228 おだやか?な日
久し振りの準レギュラー陣登場です。
・・・・新婚旅行も終わり、アルたちは自宅で旅の疲れを癒していた。
「ふぅ、やっぱり遠いところに行くのも疲れるな」
「ジーポングルの方でカイレンさんに会えたのは良かったですけどね。でもあの人ちっとも昔から変わっていませんよ」
「世界樹の国もきれいだったわね・・・・ああいう幻想的な風景をバックに、戦闘出来たら面白いかしら?」
「いやそれダメ・・・・でもないのか?」
一瞬ランのその言葉にアルは迷ったが、色々と微妙なので明確な返答はごまかすことにした。
「にしても、ふと思ったんだが・・・・・転移魔法でまた行くこともできるんだよな」
一度行った場所であるならば、その場所へ行ける魔法である。
とはいっても、リューグジョウ王国あたりはむやみやたらに行けそうにもない。そこは出入国が結構厳しいからね。うかつにばれたらやばそうなの間違いなし。
ついでに、それぞれの国で買ったお土産を普段世話になっている知り合いに渡すのは忘れない様にしていた。
まずはザップリンさん。
「これお土産ですよ」
「ほぅ、ジーポングル産の茶葉かのぅ。ふぉっふぉっふぉっ、ありがとうだのぅ」
年齢的なところから考えて一番良さげな茶葉である。和菓子みたいなのも添えてである。
次に、同じ公認モンスターにして、俺よりずっと大昔の転生者でもあるゼノへ・・・と思ったけど、どこに住んでいるのか正確な位置が不明。
ゴーレム諜報部隊でも出現場所はわかったけど住居まで特定できなかった。
恐るべし、歴史にちょっとだけ見え隠れしている公認モンスター。
・・・・あれ?そういえばジーポングルのヒスイの話に出ていた奴ってゼノじゃないか?
今度会う機会があればお土産渡すついでに聞いてみるか。
アララン共和国やベースタックなどのギルドマスターにもお土産を渡したところで・・・
「そんでもってお前にはこれが良いかと思ってな」
「日本刀!?」
バンダンガ帝国にあるギルド、アルの前世の友人高山にして、現在サイトウにもお土産を渡した。
「ジーポングルで見かけてな、多分転生者の作品だろうけど・・・というか、確定か」
「鑑定」できちんと確認しているのである。
とはいえ、今は生きていないようだけど。「○○○最後の作品」みたいなことがあったからなぁ。
「俺たちの前世につながりがある品としても、土産にもちょうどいいと思ってね。といっても、お前にあるスキルは確か・・・・」
「言語翻訳」「大斧使い」「大剣使い」「ロマン砲」・・・・以前、鑑定しちゃったときに見たサイトウのスキルである。
日本刀のような刀を扱えるようなスキルは見なかったけど、スキルというのは練習すれば身につくだろうし多分いけるのかな?
「まあ、お土産だから飾っとくだけでもいいんだろうけどね」
「そうなるな。刀というのは人を斬るものではない・・・・ってセリフを結構漫画やアニメで聞くし、飾るぐらいかな」
でも、こういう日本刀とかがあるだけでもちょっとカッコイイと思えるのはなぜだろうか。
あれか、微妙な中二病心か男心をくすぐるのだろうか。
ちなみに、木で作られた木刀やら模造刀も売っていたけど、前世の現代日本と違って銃刀法違反もありませんので真剣・・・つまり本当に切ることが可能なやつです。
念のために非殺傷となるような効果を付与させていますので、万が一があっても多分大丈夫だろう。
「にしても、神無月・・・今は神龍帝のアルだっけか。美人お嫁さん2人と結婚したのはうらやましいぜ」
「まあ自慢の嫁だな。・・・・と、ふと思ったけどさサイトウ、お前って前世結婚していたのか?」
「ああ、一応してはいたが・・・・・・すっごい尻に敷かれたな。亭主関白の反対で、いや本当にあれは苦労したな・・・・」
ふと思った疑問をアルが尋ねると、サイトウは遠い目をしてそう返事した。
あ、これすっごい苦労しているやつだ・・・・・
そのサイトウの表情から、どれだけ苦労したのかをアルは悟った。
「あれはひどかった。それでも離婚しなかったのは互にわかっているようなところがあったからだろう・・・・たまに鞭とかろうそくを出すのはやめてほしかったが」
おいサイトウ、お前本当に前世の嫁と何があった?絶対やばいことになっていただろ。
友人の前世の事に、アルはどういえばいいのか少し悩んだのであった。
「そういえば・・・ふと思い出したんだがな」
と、雰囲気が変になったのでサイトウが話を切り替えるために何か話題を出してきた。
「何かあるのか?」
「ああ、このバンダンガ帝国で最近聞くんだが、そろそろ第1皇子あたりが結婚するらしい。そしてそこから考えるにどうもそろそろあのくそ親父・・・・現皇帝が退位して、やっと帝位継承権争いが終結するのではないかという噂があるんだよな」
「あの第2、3王子とかであった根本の問題か」
このバンダンガ帝国では、皇子が数多くいるらしくその帝位継承権で水面下の争いが続いていたらしい。
その争いの一部に手を出してきた輩がいて、その時は国をつぶさずに丁寧にその王子たちだけを狙ったが・・・・
「やっとそのくだらない争いが収まるのか」
「まあ確かにそうだよな。俺も元第5皇子とはいえ、その争いは本気でくだらなかったし、下手すりゃ紛争、国崩壊をやらかそうとしたやつもいたからなぁ・・・・」
サイトウとしては身内の争が本気で醜いようである。
こいつとしては権力よりもいかに自由に暮らせるかを考えているようなやつだから、そんな権力争いには興味がないのだろう。
「ま。その第1皇子の結婚式だがな、最近なりを潜めていた他の皇子たちが水面下で結束しつつあるようで、まーた面倒ごとを引き起こす可能性があるんだよな。・・・・そこで先に言っておくけどよ、またお前のところにちょっかいをかけてくるような懲りない大馬鹿野郎がいないとも限らないし注意してくれ。いや、こっちとしてはこの国が亡びる可能性があるから・・・」
「流石に俺でもそうホイホイ国を滅ぼさないってば。アリスたちに手を出したら社会的・肉体的・精神的な苦痛と死を与えてやるけどね」
「それ思いっきりオーバーキルしていないか!?」
とにもかくにも、しばらく要注意はしておいたほうがいいらしいとサイトウからの話をアルは聞いたので考えておくことにした。
ま、今もこうやってバンダンガ帝国が残っているのも不思議だけどね。
気まぐれで残しているような国だし、エーゼット王国の様な愚かなことはしてほしくはないかな。
そう思いつつも、他のお土産を親しい人へアルは配りに行くのであった・・・・・
後日談
和菓子もお土産としてアルが思い出して渡してきたのだが・・・・・・その日、アルが去った後にギルド内の甘党たちの間で壮絶な戦いが起きたのであった。
「おい、まんじゅうとか団子とかわざとだろ?」
「え?わざとですが何か?面白そうだったもん」
「確信犯かよ!?」
巻き込まれてズタボロになったサイトウはそう叫んだという・・・・・・