056 こたつのために三千里 その1
1里=3.927キロメートル
3千里=11781.82キロメートル
もちろん、これ一応サブタイトルなので実際にはそこまで行きません。なんかしっくりしたから付けただけですよ。
夏祭りが終わり、秋が深まってきたようである。
この森ある場所は、一応季節ははっきりしているようだ。
一応地域や国によっては、ほとんど変わらない場所もあるようだが、こうやってきちんと季節が移り変わるのはありがたい。
時間の流れを感じ取れるしね。いやホント、こういうのがないとつまらないしな。
まあ、寒いのは苦手だし、今のうちに冬支度でもしておこうかな。
「こたつ作ろうかな?」
冬が近づいてくるのであれば当然必要なものは暖房器具。
だが、この世界には電化製品はない。
魔法があるし、魔道具というのもあるので電化製品などができにくいのであろう。
・・・そもそも、発電所とか、電気を作る設備もないのだけどね。
そんな中で、一番作りやすそうなのが「こたつ」である。
こたつの大体の形となる机の部分は木を削って組み立てればいいし、布団は買えばいい。
あとはその温める機能がある物を用意して組み立てればいいのだ。
火事の可能性も考慮して、安全面を徹底したほうが良いかな?
「というわけで、何かよさげなものがないですかね?」
「ふむ、『こたつ』とやらのために使えそうなものかのぅ」
一番こういう時に頼りになるのがザップリンさんである。
なので、俺は今ギルドに来ていた。
そういえば、ガッバーナは祭りの後首なしの馬に乗って武者修行の旅を再開したよ。顔は良いのに、どこか残念なイケメンだよなあれ。
「・・・それ、お主が言えるのかのぅ」
「あれ?心の声聞こえてましたか?」
「いや、ちょっと声に出ておったぞ」
とにもかくにも、ザップリンさんには何やら心当たりがあるようである。
「熱を生み出し、長期的にも使えるようなものはあるぞ」
「あ、やっぱあるんですか」
「魔道具ではなく、モンスターから取れる素材にそのようなものがあってのぅ、確かそれも程よい暖かさを発熱するだけで、火事にもならんぞ」
「結構都合がいいものがあるんですか」
「まあ、手に入れるのが普通の者なら難しいじゃろうが、お主なら簡単じゃろうな」
え、それなんかやばい奴なのか?
「コッチ方面であっているかな?」
というわけで、その都合がよさそうな素材がとれるモンスターが生息しているというところに現在、俺は飛行しているのであった。
一応、ゲバルトとラスランがギルドにいたため速攻で指名依頼を出して留守番してもらいました。あの二人なら信用はできるし、一応ピヨ吉たちとも仲がいいからね。
それにしても、神龍帝のこの姿って耐性があるんだろうけどさ、人化した姿で飛んだら凍えそうなほど上空がめちゃ寒い。
この季節になると、空を飛ぶのがおっくうになるとは、何か新しい言い方を見つけたような気がする。
にしても、こっちの方角であっているのかな?
方向音痴ではないけど、やっぱ不安になってくるし、夜になる前に適当な村とかあったらそこに降りて聞いてみてついでに泊めてもらおうかな。
なお、ゲバルトとラスランはしょっちゅう神龍帝から留守番の依頼を受けているのだが、その収入ですでにそのランクで稼げる金額を超えてしまっているため、他の冒険者たちからしっと的な目で見られてきた。
現在、冒険者を辞めて本格的に留守番役みたいな役職で神龍帝に雇ってもらうか悩み中。
「どうしてこうなったんっすかね?」
「さあ?でも冒険者業もやはり愛着的なもので捨てがたいよな・・」