220 忘れていたけど
そもそもヒスイがなぜここにきているのかってことを忘れていた。
ヒスイの歴史を聞き終えた後、そもそもなぜここに彼が来たのかアルは尋ねた。
すると、どうやらカイレン自身が公務をサボって逃げたために追いかけてきたのだとか。
なので、アルは光学迷彩魔法をかけていたカイレンの魔法を解いた。サボりだったので流石にその肩を持つつもりはないからね。
そのことにより、姿を隠していたカイレンの姿がそこに現れる。
「のじゃっ!?」
「カイレン様!!見つけましたよ!!」
魔法が解けたことに気がついたカイレンが逃げようとするよりも素早く、ヒスイがわきに抱えて確保した。
秘書の役目をしていた人が、その主をわきに抱えるのってどうなのだろうか。
「のじゃー!!ヒスイよ放すのじゃ!!せっかくあの書類の山から逃げて来たというのにのぅ!!」
「いけませんカイレン様!!今日中に残りの書類をすべて終わらさせていただきますよ!!・・・・っと、失礼いたしました神龍帝様。このわたくしめの主の愚行を負担させてしまい、ここで深くお詫び申し上げるとともに、今日この場で出会ったのも何かと縁と思いますので、神龍帝様の眷族として貴方様にもお仕えすることをここにお誓いいたします」
「別にそこまでの負担でもなかったけど・・・・主の愚行って手厳しいな」
「はい・・・ふがいないですが、このカイレン様は今日中にやっておくべき書類仕事を部下の一人に押し付けて逃げてましたからね。真面目にしていただければ有能なのですが・・・」
本当に仕えている身なのかと言いたくなる。さりげなく、「不真面目だったら有能ではなく無能」って言っているようにも聞こえるし。
眷族云々もまあ好きにすればいいという事にしておいたので、そのまま嫌じゃ嫌じゃと泣き叫ぶカイレンさんを抱えて、ヒスイはその場を去ったのであった。
というか、カイレンさん30代・・・・見た目が幼女なだけに、行動もそれ相応なのかよ。
「なんか嵐が過ぎ去った気がするなぁ・・・」
「水龍は水をつかさどるドラゴンですからね。嵐の様な雨風を引き起こせるでしょうし、間違った表現でないでしょうね」
「少なくとも、領主としてここに仕事をしているからにはたっぷりやることが多そうね」
とにもかくにも、ちょっと邪魔が入ったような気がしなくもないが、さっさとその場をアルたちは離れて、ジーポングル内の他の観光スポットへと向かうのであった。
新婚旅行の最中にあった面白ハプニングとして、後で日記にでも書いてみようかなとアルは思ったとか。
ジーポングルはここいらで出国かな。
次回は、幻想的な観光地が多くあるという『世界樹の国』です!!
なお、眷族云々としての話では、この後正式にヒスイはアルの眷族となったのだとか。
【おまけ話】
「そういえば、ヒスイってその最初の方の・・・スイレンとかいう人と結婚しなかったのか?」
「流石に娘のように育てた子と結婚するだけの勇気はないですね。見守り続け、守っていくだけの立場としていますので基本的にそういう色恋沙汰は置きませんよ。カイレン様も一応婚約は決定しています」
「・・・・ん?あの見た目で?」
「ええ、あの見た目です。何故か幼い容姿のままで成長が止まっておりまして、それだと求婚者も少ないかなと思っていたのですが、予想以上に多く来まして・・・・その方々の中から、カイレン様が気に入った方と結婚予定ですよ。もう少し交際をして、互いに知るそうですね」
・・・・この国、本当に大丈夫か?