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233 バンダンガ帝国の内乱・・・だけど

指摘によって正しい方へサブタイトルを修正しました。

「情報は集まったか?」

「はい、ある程度推測可能な量までの情報が集まりましタ」


 バンダンガ帝国でと当然として起きた他国の兵士たちと思わしき者たちによる占領から2時間。


 諜報部隊が多くの情報を入手出来たようで、そのことをサイトウも交えてとりあえずギルドの執務室で話すことになった。


 一応、ギルドには攻め入る様子もないし、外部からの盗聴も防ぐために魔法やらその他魔道具(マジックアイテム)やらできちんと戸締りも確認してから、連れてきたファーストはその受けてきた報告を話した。


「まず、現在このギルド周辺及びバンダンガ帝国全体を占領している兵士のような者達ですが、調べたところどの国の国旗にも当てはまりませン。ですが、この帝国とは全くの無関係という事でもないようなのデス」

「どういうことだ?」

「つまり・・・・この国で出来た新たな軍隊みたいなものか」

「はい、軍事クーデターが起きたという事でいいでしょウ。兵士たちの顔ぶれなども調査しましたが、どれもがこの帝国の兵士たちでしタ」


 どうやら軍事クーデター・・・・つまり、このバンダンガ帝国の軍が反乱を起こしたという事になる。


「なるほど・・・そういえば、うちの国の兵士たちは良くここの待遇を愚痴っていたな。給料が安いだの、働くことが多くて辛いだの足クサいだのってな」


 反乱を起こす要因に心当たりがあるのか、サイトウがそうつぶやく。


「というか、軍が起こしたクーデターってことは皇子の立場の人たちはどうなっているんだ?」

「そのことですが・・・・現在王城にて皆監禁されているようです。そして、最悪とでも言うのでしょうか・・・・皇帝がすでに亡き者にされていマス」


 もう国のトップを葬り去っていたようである。


「突然の事で、予測できていなかったことでもあるので防ぐことはできませんでしタ。まあ、マスターの命令がなければ防ぐつもりもありませんガ」


 国が何をしようが別に勝手にしていろと思えるからね。


 公認モンスターの立場にいる者たちからしてみれば、自分たちに実害がなければ放っておいていいようなことだからだ。


 それに、いちいち国に肩入れする意味もないし、ましてや色々と面倒ごとを引き起こしてきた帝国ゆえに、助ける義理もない。


 前世からの友人だけを助けることはするけど、それ以外は助けるような理由ない。



「しかし・・・クーデターって現実に起こり得るもんだな」

「反乱が起きそうなのはわかるけどな。色々と確執やら傲慢さが帝国には近年浮き出ていたし、いつ起きてもおかしくはなかっただろうよ」


 それはそうとして、この後はどうなってくのだろうか。


「潜入した小鳥型諜報ゴーレムと、虫型によりますと主謀犯はゲルガー提督。バンダンガ帝国の軍事部門でのトップにあたり、皇帝がいなくなった玉座に座って、現在部下たちから各地の報告を聞いているようでス」

「ばかな!?ゲルガーさんだと!?」


 その名前を聞き、サイトウが驚きのあまり目を見開いて叫ぶ。


「知り合いなのか?」

「ああ、というかこの国では知らない者が居ない方が珍しいほどの人なんだぞ!?このバンダンガ帝国の混沌にまみれた上層部の中に唯一残る良心を持った人として人気がある人なんだ!!サインもそこに飾ってあるんだよ!!」


 どうやら帝国内にいる軍人たちからも慕われ、国内にいる人たちからも人気が高い人物のようである。


「ゲルガー提督。60代後半にして、まだまだ現役で戦闘の最前線に自ら飛び出すほどで、人気があれども毎回飛び出さないように周囲の者達が抑え込むのに苦労するほどハッスル元気いっぱいな人らしいデス。子供たちにも優しく接し、行けないことはきちんと厳しくしかる皆のお爺ちゃん的存在でもあるようです。一方で、戦場では情け容赦なく対照的な印象を持つのだとカ」


 もうすでにその提督の事についても調べ終わっているようであった。


「というか、また何でそんな人が軍事クーデターなんかを引き起こしたんだ?」

「あー・・・・どうやら情報によりますとなんと言いますか、第1皇子を除く皇子たちがその引き金をひいちゃったようデス。あ、サイトウさんはすでに抜けていますので関係ありませんガ」


 報告書類に目を通したファーストは、どこか自業自得ではなかろうかというような表情をしていた。




 話によると、事の起こりは3日前。


 帝国の第1皇子の結婚式がもうじき開かれるようなことが噂で皆に広がり、次期皇帝で決定ではなかろうかみたいなムードが流れていた。


 そんなムードを覆して自分達こそが皇帝になってやろうとする皇子たち。


 

 色々と細工をして、結婚式を滅茶苦茶にして、その責任としておとなしく帝位継承権を無くすようにしてやろうかとしていたらしい。


 まあそんな皇子たちも根っこが腐っていたというか、性格の悪さで選ばれないだろうというような人が多かったそうな。


 


