048 思わぬ効果
副産物とかってあるんだよね
迷宮でモンスターを人化した状態で魔法で蹂躙したり、人化を解いてもともとの神龍帝の姿で蹂躙したりと、迷宮に住むモンスターたちにとっては悪夢の数日間であっただろうが、大体39階層まで来たところでアルはなんとなく満足感を覚えた。
「というわけで、数日ほど迷宮に潜らせてもらいましたけど・・・・なんかギルドが騒がしくありませんか?」
「それでござるが・・」
アラモードさんにとりあえず「しばらくは迷宮に潜るのを止めるけど、また来るかもしれない」と言いに来たのだが、なんかギルドが騒がしいように思えた。
尋ねてみると、アラモードさんは何処かうれしそうな表情を浮かべていた。
事情を聴くところによると、俺が迷宮の下層に行くまでに「神龍帝の威圧」を放ちまくったので動けなくなったモンスターが多く出て、それを狩りまくった冒険者たちのせいで一時的にモンスターが激減していたそうな。
で、迷宮でモンスターを狩って素材を売買していた人たちはそのモンスターの激減によって収入が減るかと思いきや、商人ギルドからの依頼を受けまくったそうな。
迷宮はモンスターの素材だけではなく、貴重な鉱石の類もや薬草、稀に出る宝箱からは魔道具が産出する。
だが、それらはモンスターがうろついている通常時ならなかなかとることができない。
けれども、激減した今なら一気に獲得できると思って商人ギルドからの大量の依頼が来て、むしろ活性化したらしい。
今は徐々にモンスターの数が通常時の8割ほどまで戻ってしまったが、それでも大儲けできたことはできたそうな。
・・・・意外な利潤が生まれていたんだな。でも、これっていいことだよね?
「おかげでこのギルドでは手数料などでも儲かってよかったのでござるよ」
「おもわぬ副産物というか、商人魂がすごいというか・・・」
この都市の人達隙あらばチャンスにするみたいでたくましいな。
その経済活性化みたいな状況下で、その大元の原因が神龍帝である俺だとわかったので、この一時的な好景気を「神龍帝のお恵み」とかいうつもりらしい。
「それはやめてくれませんかね・・・結構恥ずかしいんですけど」
「いい案であったと思うでござるが・・・」
いや、それかなり恥ずかしいんだけど。俺はただここにて戦闘本能とかそういう物を晴らしに来ていただけだって。
とりあえず、何とか別の言い方にしてもらうことで合意した。
「また潜る機会があれば、歓迎するでござるよ」
「『転移魔法』があるので正面から潜ることはないでしょうが・・・・まあ、機会があればたまにはここに来ますね」
「そうでござるか。これからもよろしくでござる」
アラモードさんと握手を交わし、帰ろうとした時であった。
「あ、そういえば忘れるところであったでござる」
「ん?」
アラモードさんが何かを思い出したかのように、机の引き出しを開けて中から何か小さな箱を取り出した。
開けると中には綺麗な装飾が施された笛みたいなものがあった。
「今回の事で、商人ギルドから送りたいというモノでござってな、『安らぎの笛』という魔道具でござる」
「名前がそのままなようですが」
「まあ、効果もそのままでござるな」
いわく、この笛は吹くと自然と安らかな気持ちになれる効果がある音を出すという。これはこれで面白そうなものだよね。今度演奏してみよう。
「あとこれもでござるな。というか、こっちのほうがメインでござるが」
と言って出してきたのは、何やら立派な杖であった。白い木の枝で作られているようで、先端部分には綺麗な赤い水晶が付いている。
「アル殿が人化時の時は、魔法主体の攻撃でござろう?この杖は魔道具『絢爛』とかいう名前の物でござる。これを装備すれば命中率と、威力の加減がさらに微調整できるようになるものでござるよ」
「おおー!!結構いいじゃん!!」
威力の加減ってのが一番いいな!!やりすぎることがあるからなぁ。
とにもかくにも、良いものが手に入ったので俺は我が家に帰宅するのであった。
「・・・・うわぁ」
帰宅すると、畑の方に何やら巨大な木が生ええているんだけど・・・これって。
「ぐおぉぅ」
「お前か!!」
地龍がどうやらいろいろ頑張ったようで、畑が密林と化してました。
なんでだ?
とにもかくにも、作物や木の実がなる木がものすごく育っているんだけど・・・・まぁいいか。これはこれで良しとしよう。
・・・・・あ、こいつ砂漠とかにおいておけばいいんじゃないか?緑化できるなら砂漠とかでもすごい活躍しそう。でも、そこまで行く気は当分ないから別にいいか。
・・・ボスモンスターであった地竜。
ボスモンスターという職を捨てて、彼(彼女?)は神龍帝の畑番としての第2の人生を楽しみ始めました。
まあ、神龍帝の影響を受けてか雷鶏同様に通常のモンスターとは異なる方向性に行きそうですけどね。
性別と名前はそのうち決める予定。
討伐されずに済むし、畑の手入れを手伝えばいいだけ、いつでも昼寝可能、三食おやつ付きというホワイトな環境です。ボスモンスターの生活なんてなかったんや。




