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022 狩り過ぎたので

今回、他の視点からです

SIDE商人ボウル


「くそっ・・・・ここまでか・・」


 商人ボウルは背後の方から迫ってきているブラックウルフの群れに対して、物凄く愚痴をこぼしたくなった。


 もともと、ボウルの他に3人の他の商人がおり、今回このブラックウルフの毛皮を狙っての商売だった。


 ブラックウルフの毛皮はそこそこいい値段で売れ、うまいこと行けば大儲けができ、うまいこと行かなければ大損どころか死が待ち構えていた。


 そんなものを狙うのは本来ならボウルはやらなかったであろう。


 だが、ここ最近の営業不振によって店の売り上げが落ちてきており、起死回生の手段として今回他の困っていた友人たちを誘ったのである。


 もちろん、彼らは商人であって戦闘力はないに等しい。


 それに、冒険者を雇って仕入れるとか、ギルドから買い取って仕入れるとかいう手段もないわけではなかったのだが、彼らには余り余裕がなかった。


 しかし、ここで仲間の商人が持ち出してきたのが強力な痺れ薬であった。


 ブラックウルフは普通の犬や狼などと違って、自分の害となる臭いなどをシャットアウトできる。


 だが、その痺れ薬は強力なものでかすっただけでもどんなモンスターでも痺れて動けなく出来るというものであった。


 そして、この痺れ薬を見て思いついたのが彼らでも扱えるような・・・・・爆弾。


 火薬を入れて、痺れ薬を塗り込んだ安物のナイフなどを入れて群れに放り込む。


 爆発四散すればそのナイフがたちどころに襲い掛かり、次々とウルフたちを痺れさせて動けなくしていって、そこで絶命させて毛皮をとるつもりであった。


 しかも、これなら冒険者たちを雇わなくても自分たちで何とかできそうだし、うまいこと行けば一気に群れその物を利益に出来る筈であった・・・・。




 ただ、彼らが失念していたのはその周囲にほかのブラックウルフの群れがあって、いつの間にか集まってきてこのような事態にんったのである。


 欲望から出た、身から出た錆であるのだが今はもう逃げるしかなかった。


 冒険者たちも雇っておらず、ブラックウルフたちも撃退できずに馬車を走らせているのだが、もう追いつかれる。


 他の荷馬車に乗っている友人たちもすでに気絶しているのだろうが、いかんせん商売で培った度胸のせいで気絶ができない。


「もはやここまでか・・・・」


 ボウルは思う。この結果になったのは自らが招いたものだと。ここで死んでも、仕方がな・・


「ん?」


 ふっ  と影が差す。


「ん・・・な、なんじゃァありゃ!!」


 上空を見ると、大きなドラゴンが下りてきていた。


 純白の身体を持ち、影が差していながらも見えるその姿は何処か勇ましく、美しい。


 死の間際に神が使わしてくれたのかと思った瞬間、その姿が小さくなっていき一人の青年の姿になった。


「な・・・・!?」


 さすがにドラゴンが人の姿になるとは思えなかったのだが、そんなことも気にしないかのようにその青年は手を前の方に出して落ちながら何かを言った。


ずばばばばばばばばばばばばん!!

「キャンッ!!」

「ワフオォイ!?」

「はぁっつ!?」


 その青年の手から何やら電撃のようなものが出て、あっという間に追いかけてきていたブラックウルフの群れ全体がまるで感電したかのようにしびれて、その場から動かなくなった。


 何かの魔法のようだが、ここまで大規模なものを見るのは生まれて初めてで、目を疑いたくなった。


「おい!!馬車を止めろ!!」


 あの青年が何者か知りたくなって、ウルフたちも全滅したようなので慌ててボウルは御者に馬車を止めるように指示を出した・・・・。


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SIDEアル


「・・・・ありゃ?」


 これ・・・威力高すぎたかも。


 地面に倒れたブラックウルフすべてが絶命していることが分かり、俺は少し冷や汗を流した。


 危険すぎるというか、なんというか・・・


 


 まあ、毛皮そのものには傷がついていないようだし、よかったと言えばよかったかな。


 人には絶対に使えないが。雷に打たれて死んだかのような感じになるからな・・・・



 にしても、大量にやっちゃった。「亜空間収納」のスキルは生きているものは対象外だからこれでも全部持って帰れるけど・・・ギルドに必要ない分は買い取ってもらうか?モンスターがモンスターを換金するために運んでくるのは変な気がするけど。


 いや、でもいちいち亜空間収納に入れるのがな・・・・めんどくさいような。



「うーん・・・・倒した後のことを考えておくんだったかな・・・」


 保存食として利用できないかと思ったけど、激マズなようだし・・・。




 と、悩んでいると先ほどの荷馬車のうち1台がこちらに戻ってきていた。


 そして、すこしひょろいおっさんが下りてきた。


「あ、あの!!助けてくれてどうもありがとうございました!!私めは商人のボウルです!!」

「ん?いや通りかかっただけなんだけど・・・・」


 助けてくれてと言われてもな・・・まあ、助けた形になるからいいか。


「それで、恩人にこんなことを言うのもなんですが、あの純白のドラゴンからその姿・・・・そして、あの大軍を魔法一発で倒すなんてあなた様は一体どこの誰なんですか!!」


 あー・・・・そりゃ驚くような。とりあえずわかるように公認モンスター証明書を見せたらおっさんは驚いた。



「こ、こ、公認モンスター!?」

「神龍帝のアルだ。たまたまこのあたりを飛んでいて、あのウルフたちの毛皮を冬に備えてほしかったのだが・・・」


 と、ここで名案を思い付いた。いちいちしまうのも面倒だしここは・・・・・。


「・・・必要以上に狩り過ぎたので、必要分以外は引き取ってくれないかな?」



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SIDE商人ボウル




 人の姿から元のドラゴンの姿になって、あっという間に飛んでいった神龍帝の姿を見ながらボウルはしばし放心していた。


 残されたのは、大量のブラックウルフの死骸である。


「・・・・あのような人もいるんだなぁ」


 2,3頭ほどのブラックウルフをあっという間にどこかに仕舞ったのには驚いたが、何よりもあのドラゴンが公認モンスターだということに驚いていた。


「そういえば、新たな公認モンスターの知らせがあったんだっけ・・・」


 ギルドから知らされることでもあるのだが、商売に関わるようなことでもないので気にしてはいなかった。


 それが、こんな形で出るとは・・・・・誰が予測できただろうか。


 ただ、目の前一面に広がるブラックウルフの死骸が自分のものになったのはわかる。


 これだけの量だと市場の調整などもいるだろうが、当面は金銭面での補償ができる。


 荷馬車に詰め込めるだけ詰め込み、逃げた友人たちにも急いで伝えて全員でその毛皮を売りに出し、大きな利益を得た。


 のちに、この資金をもとにして新たに商会を立ち上げて再び神龍帝のアルと巡り合うことになるのだが・・・・それはまた別のお話。

この人、しばらくしたら再登場の予定

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