と」
「はぁっ!?丸投げじゃない!!
相変わらず適当なヤツね!」
オツェンさん激おこである。
「あ、あと、私の異世界とか天界とかと繋がる力がこの世界に向いてる、みたいなことを言ってました」
「……なんだ。ちゃんと仕事してるじゃない。その通りよ。
入れ物は変わったけど基本的な思考とか特性はそのまま引き継がれてるからね。
ヤマちゃんからある程度は聞いてたけど、
貴方の魂には驚いたわ。
こんなに入り易い魂は初めて」
――魂???
「その辺は聞いてなかったかしら?
私みたいな天界の存在とかは無制限に世界に干渉できるわけじゃないの。貴方の世界でもそうだったでしょ?
干渉するための中継地点が必要でね、その中継地点の一つが生物の魂なのよ。
それも浄化された魂じゃないとダメなの」
「じゃあ私の魂は非常に澄んでいるということですか?」
ふふふふ。
心の清い高山さんは伊達じゃないってことか。
「あれちょっと魂が濁ったみたい。
何か変なこと考えてるでしょう?」
――なんと!!
邪心が速攻でバレた。
「す、すいません」
「この程度ならすぐに浄化されるから問題ないけど、慎む様にね?
で、この世界、魔法者世界は貴方が知ってる世界、貴方は娑婆世界出身だったかしら、そことは少々事情が違うの。
各々の世界にはその世界の理があってね、この世界は娑婆世界よりも天界や異界との通路が広いのよ」
「通路が広い……?」
「そっ。
んー、そうねぇ、例えばね、私が水のタンクだとするじゃない?
その水を器に移す時のパイプ、これが太いのよ。この世界は。
で、その移す先の器が貴方ってこと」
「ははぁ、じゃあ地球、娑婆世界のパイプは細かったってことですね?」
「そうそう。でね、器が汚いと水が汚れちゃうじゃない?
だから私たちも綺麗な器にしか移動出来ないの」
――なるほど。
非常に分かり易い。
「貴方の器は異常に綺麗なの。だから前の世界で天界とかとリンクし易かったのね。
魔法者世界なら、貴方の力は100パーセント活かされるわ。
貴方の得意なリンク先は、不動さん、だったかしら」
「えっ、お不動様をご存知で?」
「そりゃあ私はこの世界の神だもの。
色んな世界の神や仏は知っているわよ。
この世界でならかなり強力にリンク出来るはずよ。ちょっとやってみなさいな」
「あ、はい…」
俺はお不動様をイメージする。
すると地球では感じたことの無いほどの力を感じた。
お、おお!?
なんじゃこりゃ。
熱い水流が俺の中に轟轟と流れ込んでくる
キタキタ、キターーーーーーーーーー!!!
ずんっ、と俺の頭の横に何かが立った。
それは紛れもなくお不動様であった。
燃え盛る火炎を身にまとい、剣と羂索をその手に持っている。
しかし、一つ奇妙なのは、
小さい。
まるで、そう、ねんどろいど化したような姿である。
お不動様がゆっくりとこちらに顔を向ける。
「……うぬは高山だな?」
俺をぎろりと見る眼は、ねんどろいどのそれでは無かった。