055 夏祭りー3日目最終日
本日2話目
一応、異世界なのである程度区別をつけるようにはしているんですよね。
3日間も続いた夏祭りも、今日で最後である。
徹夜して作ったプレゼントは亜空間収納でしまっておき、まずは屋台をアリス姫とめぐって楽しむことにした。
同じ場所でも、屋台が移動しており違う店になっていたり、この日にしかない屋台があったりとなかなか長く楽しめるような工夫がされている。
「にしてもアルはどれだけ食べてるんですかね」
「こんだけかな」
綿あめ、リンゴ飴、お好み焼き、焼きそば・・・・など買って食べていたけど、アリス姫がちょっと肩をすくめて言った。
まあ、どれだけと言われても、こういうのは別腹ですからね。
しかし、ゲテモノみたいなものを出している店もあるのが驚きだ。
「にしても、結構人が集まっているのにスリとかそういうのがいないような」
「祭りの時はいつもの数倍ほど警備がしっかりしているんですよ。普段は辺境所属の人達が、祭りのときには交代で見回りをしてついでに楽しむために来ているそうです」
なるほど、結構しっかりとした警備だ。
「あ、もう一つ実はこっちが原因ではないかというのがありますが・・・」
アリス姫が何か思い出したかのように話した。
実は、この祭りで犯罪者がほとんど出ないのは警備がしっかりしている以外にも、もう一つの原因があった。
公認モンスターのデュラハンのガッバーナがスリにあった時に、そのスリの人をを心がぽきっと折れるまで成敗したことがあったらしく、それが伝わっていたのだとか。
「ぽきっとって・・・何をやったんだろうか?」
「さあ?ですが、この一見以来祭りのときには犯罪は絶対に引き起こすなという暗黙の了解がその関係の人々に伝わったんだそうです」
公認モンスターからスリをして、それで生きているぐらいが不思議・・・・ん?
「あれ?ってことはガッバーナは財布を持っていたってことだよな?」
モンスターが財布を持つとはこれいかに。
あ、これブーメランで俺に帰ってくるか。一応公認モンスターとは言えども、金を使う時があるんだよな。
でも、ガッバーナの場合何に金を使うのだろうか?
屋台で金を消費するのはわかるけど、食べ物系とかに使う姿が分かりにくい。
デュラハンって頭と胴体が離れているから、食事をしたら首から・・・考えるのをやめておこう。
とりあえず、祭りの最終日ということもあって射的とかくじ引きとかの屋台の景品が豪華になっており、あちこちでは値下げもしていたりしている。
まあ、楽しみまくるけどな!!
金魚すくいならぬ、ゴフィッシュすくいとかいうモノをやってみたけど、1匹も取れなかった。
魔法を使えば楽かもしれないけど、こういうものはずるはしたくないしな・・・。
射的では、よくあるようなコルク栓を飛ばすようなやつではなくて、木でできた小さな球を指ではじくというモノであった。
値段が高い奴でパチンコ・・・スリリングショットとも言うんだっけな?そっち使用できるようだ。
ま、景品がゲーム機とかはこの世界にはないけど、剣とか置いてあったぞ。子供がやっていいやつなのかこれ?
盾とかもろに渡す気がないよね?思いっきり防がれるじゃん。
店主の顔が、盾を狙う子供を見たときにニヤニヤして・・・・ちょっとイラッとした。
ならば、ここは自分がチートなのを活かす。先ほどのゴフィッシュすくいでは使用しなかった魔法を使用して、この店主の鼻を明かしてやろう。
狙いを定めて、念のためにこっそり弾を硬化させるような魔法で強化して、思いっきり超高速で球が飛んで・・・・・・・・・盾に直撃した瞬間、盾が木っ端みじんになった。
ちょっとやりすぎました。
まあ、店主の方は顔を物凄く青くしながらも許してくれたしいいか。
周囲にいた人たちもなんか顔が引きつっていたけど。
「お、アル殿でありますか」
「お、ガッバーナか」
アリス姫と店を渡り歩いていると、向こうから全身鎧の上から無理やり浴衣を着こんだガッバーナを発見した。
・・・なぜ鎧の上から?
