037 潜入捜査1
本日2話目
マイペースだけに、行動も早く出来るんです
SIDEアル
「え?ここの第2皇子の評判?そりゃ最悪だよ」
「道端で買い食いしてごみを散らかす」
「娼館通いで財政を圧迫させたりとかね」
「冒険者たちに無茶苦茶な依頼をしてきたりするんだよ」
「皇子だからって言って権力をかさに着ようとしていたりとかさぁ」
「男尊女卑とか言っていて、自身は娼婦にうつつをぬかし、有能な側近を左遷したり」
「皇帝陛下はもうこいつは見てられねぇって見捨てているんじゃないのかな?」
「・・・・うわぁお」
現在、俺はバンダンガ帝国に訪れていた。
もちろん、ここの近くまで飛んできた後、人化してこっそり帝国内に出入りする馬車に乗り込んで潜入したけど・・・・予想以上だった。
どれだけ評判悪いんだ第2皇子よ。名前がダラーヴァ=バンダンガとかいうが分かったけど、もう少しもじれば「バカ」と「ダラ」が出てきそうな名前だよ。
というか、もう第1皇子が帝位を継ぐことが確定しているレベルなのに、他国に戦争を仕掛けるようなことをしているのだとか。
なんでも、皆の予想だとここで帝位を告げなくても、戦争でも起こしてそのどさくさに紛れて第1皇子を殺すつもりではなかろうかとかいう話らしい。
もう皇帝陛下がいくら叱ってもいうことを聞かないらしく、さらに何かしらの変な組織とつながって皇帝に自身の悪行がばれぬように裏工作を行ってもらっているのだとか。
「流石に終わっているんじゃないか・・・・?」
金の収入源はなくなって、現在借金で借金を返すという自転車操業状態・・・・帝位を継いだら必ず返すとか言っているけど、踏み倒す可能性がものすごく高い。
それで、今回アリス姫にあのようなことを働いた理由が、形ばかりとは言え王女を手に入れられれば、その国の金を使えるようになるのではという目論見と、色欲によるいやらしい事を企んでいたのが原因ではないだろうかという事であった。
さすがにこれなら俺が直接手を下さなくても、近いうちに自滅するよねこりゃ。
それにギルドに引き渡したあの不審者どももそのうち判明して、よりあの第2皇子の立場は危うくなるであろう。
だが、ここで問題になってくるのがその組織とやらである。
町の人達もなんか変な集団とつるんでいると言っていたし・・・・・この集団も要注意かな。
「おっちゃん、このカブデ草とかいうやつ3つくれ」
「あいよ、銅貨6枚な」
ついでに、この帝国で見つけた食料なんかも確保しておこう。こちらはこちらで気になるからね。
カブデ草・・・カブに似た野菜だな。カブの味噌汁あたりが作れそうかな?
あ、そういえばザップリンさんのほうで頼んでいたことは伝えたのかな?
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SIDEザップリン
『・・・・ふわっ!?公認モンスターがかよ!!』
「そうじゃ、たぶん今頃ついたじゃろう」
ザップリンはギルド間通信魔道具で現在、帝国のギルドマスターに連絡を取っていた。
ギルドはどの国にも属さない権力機関。
なので、帝国にあるギルドともこうして通信ができるのだ。
「なんでも、観光目的だとからしいが・・・・そっちでは今第2皇子とやらがやらかしておるじゃろう?念のためにと思ってな」
一応嘘は言っていない。
ただ、「公認モンスターがその国に入った」ということは本当ではあるが、目的は「観光」ではなく「調査」である。
まあ、アル曰く「流石言暴れることはないだろうけど・・・念のためにね」と言われて、一応万が一に備えて伝えておくことにしたのだ。
『うっわぁぁぁ・・・こっちはつい先日その大馬鹿くそ野郎第2皇子がもめごとを起こしたばっかりだというのにかよ』
頭を抱える帝国側のギルドマスター。なんとなく、アルと感性が似ていそうだなとザップリンは思った。
どうやら先日いろいろともめ事を起こしたばかりのようで、その疲れが見て取れた。
「それでな、公認モンスター・・・・『神龍帝』のアルがそこに行ったというのは別にいいんじゃが、そっちの第2皇子と接触したら大惨事が起きそうでな、一応勧告しておこうと思ったのじゃよ」
『大惨事どころか国が無くなる可能性があるだろう・・・・・』
公認モンスターが暴れたらシャレにならないレベルなのは、ギルドに努める者たちの常識である。
それに先日、アララン共和国のギルドマスターもその実力を見ている。
『それにあの第2皇子がその脅威を理解できているかわからんしな・・・・・』
なんとなく嫌な予感しかしないと、帝国のギルドマスターはそう感じたのであった・・・・・。
まだしっかりと定まっていないけどさ、帝国のギルドマスターから苦労人臭が出てきているような・・・・。