 その邪魔してやろうという準備の途中、皇子たちは偶然ある孤児院近くを通りかかったらしい。


 そして、そこで働いていた可愛らしいある娘に全員が目を引かれて自身の嫁にしてやるとかいきなり高圧的な態度でバカをやらかしたそうだ。


 当然、皇子たちの事は皆噂やらでその素行などが知れており、その娘は断った。



 それに激怒するのがその馬鹿たちである。


 皇族としてあるまじきようなことをその孤児院で行い、人に知れ渡らない様に自分たちの持っているだけの権力で闇に葬り去ろうとしたらしい。



・・・・・けれども、それが今回のクーデターにつながった。


 その孤児院で働いていた娘も皇子たちによって辱められ、もう二度と日の目を見ることができないほど汚された。


 そして、その娘・・・・・娘とくれば親がいて、親がいればその祖父がいる。



 そう、その子の祖父こそがゲルガー提督だった。


 ゲルガー提督は自身の大事な孫娘が孤児院で働くことに関して心配していたが、一応治安もまだまともな方だったので護身用のナイフを持たせ、時々訪れることによって身の回りの安全を守っていたらしい。



 けれども、その孫娘が汚された翌日に彼が訪れる予定だったようで、運悪くその場にいなかったそうだ。



「その翌日、2日前に訪れたときにはすでに孤児院は・・・・・・」

「そういえばギルドの方で話題にも上っていたな。孤児院が一つ消失していて、誰がやったのかはわからないけど権力者がもみ消したかのように情報が手に入れにくい状態だったと」


 ファーストのその言葉に、サイトウは思い当たることがあったらしい。


「つまり、自分の孫娘の敵討ちでクーデターを起こしたのか?」

「そう言うことになるでしょう。その元凶の皇子たちを倒そうにも相手は仮にも帝位継承権があるモノたちなのでうかつに手出しはできませン。それに、そのような状態になるまで育児放棄をしているかのような皇帝にも文句はあったのでしょウ。そこで短期間のうちに自身の人望と計画によって素早くこうやってクーデターを起こせたのでしょうネ」


 たった一人、されど一人を襲ったことにより起きた事件というわけか。


 国旗も違うのを掲げているということは、国そのものを変えてやろうという意思の表れなのだろう。



「そして、皇帝を殺害した後すぐに他の重要人物たちも皇子たちとまとめて監禁してますネ。ですが、ゲルガー提督は完全な独裁者の様な人ではなく、きちんとのその人となりと能力を見て解放するのもあるでしょウ。皇子たちは絶望的ですが・・・・・」


 そして今こうやって周囲を兵士たちが占拠しているのは、その大掃除のようなことで収拾がつくまで、念のために国民の安全を確保しようとしているのだとか。



「なるほどなぁ。なんというか、遅かれ早かれこの帝国はつぶれる運命みたいなものだったという事か」



 領土の関係で他国と醜い争いを繰り広げたりなどもしていたようだし、放っておいても自滅するだろうと思っていたが・・・・・まさか内部から本当に自滅するとは思わなかった。



 後日、バンダンガ帝国はクーデターを引き起こした軍によってその情報が各国に詳細に伝えられた。


 新たな国名は「ネオバンダンガ軍事帝国」で、政権を握るのは・・・・ゲルガー提督改めゲルガー元帥。


 皇帝及びその一族は、その孤児院でやらかした馬鹿たちと皇帝本人が処刑され、能力が認められた者たちはその能力にあった地位へと着任。


 なお、元第5皇子であったサイトウもその一族に入りそうなものだが、ギルドマスターとして着任しているので特に何もなかった。しいて言うなれば、ギルドに迷惑をかけてしまったという事で寄付金が多く渡されてきたらしい。


 また、ついでに汚職などをしていた者たちも一掃して国内の正常化を図り、混乱を招いたことから一時的に税金などが引き下げになるそうだ。



「ちょうど国内のあちこちが疲れていた時期という事もあり、ゲルガー元帥の手腕によってあちこちがまともになるように改革が実施されているようデス。国民からの評判も高く、このクーデターは受け入られ形へなったようですネ」

「皇帝及び処刑された馬鹿者たち以外には死傷者もなく、帝国の貴族たちもまともな人たちが多く残っているのか・・・・なんというか、こんなこともあるんだな」


 人生本当に何があるのかわからない。



 そしてクーデターがあってひと月ほどで、ようやく国として落ち着いたようであった。


 この場合って国が消えたというよりも生まれ変わったとでも言うのだろうか?


「あれ?そういえば第1皇子とかの方はどうなったんだ?」

「それは後日またきちんと行うようですよ。皇子としての地位はなくなったようですが、その相手の国の方へ嫁ぐというか入り婿の様な形にさせられたらしいデス」

「親とかが殺された遺恨なんかは・・・・」

「ないそうですネ。むしろ皇帝の大きさよりも、そのお相手の小国の次期国王になりたかったようでしてむしろ感謝しているそうデス」



・・・・人間って本当によくわからんわ。


シリアスな雰囲気は何処かへ逃亡したしました。

他作品の方へ逃げ込んでいくようですが、果たして作者の作品で生き残れるでしょうか。

孫娘のような悲劇を起こさないように新たな元帥はできるのでしょうか?

微妙な後味の悪さがあるのが悔やまれるところである。

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