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066 たまにはこういう展開です

主人公、今回出番は少ないかもしれない

 今日は、ジューメンダス獣人国にて記念式典が執り行われていた。


 ルンデバラート国との友好30周年記念ということで、その国から国王夫妻とその娘が招待されてきたのである。


 昼間はその姿をパレードで国民に見せ、夜中に舞踏会が城内で行われていた。


「ふうっ・・・やっぱり疲れるわね」


 アリス姫は青いドレスを着ており、その胸元には誰もが目を引くような赤い宝石がメインとなっているネックレスがかけられていた。


 そのネックレスを持ち、ふとアルの事をアリス姫は思う。


 このネックレスは夏休みの時にアルが渡してきたもので、アリス姫にとってはかけがえのない宝物であった。



「アルは今頃何をしているんでしょうかねぇ・・」

「ふふっ、アリスさんも何か恋心があるのかしら」


 ふと、誰かの声がしたので振りむくと、この国の王女ランがすぐそばにいた。


 鮮血の様な派手な赤いドレスを着ており、その美しさからかなり似合っているように思えた。


・・・・出席していた人のうち、ラン王女の普段の事をしている人たちは、まるで血で染まったドレスに見えて恐ろしく思っていたのであるが。



 アリス姫と、ラン王女。


 この二人、実は文通仲間だったりもする。


「直接会うのは久しぶりね、お変わりないようで何よりですわランさん」

「ええ、そっちも変わらず元気な様ね」


 穏やかに談笑し始める二人。


 その様子からは、普段のラン王女の姿を想像できるものはなく、唯一の平和そうな光景にこの国の貴族たちは心から安堵の息を漏らしていた。


(ラン王女でも、一応こういう場ではおとなしいんだな・・・・・)


 警備をしていた騎士たちは、そのように全員思ったのである。




「それにしても、最近アリスさんは恋したと書いてあったわね」

「はい、公認モンスターですが、その方は本当にいい人なんですよ」


 話題に上ったのは、神龍帝(アル)の事であった。


「初めて見たときは、純白の綺麗なドラゴンでしたが、人化したらそれはそれでかなり美しいような・・・」

「実力もあるみたいだし、戦ってみたいわね」


 どことなくかみ合っていないようだが、一応心ではかみ合っているのだ。


 何となく、神龍帝の話から強者の感じがして、ラン王女は戦って見たくなる。


 だが、相手は公認モンスター。つまりは物凄い力の持ち主ということであり、うかつに行動に出られないのが歯がゆしくも思えた。


・・・公認モンスターであるデュラハンのガッバーナとは戦ったことはあるが、それは彼が武者修行の旅をしていたので、普通に挑むことができただけである。


「夏祭りの時に、告白しようとしたのですがうまいこと出来なくて・・・」

「いいわね・・・私も恋してみたいけど、釣り合う殿方がいないのが悩みですよ」

((((それはあなたが規格外すぎるからですよ!!))))


 話が聞こえていた人たちで、普段のラン王女を知る一同全員そうツッコミを心の中で入れた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「へっくしょい!!」


 その頃、アルはジューメンダス城近くにある宿屋に宿泊していた。


 何となく物騒な噂とかも聞いてきたので、一応何かあったらすぐに駆け付けられるようにわざわざ来たのである。


 アリス姫のことを心配しているけど、なんか違った意味での嫌な予感もするからな・・・・自分の身の方にだけど。


「くしゃみが出たけど、誰か噂をしているのかな・・・・」


 こういう時って、大抵何か言われているとか聞くけど、本当にそうなのかな?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 舞踏会で曲が流れ始め、出席者たちが踊りだす。


 とはいってもアリス姫もラン王女も踊る相手はいない。


 かといって誘われるのもなんとなく嫌なのでこっそり二人とも会場から出た。



誰も止めるものはいなかったが、まあラン王女の普段の暴れっぷりを皆知っていたからである。


迂闊に手を出せば、むしろ出してきた方が可哀想な事に成るだろうと誰しも思っていた。


だが、彼女たちがでていくのを見て、にやりと誰にも悟られないような笑みを浮かべた者もいた・・・。



中庭を歩き、空を見上げる。


「ああいうのって、ちょっと苦手意識がありますよね」

「わかるわ。でも、私の場合、踊りながら戦いたくなるってところかしら?」

「ランさんらしいですね」


 その言葉に、二人して苦笑する。



・・・・・・その時であった。


「!?」


 ラン王女が何かに気が付いたが、油断していたせいか反応が送れた。


 ボンッ!ぶしゅぅぅぅぅぅう!!


 何かはじけた音がしたかと思うと、中庭に何かの煙がすぐに充満した。


「何か薬が混じっているわ!!」


 持ち前の嗅覚で、素早くラン王女はそう判断した。


 だが、彼女たちになすすべは・・・・・・・


ぴかっ!!


