078 プチ修羅場
修羅場って言うのかどうかはわからないですがね
こたつの魔性の魅力から抜け出したラン王女の尻尾に、アルは回復魔法を久しぶりにかけた。
この回復魔法だが、使用することはめったにない。
精々タンスの角に小指をぶつけた時ぐらいである。・・・人化していて激痛を感じたのってそれが多分一番だろう。
おのれタンスの角め!!すぐに丸く削ってクッション材で痛くなくなるようにしたやったわ!!
おっと、魔法をかけている最中だった。
ラン王女の尻尾は、お尻と腰の間らへんにあり、服の間から出ているのが見て取れる。
その尻尾の付け根のあたりに手を持ってきて発動させる。
「『回復魔法』」
今回はその部分だけを集中的に癒すのである。
「はぁぁっ・・・・・なんか気持ちがいい・・・」
とろんと、ラン王女がとろけたような声を出す。
ちょっとドキッとするからやめてくれない?
「・・・いいですね、気持ちよさそうで」
なんかアリス姫がうらやましそうな目をしてみているけど、この魔法って怪我人以外には効果はないぞ・・・・多分。
とりあえず、痛みもなくなったようなので、魔法を止める。
「これでいいかなっと」
「もう少し・・・いえ、大丈夫になりました」
今なんか妙な声が出たが。
「さてと、それじゃあラン王女はまだ修行の旅に出るのか?」
話的にはそういう事だしね。
「そうしようかと思いましたが・・・・ふと思いつきました」
キランと一瞬ラン王女の目が獲物を見るかのような目になったような気はする。
ん?今ちょっと背中に悪寒が走ったぞ。
「アル、あなたは公認モンスターですよね」
「そうだけど」
「で、強いってことですよね。実際に戦ってますし、その強さは身に染みてます」
「そうだけど・・・何が言いたいんだ?」
「その強さの秘密を、私は知りたいと思うのです。ですので、しばらくここに滞在して、あなたの強さの秘訣を見つけるまで観察していいでしょうか?」
・・・・・はぁ?
「いや、モンスターに強さの秘訣ってそれは、「だめですよ!!」・・・アリス姫?」
いきなりアリス姫がそう叫んだ。
はっとしたかのように口を押えて、落ち着く。
「こほんっ、ええとですね、あなたは一応修行の旅でしょう?一か所にとどまっていたら意味がないのではないですかね?」
「ですが、アルの元なら強くなれそうですよ。そこにいる鳥も通常とは違っているようですし」
ラン王女が指さした先にいたのは、こたつに潜り込んでいたピヨ吉たち。
「コケ?」
「ココ?」
「見たところ、雷鶏でしょうが・・・・通常のよりも明らかに体も大きく、羽毛もふわふわです」
「それは・・・・確かにそのように見えますけども」
うん、この2羽通常のとは違っているからね。原因俺の魔力だけど。
「このような動物たちにまで変えてしまうような力のもとにいるならば、私もさらに強くなれるような気がするのです!!」
ずずぃっとラン王女にアルは詰め寄られた。
何だろう、妙な迫力と説得力があって何も言い返せない。
というか、自覚ある部分もあるので余計に何も言えない。
「ですが、アルにとって迷惑ですよ!!いきなり押しかけてきて、ついでに滞在するというのもです!!」
「それを言われると何も言い返せないですね・・・・」
アリス姫の言葉に、言い返せないのかしゅんとラン王女がうなだれる。
尻尾もうなだれて分かりやすい。
とりあえず、今日のところはここで引き下がるようで、服も乾いたし、ラン王女は着替えて俺の家から出ていったのであった。
「なんか嵐の様だったな・・・」
「・・・・でも、まだあきらめてませんわね」
アリス姫がポツリとつぶやく。
・・・なんだろう、俺も同じ意見なんだけど。あの王女がそう簡単に引き下がらないような気がするのだが?
何だろう、作者も同じように感じる。
こういう時って、大抵おとなしく見せかけて頭をよく働かせていそうだよね。
まだまだこれは続くか・・・・?