007 意外と早い再会とお礼
善は急げというかな
「うん?」
今日はのんびりと湖で釣りをしていると、馬車が接近していることに気が付いた。
「あの馬車は・・・・」
ふと、数日ほど前に助けた少女の事を思い出す。
別に気にも留めていなかったけど、あの燃えていた馬車にあった模様と同じだな。
となると、あの少女だろうか?
あ、そういえば住んでいる場所を言ったんだっけ。
護衛の騎士たちが馬車の周囲を囲んで護衛していた。
あ、治した騎士たちだあれ。
そのまま馬車が俺の目の前で止まった。
「お久しぶりです」
馬車の扉が開くとともに、中から出てきた人物がそう発した。
「・・・あの時の少女か」
「はい、あの時はどうもありがとうございました、アル殿」
深々と頭を下げられているけど・・・・そこまで感謝されると、ちょっとむず痒いかも。
「こちらが気が付いて助けただけだ。そこまで頭を下げなくていいんだが・・あと、普通に「殿」はつけなくてもいいよ」
「いえ、この命が助かって、さらに貞操も守れたので本当に感謝しきれないのです」
あ、やっぱ相当にやばい状態だったんだなあれ。
「あの時はこうしてゆっくりとお礼と名前を申し上げられませんでしたが・・・・改めて名乗りますわ。私の名前は、アリス=ルンデバラート。ルンデバラート国の第1王女です」
「王女ね・・・」
身なりがいいとは思っていたけど王女だったのか・・・・ということは、ここはそのルンデバラート国の近くに・・・ん?
「王女というならば国王もいると思うけど、王国ではないのか?」
「はい、王国とついていたのは200年ほど前までで、今では王族は飾りの様なものです」
なるほどね・・・そういう物か。
「ここで話すのもちょっとあれだし、少し待ってくれないか?椅子と机を用意したいのだけど」
立ち話ってのもね。
少し離れてもらって、創造魔法で土魔法をちょこっと使用して簡易的に周辺の地面を盛り上げて、単純なイスとテーブルを作った。
「・・・・本当にすごいですね」
ぽかんとされたけど・・・まあ、チートじみているのは自覚しているのでいいか。
何かお礼がしたいとか言っていたので、せっかくなのでこの世界について教えてもらうことにした。
尋ねたらちょっと不思議そうな顔をされたけど、世間知らずなのでと言ったら苦笑された。
まず、この湖の正式名称は「クルス湖」だそうだ。結構前から地図にも載っているそうだが、森の奥深くにあるのであまり人が立ち寄らないからここまできれいで手付かずの状態だったそうだ。
で、今いるこの森の名前は「開けぬ森」。
「・・・そのままなような気がするんだけど」
「この森は、大昔から開拓しようと多くの人員が動員されてました。ですが、切り開こうとするたびに多くのモンスターが出現し、阻まれて・・」
あれ?俺この森切り開くというより木を倒しまくってこの状態作っているよね?
「おそらくですが、・・・アル様は神龍帝。相当高位のモンスターのようですので、他のモンスターたちもおびえて襲ってこなかったんでしょう」
「だから『様』とかつけなくてもいいよ」
まあ、納得が言ったような気がする。「神龍帝」・・・・龍族の頂点とか鑑定であったしな。
話は戻して説明を聞こう。
この森があるのは、ここルンデバラート国の首都に近い場所らしい。なのでお礼を言いに行くために早くここに来れたのだとか。
ルンデバラート国は昔は王政の国だったので王国と言っていたそうだが、今は民主制に移行しており、王族は飾りのようなものだとか。大事な行事の時などに表立って・・・・・日本の天皇制に似ているような。
民主制とか言っているけど、議会で議員たちが無駄に争ってばかりで会議が進まなくなっているような状態じゃないよね?
で、ついでに通貨も教えてもらうことに。
通貨は意外にも全世界共通のものだそうな。通貨その物がなにやら魔道具という物らしく、偽造防止されていて贋金防止しているのだとか。
なるほど、確かに理にかなっているかも・・・・
国家間の取引クラスで星金貨とかいう物スゴイ価値がある物が使われるが、普通に生活するうえでは価値が高い物から白金貨、金剛貨、金貨、銀貨、銅貨となっているそうな。
日本円に直すと・・・・
銅貨=十円
銀貨=千円
金貨=一万円
金剛貨=十万円
白金貨=百万円
星金貨=1億円
と「鑑定」スキルで換算できた・・・・・星金貨と白金貨でずいぶん差が出てないか?
ちなみに、一円がないのはそこまで細かく出来ないからだそうだ。
なので、割って少数が出たら四捨五入で切り上げるのだとか。
「まあ、こんな森の中で暮らしているから使う機会はないけどね」
「あー・・・やはりお金でのお礼はやめておいてよかったようです」
そう俺がつぶやくと、何やらほっとした顔でアリス姫が言った。
お金でお礼と言われてもつかわないんじゃなぁ・・・
「アルは神龍帝というモンスター。なので、お金よりもこちらの方がよいかと思って持ってきました」
「ん?」
箱を渡されたので、中身を見て見ると・・・・
「・・・・ヒヨコ?」
2羽の可愛いヒヨコが眠っていた。死んではいないようだけど・・・なぜにヒヨコ?
「ただのヒヨコではありません。我が国最高峰の『雷鶏』という鳥のひなです。都合上、成鳥をご用意できなかったのをお詫び申し上げますが、この鳥の卵は物凄い美味なのです。他国に持ち出しもできない、我が国最高峰のブランド卵を毎日生み出す・・・雄雌のペアですので、数も増やせます」
うん、ツッコミどころが多すぎてどういえばいいのかわからないけど・・・
「つまり、この鳥が成長したら毎日卵食べ放題ということで良いのか?」
「はい・・・・あの、これができるだけ精一杯考えたお礼ですがどうですか?」
あー、王族は飾りみたいなものだと言っていたしな・・・。そこまでのすごい権力を持っているわけではないのか。
・・・まあ、いいか。このヒヨコ育てれば卵食べ放題に出来そうだし。
「いいかな。これで十分だよ」
「ありがとうございます!!」
答えたら、アリス姫は満面の笑みで喜んだ。
「育て方は普通のヒヨコと同じで良いのか?」
「はい。ですが、エサは魔力を食べさせればいいので・・・」
・・・・この神龍帝の魔力で大丈夫かな?
とりあえず、後は適当に情報をもらってから、日が沈んできたので帰ってもらった。
にしてもヒヨコゲット!!
成鳥にすれば、料理の幅が広がるぜ!!
ヒヨコを出した理由?卵料理とかが好きだから。あと、ヒヨコが可愛いからである。
なんかほのぼのしそうな感じになれるしね。