「あっ!?」


 その時、アリス姫のかけていたネックレスの宝石が光った。


 そして、一瞬で煙がはれた・・・・・。


「えっ・・・・!?」

「・・・わお」


 あまりにも突然すぎて、二人とも驚きの声を出した。


 ・・・・実はこのネックレス、アル特製というせいもあって、害をなすようなもの(薬物など)を排除をする機能があった。


 そして、どうやら今の煙には痺れ薬などが混じっていたようで、ネックレスが一瞬で判断し、一気に浄化したのである。



「アルのネックレス・・・・すごい」


 ぽつりとアリス姫はそうつぶやいた。



 お守り代わりにしていたのだが、まさか本当にお守りになるとは・・・・・。



「今のってそのネックレス・・・・・・!?」


一方、ラン王女はアリス姫のネックレスに驚いていた。


 何かの薬が煙に含まれていたようだが、どうも一瞬でネックレスが浄化して消し去ったということを何とか理解できていた。


 だが、ここまで素早く高性能なのは驚きにあふれるのである。


「これ・・・アルが夏祭りの時にくれたんですよ」

「・・・本当にすごそうな人ね」


 アリス姫がそう言い、ラン王女はそのネックレスだけでどれだけ神龍帝がすごそうなのかもうこの時点で良ーくわかった。


 毒物などを浄化できる魔道具(マジックアイテム)は実は結構普通にある。


 だが、それはあくまで体内に入ったときにのみ作用し、効果もいまひとつなのである。


 けど、今のネックレスは体外のものに反応した上に、効果も素早く即効性があるものだったのだ。



 ここまで高性能なものを作るには、一体どれだけの材料などをつぎ込めばいいのやら・・・・。



「って、驚いている場合ではないわね」

「ええ、これは立派な襲撃です。私たち二人を狙っての犯行でしょう」


 今の煙のようなものは免れることはできたが、他に物理的手段のようなものが来られたらまずい。


 ラン王女なら撃退どころか蹂躙できるだろうが、アリス姫の場合はそうもいかない。


「ともかく、早く会場に戻りましょう」


 その場を離れようとした時であった。



シュルルルルルル


「今度は何!?」


 何か変な音がしたかと思うと


きゅっつ


「あうっ!!」

「あたっ!」


 ちょうど腰の高さあたりから引っ張られて、二人ともまとめて何かに縛られたようであった。


「これは・・・『拘束バインド』の魔法かスキルね」

「ええ、その通りです」


 ラン王女は素早くその正体を見抜いて言ったとたん、いきなり誰かの声が聞こえた。


 その声の方を見ると、黒いローブの様なものを纏った人がいた。


・・・なぜかちょっとびくびくしているようだったが。実は、ネックレスにから「神龍帝の威圧(劣化版)」が出されており、その人物に向かって放出されているようだった。


 だが、その男はひるみはすれども効き目は薄いようである。


「そのネックレスからなんか怖い気配がするんだけど・・・いったい誰が作ったやつだよ」

「そんなことよりあなたは誰ですか!!」


 ローブの人物が疑問を口に出したが、ラン王女は素早く臆することもなくそう叫んだ。


「俺かい?あんたらを攫うように言われた人物さ!!でもねぇ、セオリー通りいかったのがどことなく残念だよねぇ。なんだよそのチートなネックレスは」


 その黒ローブの人物は堂々と言ったかと思えば、アリス姫のネックレスに対して何やら文句も言った。


「まあ、でもどうやら薬は無効化できるようだけど、このスキルにあたる方は無効化できないようだね」


 どうやらアリス姫とラン王女をまとめて拘束しているのは何かのスキルらしい。


「さてと、人が集まってくる前に二人ともしばらく攫わせてもらうよ。これも仕事だしね」


 そう言いながら、アリス姫たちに触れようとする黒ローブの人物。


 ラン王女はこの拘束を破ろうとしているようだが、想像以上に硬いようで無理なようである。


 そもそも、拘束の魔法な時点で(特例を除き)そう簡単に破れるものでもない。


 さらに、念には念を押してなのか手首足首に拘束(バインド)をかけたらしく、身動きが完全に取れなくなった。



(こんなやつに攫われるのは嫌・・・・・アル助けて!!)


 ローブの人物がの手が触れようとした時に、アリス姫はそう強く思った。


 その時、ふたたびネックレスが輝き・・・


シュン!!


「・・・へ?どこいった?」


 目の前で、姫二人が一瞬にして消えたので、黒ローブの人物は目を点にしたのであった。


 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「なーんか胸騒ぎがするな・・・・」


宿屋にて、アルはなんとなく胸騒ぎがしてそわそわしていた。


 こういう時って絶対ろくでもないことが起きていそうだし・・・


「・・よしっ、ちょっと城に潜り込んで」


シュンッ!!


プチッツ!




「・・・・あれ?ここは?」

「あのローブの人はいないし、なんかどこかの部屋の中?」



 アリス姫とラン王女は、現状の理解が追い付いていなかった。


 先ほど、身動きが取れない状態で攫われそうになったのだが、気が付くといつの間にか別の場所にいた。


 と、ここで二人とも気が付く。何やら真下に柔らかいものがあって、先ほどつぶしたような感触が・・・


「アル!?」


 下を見て、自分たちにつぶされている人物に、アリス姫は気が付いたのであった。



Q.なぜ拘束をネックレスは解除できなかったのか

A.あくまで害になるものと判断し、薬物の方ばかり気がとられていて、スキルの対処は不完全だった。


なんとなく、来そうな質問に対して先にこたえておきます。

というか、主人公つぶされたけど大丈夫かな・・・・・

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