216 まずは最初の旅行地ですよ
新婚旅行の最初の目的地へ!!
東方の島国『ジーポングル』
・ジューメンダス獣人国やルンデバラート国との国交もあり、国民性としては南の方にある島国アララン共和国に近い。
・日本の江戸時代、大正時代がごっちゃになったような文化であり、ちょんまげ頭の侍や、大正浪漫を感じさせるような服装、食文化も米が一般的である。
・貴族というモノの代わりに大名があるのだが、借金などが多く、実質的には商人の方が力が強いらしい。
・気候は温暖だが、島国ゆえの不便さもあるので他国からの客はあまり来ない。そのため、珍しい目で見られたりする可能性が無きにしも非ず。
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「・・・というのが、事前情報だったけど実際に来てみると確かにそういう感じがするな」
予めその土地の事を調べて得ていた情報を思い出しつつも、アルは実際に目の当たりにするジーポングルの様子に驚いていた。
日本風なのが多く、転生者が関わっていたと思わしき物もいろいろあるのだが、それでもなかなかおもしろそうなところである。
「アル、この和服どうかしら?」
「現地の服装に紛れてみたわ」
と、後ろにあった服屋から出てきたアリスとランは、今購入したばかりのこの国ならではなお服装をして、アルはその姿を見て微笑むのであった。
新婚旅行の最初の目的地として訪れたこのジーポングル。。
和服の人が多く、着物や袴、中には大胆にもふんどし一丁で籠を担いでいる籠屋という職業の人もいて、洋服のままだと極端に目立ちそうである。
そこで、現地の衣服を購入したのだが・・・・似合っているので物凄く抱きしめたい。
というか、アリスの方は似合うんだけど、ランの方はというと狐の獣人であるせいかなんか妖狐とかそう言うのを連想させるようで余計に似合っているのだが・・・・
とにもかくにも、せっかくの新婚旅行なので、めいいっぱい楽しむことにした。
ちなみに、ここには2泊3日の予定である
ジーポングルは前世の日本に似ているところが多いようで、現在は春なので桜が満開のシーズンのようであった。
「綺麗だなー」
「すごい咲き誇ってますねー」
「花びらがまるで雪のようでいい感じね・・・」
桜の一番きれいなところは何処かと、道行く人に尋ね、そのおすすめの場所に来てみたが・・・・・圧巻というか、すごいなこのピンク一色は。
川沿いに並んで生えていたり、公園で一本だけだがそれでも大きく存在感を醸し出しているものなど、中々見どころが多く、面白い。
「・・・あ、そう言えばこの国にも文通している相手がいましたわね」
と、ふと何かを思い出したかのようにアリスがつぶやいた。
「文通相手?」
「ええ、各国の国交のある国の王女同士でたまに文通したりするのですよ」
「アリスと文通していたけど、それ以外からもたまにあるのよね」
・・・・どうやらこの世界、国交のある国同士の王女、もしくは姫同士で文通をするのが流行りでもあるらしい。
そのため、同じような立場同士で文通するので互いの苦労をよくわかったり、恋のお悩みの相談などもしていたりするそうな。
「まあ、滅多に会えるわけでもないし、たまに国交記念の式典で顔を合わせる時ぐらいしかその機会がないのですよね」
「とは言ってもこの文通の輪は馬鹿にはならないわよ?どこかの国でやばいことをやらかしそうなのがわかったりして、国交断絶前に姫を引き取ったりしたりするのもあったらしいからね」
そうやって情報が入りやすい文通だからこそ、各国の国交がある国の姫同士での情報交換が盛んなのだとか。
過去には、この文通での情報のみで国そのものを率いた凄腕の姫もいたらしい。
「へー、すっごい壮大な話しにもなるのか・・・」
文通だけでそこまで行くのはすごいような気がする。
というか、姫とか王女同士でやる割には、その逆の皇子とか王太子同士のはないらしい。
理由としては不明であり、やってみても長続きしないからだとか。なんでだろうね?
「・・・そういえばアリス、その文通相手がいる国なら、せっかくだし顔出しておくかい?」
「うーん・・・やめておきましょう。今は新婚旅行ですし、夫婦水入らずの時間を楽しみたいですからね」
「そうそう、また今度機会があればでいいですわね」
そう言いながらくっ付いてきた二人に、アルはどきりとしつつも平常心を保つのであった。
なお、その様子を他から見ていた男性たちは血涙を流していたとかいなかったとか・・・・・
「宿屋も取ったほうがいいかな。寝台車を持ってきたからそこで寝る事もできるけど、せっかくだからここでも宿泊してみたいからね」
「ふふふ、今夜は寝かせませんよ」
「そのセリフ、アルのほうのだと・・・・まあ、こっちも言うけどね」
「何だろう、セリフを取られてちょっと悔しいような・・・・」
にこやかに言うアリスにランがツッコミを入れつつ、アルはその言いたかったようなセリフを取られたことにちょっとしょぼんとするのであった。
・・・まぁ、そのしょぼんとした分も加えて、真夜中は楽しみますけどね。
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SIDE???
「ほぅ?異国の者たちがかのぅ」
「はっ、目立っているようで、男一人に女二人、しかもその女たちがそりゃもうすごい美女で、うらやまゲフンゲフンゲフン、けしからんと思い、風紀的にもどうかと思いまして伝えに参りました。
・・・・アルたちが宿泊している宿屋がある土地の近くに建てられていた城内で、その城の主にその男性は報告していた。
内心うらやましいと思いつつも、その男の方から感じ取れた猛者の気配に気後れし、その行き場のない憤りを元にして、この際城の主へと報告しに来たのである。
「そう・・・まあ人の事だし別にいいと思うのじゃよ。嫉妬にかられて無意味な報告をしに来る気持ちはわかるしのぅ。いや、面白そうなとも思えるし、明日尋ねてみるかのぅ。せっかく異国から来た客がいるからのぅ」
そうつぶやくと、その城の主は報告しに来たものを下がらせ、自身の部屋に戻った。
「さてと、くだらぬ報告も聞いたが、今のうちにさっさと次の文通内容を書かねねばな。そのためにも、せっかく異国からの者たちからとも言うし、見に行ってみるのもいかもしれん」
そう考えると、その城の主はけらけらと笑うのであった……
「ジーポングル」
ジャパン、ジパング、日本を混ぜ合わせた結果なぜかできた国名。
日本出身転生者ならば一度は訪れたい故郷に似た不思議な国でもある。ただし、現代地球とは違う点として、モンスターとかもいるし、冒険者もいる。
・・・というか、転生者の手が絶対加わらないはずがない場所でもある。