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074 暗躍する者たちも大変ですよ

今回は主人公不在です。こういう時もあるけどさ、たまには違う人に視点を当てるのもいいじゃない。

SIDE???


 『黒衣』と呼ばれる組織の人たちが集まる屋敷にて、先日依頼を受けて実行してきた一人が帰ってきた。


「ただいまー。疲れたよ今回の仕事は」

「お、帰って来たか坊主」


 その場にいる全員は組織名の通り、黒い衣を深く来ており、それぞれ傍目から見れば誰がだれなのかわかりにくい。


 けれども、彼らはそれでも全員見分けがつくのだ。



「いやー、もう参ったよ。依頼で受けたけど、結局失敗して、依頼者の情報をしっかりすべて獣人国に出してきちゃったぜ」

「失敗するのはできれば避けたいんだがな。この業界、信用がなければ厳しいんだよ」

「でも、黒衣の決まりにちゃんと従っているねぇ」


 この組織『黒衣』は傍若無人な無法者の集まりではない。


 きちんと決まりごとが定められ、休日手当などもあるのだ。


 その決まりごとの一つが、「依頼の失敗をした場合、依頼者の過去の犯罪歴を国に盛大に報告する」というモノであり、今回帰ってきたメンバーもしっかりそれを実行したようであった。


 



 彼らに仕事を依頼するのはハイリスクである。


 しかし、成功すればハイリターンとなってくるのは間違いがない。


 なので、ほぼギャンブル的な感覚で彼らに仕事を依頼する人も少なくはなかった。



「今回の王女2名の誘拐だけどさ、思わぬところからの邪魔が入ったんだよね」

「思わぬところ?」

「そ、神龍帝とかいうチートみたいな強さを持つ公認モンスターだよ」

「お前が言うチートっていうのはよくわからんが、それは運が悪かったな」


 話を聞いた一人が肩をすくめた。


「我々は常に情報を手に入れて備えることをせねばならない。今回の失敗はお前の情報収集不足が原因だぞボケ野郎」

「相変わらずキッツいことをいうねぇ」

「ありとあらゆる可能性も考慮し、仕事をこなすのが我々『黒衣』だ。今回の依頼の失敗を受けて、国からの捜査が及ぶ可能性は大きくなっているぞ」



 一応、2国の姫に、対しての行為なので「黒衣」は危険集団と判断されてしまったようである。


 すでにこのアジトの位置も判明してきているらしく、乗り込んでこられるのも時間の問題であった。


「って、何処からそんな捜査情報を・・・」

「ふふふ、間接的なのと直接的な色仕掛けよ」


 一人がドヤァと口角を吊り上げる。


 生憎、全員その顔は見にくい状況なのでわかりにくかったが、なんとなくムカついた。


「まあ、今回の事で我々は一時的に潜まなければならない。ほとぼりが冷めるまでしばらくは各自散らばって適当に生活していてくれ。再活動を始める際には必ず連絡を取り合うようにするからな」

「適当にって、ずいぶんそういうところは緩いよね」

「こういった悪の組織的なところはもっとひどいのがテンプレートだけどなー」

「悪ではない、我々は依頼を受けるだけの善悪の区別もない組織だ」



 とりあえず、今日の集まりはこれで解散し、しばらくの間各メンバーはほとぼりが冷めるまでおとなしくすることに決めたのであった。


「・・・にしても、神龍帝とかっていうやつマジでチートみたいな感じだったな。ああいう感じになれていれば俺も主人公みたいな感じでもっといろいろできたのになぁ。・・・・・興味もわいたし、ちょっと調べてみようかな?」


 その人物はそうつぶやき、神龍帝の事について調べ始めるのであった・・・・・・・。


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SIDEジューメンダス獣人国


「なに?武者修行の旅に出るだと?」


 ルンデバラート国との友好条約30周年式典も閉会してから数日後、通常の国事へと戻ろうとした矢先にハルカンドラ王はラン王女の突然のその宣言に驚いた。


「はい。先日、神龍帝のアルに負けたことにより、私はもっと自分を高めたくなりました。高みを目指し、姫としてではなく一人の武闘家として精進を極めようと思いました」


 そう言い切った後、ラン王女はすぐにハルカンドラ王の前から姿を消した。



 止めようとしても、絶対に返り討ちにあうことがわかっているハルカンドラ王や、その周囲にいた側近たちは止める気にもならなかった。


 だけど・・・ラン王女が隠しているつもりでも、全員その急な旅の理由については理解していた。


「これはやはり、アレですかな?」

「ええ、やっとあの王女にも春が来たのでしょう」


 側近たちが話すのは、いわゆるラン王女が恋をしたようだという話である。


 神龍帝との試合後、見舞いとして持ち込まれていた花束を自室に飾り、たまにそれを眺めていることは侍女たちの話に上がっていた。


 花もめでず、ひたすら武闘を極めていたラン王女がそのような行為を取ったので、当初は大災害が起きるのではないかとまで言われていた。


 また、以前は騎士たちと模擬戦という名の蹂躙を良く行っていたのだが、最近ではむしろ美容などに興味を示してきたらしく、騎士たちがその平和を泣いて喜んでいた。



 それらの事から考えられるのは、あのおてんば姫とも言われたラン王女が、ついに誰かに恋をしたという事である。


 ラン王女が理想として挙げていたのは、己よりも強く、優しく、顔もよく、きちんと生きている者である。


 考えてみると、神龍帝のアルはその条件にぴったりはまっており、ドストライクであっただろう。


 だが、彼はルンデバラート国のアリス姫と懇意にしている情報もあり、交際しているという情報はないものの、ジューメンダス獣人国にいる自身と、ルンデバラート国にいるアリス姫との差がある。


 彼の住処は、ルンデバラート国の首都近くにある開けぬ森の湖のそばであり、距離で言えばアリス姫の方が近くにいるのだ。



 自分もその近くに行きたいというのは、恋する乙女としては当然だとも思えるが、何せラン王女は、一応この国の王女。


 襲うような輩の命を心配するレベルまで強いが、それでもそのことが彼女をここに拘束させていたようだ。


 そこで、武闘家で武者修行をするというもったいぶった理由をつけて会いに行ったのだと全員理解した。


 

 都合よくアルと恋人に慣れる可能性はないだろうが、時間をかければ意識を変えることも可能かもしれない。要は友人気分から、異性として意識をしてもらうようになってもらうのだ。


 というか、なってくれないとラン王女は一生独身の可能性もあった。



 ハルカンドラ王からしてみれば、娘の婿ができる可能性に喜び、城にいる兵士たちにしてみればラン王女が留守にするので平和が続くという、悪いことどころかいいことばかりであった。


 なので、だれも止めることはしなかったのである。



 果たして、ラン王女の恋は実るのか。


 アリス姫がどうもよく神龍帝と懇意にしているようだがうまくいくのか。


 皆の関心は、そこに行きつくのであった・・・・・・。



 なお、後日談として兵士たちが「平和記念パーティー」を開いたのは言うまでもない。

・・・内心、この黒衣の一人を主人公とした話も書いてみたいとも思える。こいつ明らかにアレだよね?

アルはそんなことになって居るとも知らず、どうやら冬支度をし始めるのかな?

修羅場を見てみたいような気もするそんな今日この頃であった。

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