212 結婚式
シンプルです。
派手にはいかず、きちんとね。
・・・春の穏やかなある日。
空は綺麗に青空で済み切っており、風も心地よいさわやかなもの。
小鳥が飛び交い、癒されるような歌をさえずり、木々の木漏れ日は優しい暖かさを感じさせる。
本日はいよいよアルの結婚式であり、アリスとランと一緒になることができる日でもあるのだ。
式場はゴーレムタウンにこの日のために特別建設された結婚式場であり、招待客たちはあらかじめ作成しておいた改良型転移板によって、この場に出席していた。
この世界に神龍帝としてアルが転生し、3年は経とうとしている。
生まれた当時にあった卵の殻をきちんと保管していたのだが、その殻を新たな門出の祝福のために再利用して、3つに分けた。
職人ゴーレムたちでも、細工にこだわる者たちが手塩に掛けて、もはや国宝級どころか伝説、星クラスでは測定不可能な芸術作品へと生まれ変わっていた。
そう、結婚指輪としてである。
指輪に施された細工は細かく、なおかつ付与された効果や、元々の材料が相乗して半永久的な耐久性を誇る。
指輪自体が永遠の美を現すようなものだともいえよう。
指輪をアルはアリスとランのそれぞれにはめる時、緊張する。
予めきちんとサイズは測定されており、ぴったりとはまる。
そして、彼女たちのウェディングドレスの姿を見て、つい見とれてしまう。
この結婚式に招待したのは、今まで世話になってきた人たちと、アリスたちの両親である。
人数としては控えめな部類かもしれないが・・・・・公認モンスターが何体かいる時点で相当なものの可能性があるなと思える。
「さて・・・・・3人とも一生をずっとともに支え合い、愛し合う覚悟はあるのかここで問おう」
式は進み、いよいよ誓いを立てるところで、今回の結婚式でそのことを問う役目を引き受けてくれたゼノがそう問いかけてきた。
アルは神龍帝・・・・モンスターであり、アリスやラン以上に長生きすると思われる。
そして、いつか来るかもしれない別れの日までずっといてくれるのかという問いかけをここで行われる。
「その覚悟はあります。そうでないと結婚できませんからね」
「ええ、同じく」
アリスとランがそうはっきりと宣言した。
「・・・・告白は先に二人ともにやられてしまったが、今日この日、改めてここに俺は告白する。アリス、ラン・・・・二人とも好きだ。この先何があろうとも幸せにするから・・・・結婚してくれ」
アルはここで、以前アリスたちから受けていた告白を改めて自分から行った。
シンプルであり、それでいて心を込めて彼女たちに告白するアル。
その姿を見たアリスとランは・・・・
「「はい、お願いします!!」」
そうにこやかに微笑むと、2人ともあるに飛びつき、交互に誓いの口づけをした。
リーン、ゴーンと鐘が鳴らされ、招待された者たちはこの今日この日に夫婦となった者たちへ向けて、祝福の拍手を送る。
皆が笑い合い、幸せを振りまくこの結婚式が行われたこの日。
それは転生した者が幸せをつかみ、そして永遠の愛が誓われた日でもあった・・・・・・・・
あっさりと行った感じがするけど、派手なのが書けなかっただけである。
とはいえ、人生で一番のイベントを行ったアルたち。
次回からはいよいよ新婚旅行を・・・・・の前に、少々小話を挟む予定。