067 状況説明
たまにはのんびりだけじゃなくてこういうのもやってみたい話もある。
「・・・・まさか、つぶされるとは思わなかったよ」
いやホント、物凄く予想外すぎる。誰が神龍帝をつぶすのとかは予想がつかないんですが。
「すいませんアル・・・まさか下敷きにしてしまうとは」
「えっと、つぶしてごめんね」
目の前で、アリス姫と、ジューメンダス獣人国のラン王女と名乗った人物は俺の目の前で謝っていた。
現在、この二人がいきなり俺をつぶして現れた後、何とか復活して事情を聴いたのである。
・・・つぶされるとは思っていなかったけどね!!
原因は、アリス姫に以前渡したネックレスのようである。
「鑑定」のスキルを使ってなかったので、改めて見たけどさ・・・・
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『神龍帝のペンダント』
付与
・「害悪絶対排除」
・「神龍帝の威圧(劣化版)
特殊付与
・「転移魔法テレポート(限定機能)」
星クラス5の道具・・・というか国宝を超えている。
神龍帝の鱗を材料とし、ダンジョン産の宝石を嵌め込んだ、神龍帝作成の護身のペンダント。付与効果によって着用者の身を、毒や害悪などから保護する。
作成時に着用者の安全を願って作成された為、無意識的に創造魔法が込められた物となった。
その為、着用者の身に危険が迫ったとき、劣化版の神龍帝の威圧が自動的発動する。
なお、作成者が着用者と認めた者以外が着用した場合は、その着用した者自身に神龍帝の威圧が発動し続ける。
『神龍帝の威圧(劣化版)』
劣化版なので大幅に効果が低下し、オリジナルの僅か1/100の範囲にしか効果を示さない。
なお、発動時には神龍帝を呼び寄せるらしい。
『移動魔法(限定機能)』
神龍帝のペンダントを握って心の底から願うと発動する、限定版の隠れ魔法。
移動先は限定されており、『神龍帝の横』に固定されている。
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星5クラスとか、国宝級を超えているのが問題ではない。いや充分物凄い代物になったのはどうかと思うけどね。
問題だったのは、『移動魔法(限定機能)』である。
これって俺の「横」に転移するように設定されていたようだが、横ならどこでもいいらしく、ちょっと寝っ転がってそわそわしていたから・・・・横っ腹から乗っかられたんだよね。
軽くわき腹を殴られた感じだよ・・・・。
普通なら避けれただろうけどさ、寝っ転がっていたから避けにくいし、アリス姫というか、「親方空から・・・・」のあのシーンみたいな状況で避けれるか!?
いや、空じゃなくて空中で突然だし、親方とかはいないけどさ!!
しかし、なんでこうなったかの話を聞くと、その原因が分かった。
「攫おうとしたやつがいたってことか」
「いつの間にか拘束が解けているのでこうして動けますが、結構怖かったですよ」
アリス姫と、ラン王女を攫おうとしたやつがいて、『拘束』系統のスキルのようなものでとらえられて、危うく連れ去られかけたらしい。
転移でどうやらそれからすっぽり抜けてきたようだけど、なぜラン王女までなのだろうか?
あれか、密着していたから巻き添えってことなのか、それともネックレス自体の判定が影響しているのだろうか。
とにもかくにも、事態は余りよろしくないご様子。
今頃城では騒ぎになっている可能性が高いし、ややこしい事にもなりそうである。
攫おうとしたやつがいて、その前にこっちに転移しちゃったので、そいつ自身も予想はつかなかっただろうけどな。
・・・・なんとなく、知らないところでアリス姫が危険にさらされたっていうところにほのかな苛立ちを覚えたのはなんでだろうか。
「ともかく、さっさと城に戻らないといけないんじゃ?」
「ですが、今頃城は大騒ぎになっている可能性がありまして・・・」
「今回の襲撃はすでに城内で知られているだろうし、もめている可能性が高い」
そりゃそうか。友好を深めるため席で、両国の王女が攫われたわけだし、下手すると獣人と人間の間の関係が悪化する可能性があるからな。
だけど、その可能性を考えると・・・・・今回のこの「王女拉致未遂事件」はそのことを考えて実行された可能性がある。
「このことを口実に持ってくる輩もいるだろうし・・・・どうしたものか」
ラン王女は真剣に考えているようである。
・・・聞こえてきた噂だと、かなりのおてんば姫とか言う話があったけど意外と考える人でもあるんだな。
というか、その耳とか尻尾とかすっごいモフモフしていそうでちょっと触りたい。
しかしなぁ、この状況を考えるとだめだろ。失礼かもしれないし。
「その攫おうとしたやつはすでに逃げている可能性もあるが、今すぐに城内に戻ってもまた来る可能性もある。それに、実行犯とは別に企んでいる者もいるだろうし、まずは攫おうとしたら確実にやばい目に合うということを見せねばならないと思うが・・・・」
「・・・アル、ふと思いついたのですが」
