242 時間が少々経過して
出産からはやひと月・・・
…アリスとランの出産から一ヶ月ほど経過した。
産後の容体も出産以前とは変わりがないようで、時たまランが育児の合間に出産まで控えていた戦闘をゴーレムたち相手にやっていたりしていた。
ラルにセレス、エルド、シストの4人も、皆赤子の状態ですくすくと成長…
「おとーしゃま、このご本読んで―」
「…また?しかも絵本じゃなくてそれ辞書なんだけど…」
「うーん、セレスだけ早く育ってますね…」
なぜかセレスだけがもう3~4歳児ほどまで成長しており、こうして本を読んでほしいとねだるようになった。
他の3人はまだかわいらしい赤子なのに、何でセレスだけ成長がこうも早いのか…
まぁ、可愛い愛娘だからいいけどね。
「マスター、もう親バカになっているんですカ」
ファーストのつぶやきは聞こえなかったことにしたい。
けれども、何で本当にセレスだけが成長が早いのか…そう言えば、セレスの種族は神龍になるんだっけ。
「ふむ、それはおそらく種族の成長速度の差によるものなのだよ」
「あ、やっぱり?」
一応気になる事なので、モンスターに関してザップリンさんよりも長く研究をついでにしているらしいミャルゲスに聞いてみると、彼女の考えは種族差によるものだという。
「そもそもモンスターの成長速度は速いモノなのだよ。人間などとは違って、より弱肉強食な世界だからある程度までの成長はして、そこからゆっくりとした感じになるのが普通なのだよ」
「みゃりゅげしゅおばちゃまー、この本かしてー」
「ちょっ!?それ研究中のミミックブックなのだよ!!」
「何危険なものを持ち込んでいるんだぁぁぁぁ!!」
少々ごたごたはしたものの、ミャルゲスの衣服がミミックブックとかいう人食い箱の本バージョンにズタズタにされた以外は無事で済んだ。
セレスは死守したからね…まぁ、久し振りの「神龍帝の威圧」で近寄らせないようにしただけだけどな。
「さてと、話しは戻すのだよ」
ズタボロになった衣服を着替えて…あ、衣服の替えがなかったのか小さな幼女の姿になりやがったこいつ。そのサイズの服しか今着れないのか。
「セレスの種族は神龍…まぁ、簡単に分類するならドラゴンという事になるのだよ。とは言っても、姿の基本はその人の姿であり、人化の術のようなものとはまた違うのだよ」
まだ幼いのか、早くもスヤスヤと眠るセレスをアルは抱きながら話を聞く。
「というと?」
「まぁ、きちんと成長する身体とでもいうか…未だによくわからないからここは我の推測になるのだよけど、大して気にするほどでもないとは思うのだよ。自分でこうして考えるまでは速く成長するのだろうけれども、後はそんなに他の姉妹姉弟とは対して差はできないのだよ」
結論「わからないけど、心配するようなものではない。肉体の成長ももう少ししたら収まるだろう。ただし、精神的な成長は早い可能性があるので、そのあたりの教育をきちんとくみ上げたほうが良い」。
…とにもかくにも、この子だけ一旦急速な成長はするけれども、後は皆と同様の速度に収まるのではないかという推測のようである。
「考え過ぎないほうが良いのかなぁ?」
「そうしたほうが良いんじゃないですか?むしろ、精神的な成長が早いのであれば、色々と知識を教えたり、経験を積ませたほうが良さそうですかね?」
「読書家のようだしね。他の子たちの世話もできているようで…ただ、ラルとエルドのおしめを手伝って変えたりするのはまだいいのだけれども、シストに関してはべたべたつきっきりになっているわね」
将来的なシスコン・ブラコン方向へ成長する可能性が…うん、きちんと教育しないとな。
重度化したらちょっと将来が心配になるしね。
これからの子育てを考えると、まだまだ暗中模索の手探りの状態となるアルとアリス、ランであった。
子供の成長は喜ばしいが、その教育方針を定めるのが大変である。
そう言えば、季節的には秋ごろになるのだが…忘れていることがあるような。