聞くと、デュラハンって全身鎧(頭は兜をかぶっている場合と被っていない場合があってガッバーナは後者)で、体そのものが鎧と同化しているようなものらしい。
脱ごうにも脱げず、そのため着てみたい服とかをこうして上から無理やり着るんだとか。
「にしても、そっちはそっちで楽しんでいるな」
「はっはっはっはっは、祭りと言えばとことん楽しまねばならぬものでありますよ」
わらうガッバーナ。その全員には仮面やヨーヨー、くじ引きの商品と思わしき風車など、物凄く楽しんでいる様子がうかがえる。
「今年もスリが出ないので、わざわざお仕置きする必要がなくていいでありますなぁ」
そうガッバーナが言うと、周囲の歩いていた人の数人がびくっと震えた。
あ、もしかして祭り以外ではスリをしている人たちじゃないか?一応気を付けておこう。
というか、話が聞こえただけでびくっとするのって、罪を自覚しているからなのかそれともガッバーナの恐怖によるものなのかわかりにくいな。
ガッバーナとはその辺ですれ違うだけで別れ、そろそろ祭りの終わりの時間が近づいてきた。
「もうそろそろ花火が打ち上げられる時間ですね」
「もうそんな時間か」
花火は毎年大きなものが打ち上げられるようで、あちらこちらで見えやすい場所をさgして向かう人でにぎわっている。
混雑しているし・・・・あ、そうだ。
「ここならさすがにだれも来ないだろうし、よく見える場所だろ」
「そうですけど・・・重くないですか?」
「平気平気」
現在、俺達は空を飛んでいた。
まあ、その辺の屋台で買った絨毯に「創造魔法」で飛行できるようにちょこっと改造させてもらって乗っているんだけどね。
空飛ぶ絨毯に実際に乗って見て思ったけど、これ使いようによっては飛行機とかも作れそうだな。あと某9が三つある列車も再現できそう。
一応、即席で作ったのだけど、安定性とか安全面はしっかりしています。
ひゅるるるるるるるるるる~~~~~
どぉぉぉぉぉぉぉぉん!
「お、始まったな」
「綺麗ですね・・・」
打ち上げられて、次々と夜空に綺麗な光の散らばりが現れる。
花火とは言っても、地球の花火と違う点としては色が多い。
そして、豪華さが際立っていた。あれぞ職人の技とでもいうべきなのだろうか?「創造魔法」でもあのレベルを再現するのは難しいかもな。
夜空に大輪の花が咲き誇り、なんとなく日本の花火を彷彿させる。
「今年は計2万3400発だそうですよ」
「結構多いな・・・・」
と、ここで渡す物を思い出した。
「そういえばさアリス姫、一応日頃の感謝を込めて渡すものがあるんだった」
「え?」
アリス姫が見ている前で、亜空間収納から綺麗にラッピングしてある箱を渡す。
「その中にね、ププレゼントを入れているからね」
「・・・ありがとうございます、アル」
アリス姫がうれしそうな顔でプレゼントを受け取る。
花火の光のせいか、俺にはその顔がどこか綺麗なように思えたのであった・・・・・
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翌日、アリスは祭りに便乗して神龍帝に告白する予定だったのを思い出して頭を抱えたのはまた別のお話。
大事なところで、ついプレゼントを受け取って心の中で喜び舞い踊っていたから頭からすっかり告白の事が抜け落ちていたのである。
大事なところで抜けているアリス王女であった。
彼女がアルに想いを告げることができるのはいつになるだろうか?
それとも、アルの方からアリス姫に恋するのだろうか?
とにもかくにも、のんびり日常的にやっていきますよ。