エピローグ
出来れば300まで行きたかった。
……その世界に、ある日一つの卵が生まれ落ちた。
それから生まれたのは、穢れ無き純白の綺麗なドラゴン……神龍帝。
名前は『アル』。
彼についての話は歴史に様々なところで記されているが、ある程度の年月が経過したところで、その存在は埋もれていった。
けれども、彼がやっていったことは多くの人たちの心に残るようなことが多かった。
鉄道網、魔道具の発達の大半は神龍帝によるものだそうだ。
そして神龍帝はまた、公認モンスターたちとも多くの交流を結び、様々なつながりがあったともされる。
彼の眷族である各龍帝たち……炎龍帝、水龍帝、氷龍帝、木龍帝、雷龍帝、土龍帝、聖龍帝、闇龍帝などとも言われる存在もいたそうで、公認モンスター扱いではなかったとはいえ、多くの人々の心に残るようなことをしたという。
神龍帝の子孫である者たちはそれぞれが個別の場所で大成し、歴史に関わる事や、果ては異世界にまでその存在を知らしめたそうだ。
……本人曰く、まさかそこまでなるとは思わなかったという記録はあるらしいが。
長い長い年月が経ち、神龍帝には二人の妻がいたそうだが、その妻たちの間には数十年おきほどに子供が生まれていたらしい。
妻の方は人間と獣人だったはずだが、どういうわけか神龍帝の影響を最も強く受けていたのか、一緒の時を多く過ごすことができるほど寿命が延びていたそうである。
……そして、年を経て次代の神龍帝が生まれたときに、アルは妻たちと共に生涯を終えたとされる。
だが、一説によると生涯を終えたのは肉体だけで、精神的存在になって今なおこの世界を見守っているのだという。
神龍帝……「神」と名が付くだけに、神となってこの世界を治めているのだと。
神龍帝についての記録は、彼によって想像された、たった一体の機械神とまで登りつめた者が最後まで記したのだという。
そして、神龍帝のアルが生涯を終えるとともに、その者も別の世界へと旅立ったそうだ。
まるで、自身の新たなる主を求めていくかのように……
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「……というのが、神龍帝のアルと呼ばれた者の存在であるっと」
とある街の孤児院にて、子供たちに向けて紙芝居をしていた青年が読み終え、幕を閉じた。
「へー!!そんなのがいたのか!!」
「ねーねー、紙芝居のお兄ちゃん。その人って本当にいたの?」
一人の少女が疑問に思って、首をかしげながらそう尋ねた。
「ああ、いたのさ。はるか大昔だが本当に存在し、強く、優しく、今でもドラゴンたちの方でも長く語り継がれているのだとか」
「その根拠ってあるのか―?」
一人の少年が疑問の声を上げる。
「うーん、彼の成したげたことは大きなことだったけど、この世界の文明って大きくなりすぎると自動的に衰退するようだしねー。記録だけはあるんだけどね、その成し遂げたことがまっさらになって今の生活があるんだよ」
「なんだよ、証明できていないじゃん!!」
不満の声を上げる少年少女たち。
けれども、返答していた青年はチッチッチと指を振る。
「いやいやいや、彼がいた証拠ってあるんだよ。その証拠がこの鱗さ!!」
何処に持っていたのか、穢れのない真っ白な大きな鱗を青年は皆に見せつけた。
その鱗が作りものではない本物であるという事に皆は自然となぜか理解ができた。
その神々しいうろこを見て、皆今の話が本当なのだとわかった。
「……な、本当にいたという証拠はあっただろう?」
そうにこやかに青年はいうと、紙芝居もその鱗も懐にしまって孤児院を後にした。
こういうことをしてみたり、話したりして見たりすることで、人々から忘れられるようなことは起きないだろう。
そう思いながら青年は空を見上げ、今はいない友を懐かしむような顔をする。
「……不老不死とかって、こうやって記録を伝えるためにあるのだろうな。そうだろう?我が友よ」
青年は……永遠の長い時を生きる吸血鬼はそうつぶやき、自身の愛する妻たちがいる家へと帰路につく。
長い長い年月の中で、自分が出会った友人たちの事を、ゼノは時々こうやって人里で語り継ぐのだ。
そんな彼にとっては、神龍帝のアルが生涯で一番印象深かった友人であると言われているのであった。
……月日は流れ、記憶は薄れる。
けれども、神龍帝の残した記録はいつまでも残り続けたそうだ。
~THE END~
本当に、長い間ご愛読ありがとうございました。
この物語のように、子供を産んでからの生活やドタバタも書いたのは執筆作品の中で初めてでしたが、良くここまで書けたのは、読者の皆様方からのコメントなどのおかげです。
アルの子供たちが主人公のお話は……機会があれば、書こうかと思います。今はとりあえず、これまでのご愛読なさってくれた皆様方に、心からの感謝をこめてお礼を言いましょう。
「ありがとうございました。またどこかで彼らの子供たちの話で会いましょう!!」
「転生先はミミックでしたよ」
http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/176115674/
アルファポリス様で書き始めてみました。まだ話数が少ないですが、こちらもどうぞ。あ、作者名は変わっていますので要注意。