閑話 あの人は今何をしているのだろうかその1
本日2話目
なんとなく気になる人たちの様子です
SIDE『アララン共和国』ーギルドマスターのミラン
「ギルドマスター、先月分のギルドでの買い取りと販売の利益の報告書です」
「それはそっちに置いておいて頂戴」
「わかりました」
アララン共和国のギルドの執務室にて、ミランは今日はギルドマスターの仕事の一つである書類の裁きをしていた。
モンスターを倒したりもするのだが、基本的に卓上での仕事が多い。
そのため、目の疲れ用の目薬や、肩こり解消のための魔道具なども常備していた。
「はぁっ、こう仕事をしていると息がつまりそうになるわね」
ミランは元々は高ランクの異名「大地の魔導士」とつく冒険者。
まあ、いろいろあってギルドマスターの職に就いたのだが、やはり自由に活動できていた冒険者時代を懐かしく思えていた。
「魔法も極めたいし、仕事もやらなければいけないし、たまにあるモンスターの退治もしなければいけないのが辛いわね・・・」
魔法使いとして極めているのだが、魔法をより極めたいと思う気持ちは先日、アルがモンスターを魔法であっという間に倒した一件からより強くなっていた。
神龍帝というモンスターで、その姿は巨大な純白のドラゴンなのに、人化して魔法攻撃が優れているのは何処かずるく思える。
しかも、その魔法攻撃も同様の物を使おうとしても、魔力が足りなくなってしまうほどの物であり、その精度も極めて高かった。
なんとなく、魔法使いとしてのプライドから、ライバル心的なものが沸き上がったのである。
できれば、もっと魔法を研鑽していきたい。
ライバル心的なものの他に、向上心や憧れの様なものもあったが・・・・・・。
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SIDE『大迷宮都市ベースタック』ーギルドマスターのアラモード
「ふむ、先日からやっと通常の状態にまで落ち着いたようでござるな」
「ええ、モンスターも通常の状態へと戻り、冒険者たちの稼ぎも例年並みに戻ったようです」
ベースタックでは先日、アルが迷宮を訪れており、その際に色々あって好景気となっていたのだが、さすがに長続きするわけでもなく、今は通常の状態へと落ち着いていた。
ギルド職員が持ってきた報告書を読み、アラモードはアルによる経済効果だから「神龍帝の恵み」とでもいうようなものにしたかったが、本人からの望みで取り下げられて、その好景気の名前が別の物になったのを残念に思っていた。
「『迷宮の気まぐれ好景気』でござるか・・・まあ当ていると言えばあっているようなものでござるが、やはりいまいちでござる」
それともう一つ、別の悩み事もあった。
「モンスターの数が減っていたので鉱石などをとるために商業ギルドなどからの依頼を受けた冒険者たちが大量に発掘していった結果、市場での供給が多くなったのですが、どうも取りすぎたようで採掘量が以前よりも落ち込んだようです」
「迷宮の回復力を超えたのでござるか・・・」
迷宮は中がどれだけ荒らされようとも、自然に回復するのである。
そのため、いくら採掘しても、回復して尽きることはなかったはずだが、どうやら取られ過ぎたようで回復量が追い付いていないらしい。
「しばらくその回復が思わしくない鉱石の採掘を禁止させろ。禁漁期間ならぬ、禁採掘期間を設けるのでござる。期間は一定の値に戻るまでにと通達するでござる」
「わかりました」
職員が出ていき、アラモードはため息をつく。
とりあえず、ギルドマスターとしての仕事は多忙なのであった。
のんびり穏やかに進めていくよ