と、アリス姫が何やら思いついたようであった。
そのアイディアは・・・・うん、どうしてもそれって面倒ごとになりそうな予感しかしないのだけど。
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「アリス王女とラン王女が行方不明か!?」
「はっ、先ほど中庭に二人が出ていったきり、何処へ行ったのか・・・」
「何やら声が聞こえ、慌てて向かいましたがすでにそこには・・」
ジューメンダス城は現在、大騒ぎとなっていた。
先ほど、中庭の方で何やら騒ぎがあり、慌てて向かったところ何もないようだったが、アリス王女とラン王女が行方不明になっていたのである。
城内を捜索してもおらず、攫われたのがアリス姫だけならまだわかるが、かなりの手練れでもあるラン王女も攫われたようで、そのことに対して物凄い不安の空気が漂っていた。
「ハルカンドラ王、娘は・・・・アリスは・・」
「ザスト王、ランもおそらく一緒です。あの子ならおそらくアリス姫とともに何とかするはずです」
両国の国王同士、父親同士の仲で互いに娘を心配する気持ちは強かった。
その時である。
「陛下!!大変です!!」
「どうした!!娘たちが見つかったのか!!」
いきなりその場に飛び込んできた兵士に対し、ハルカンドラ王は娘を発見したのかと思っていた。
だが、その予想とは違っていた。
「いえ!!それが、上空からドラゴンが!!」
「「はぁっ!?」」
ザスト、ハルカンドラともに素っ頓狂な声を上げた。
慌てて中庭に良き、上空を見ると・・・・・・確かにドラゴンがいた。
星明りに照らされたその純白の身体は、物凄く美しいともついハルカンドラ王は思ったが、この状況はやばいかもしれないとも思った。。
ドラゴン系統のモンスターはそれだけでどれもとんでもない強さを持つ者ばかりである。
娘が昨年、暴れていたドラゴンに近いと言われる亜龍のワイバーンを仕留めたときがあったが、それ以上の力を持つはずである。
もし、あのドラゴンが襲ってきたらただでさえ慌しいこの城内が、狂乱になりそうだからである。
「いや・・・待てよ!?」
と、隣にいたザスト王がそのドラゴンを見て何か気が付いたようであった。
「どうしたんだ、ザスト王よ」
「あのドラゴンは・・・・神龍帝のアル殿だ」
神龍帝・・・・その言葉を聞いたときに、ハルカンドラ王は話を聞いたことがあったのを思い出した。
いわく、純白の美しきドラゴンであり、その力は物凄い。
人化した姿でも、その戦闘能力は高いのだが・・・・自身に害しなければ気軽に接してくれる公認モンスターだと。
だが、神龍帝の住処はここから離れた開けぬ森の中にある湖のあたりのはず。
そのモンスターがなぜここにと思っていると、中庭に降りてきた。
兵士たちが警戒して剣を持とうとしたが、敵対したらさすがにまずいとハルカンドラ王は直感で悟り、兵士たちに剣をおろさせた。
そして、中庭に神龍帝が下りてきた時に、その背中に誰かが乗っているのをザスト王とハルカンドラ王は気が付いた。
「お父様!」
「父上!!」
その背中にいたのは、けがもなく無事であるようなアリスと、ランの二人の娘の姿であった。
神龍帝が身をかがめ、ゆっくりと二人がおりやすいようにして、アリスとランはそこから降りた。
「おおっ!!娘よ無事だったか!!」
「ランも無事だったか!!」
ザスト王とハルカンドラ王はそれぞれの愛娘に抱き着く。
しっかりと抱擁し、その存在をしっかりと感じ取った。
「ああ、よかったよ。2人とも何かよからぬことに巻き込まれたのかと思ったが、まさかこんな形で戻ってくるとは・・・・」
「お前の事だから必ず無事だとは思っていたが、本当に無事でよかった!!」
涙を流すザスト王とハルカンドラ王。
「・・・あのー、俺の存在忘れてない?」
「「あ」」
娘の無事に喜び過ぎて、すっかり神龍帝の存在を二人とも忘れていた。
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うん、空気になりそうなのはわかっていたけどさ、本当に目立たない感じになったんだけど。
感動の再開の場面って、その主役以外は本当に空気になるよな・・・・
と、アルは思いつつ人化する。
神龍帝の姿のままだと何かと話しにくい。
「さてと、この二人はちょっと訳アリで危ない目に遭いかけていたけど、偶々俺からアリス姫に送ったネックレスが功を奏して助かったようなんだよね」
とりあえず、さっさと事情説明してアリス姫たちと速攻で作ったこの事件の犯人をいぶりだすための茶番劇をやらないとね。
アリス姫を危険に冒そうとしたその罪・・・・・社会的な死で償ってもらうぞ。
あれ・・・主人公内心かなり怒っていないかな?
肉体的な死=生命活動の停止
社会的な死=もうこの世から死にたくなるようなそんな死
の定義かな?具体的な言い方は思いつかないけど・・・・
ちょっとだけヒントを言うならば、アルのスキルで「創造魔法」って言うのがあるよね?