208 3年目です
たまに大体どのぐらい年月が経っているのか間違えそうになる
・・・・年が明け、アルがこの世界に生まれて3年目となった。
季節は春へと向かい、牧場区画ではバッホーンのメスたちがそろそろ産気づきそうである。
バッホーンの子供が生まれて、子育てが終わったらまたボルドのところに集中しそうだが、今年はミャルゲスお手製の薬品の力によって、半分ほどオスにする予定だ。
そうすれば、ボルドはある程度の負担が無くなるだろう。
まあ、まだ一頭不安があるやついるけどね。たしかユニコーンの繁殖時期は春・・・・
気持ちを切り替えて、今日アルは・・・
「せっかくだし、増築をするか」
自宅の増築計画を練っていた。
アリス、ランと交際をしており、今のところアリスは城暮らし、ランは宿屋暮らしだけど、最終的には結婚するのでそうなれば必然的に一緒に住む場所が必要となる。
ゴーレムタウンの方に新たな家を作るのもいいけど、やっぱり一番最初に作ったこの家を離れるのは嫌だからね。
少々いじって。アリスとランと一緒により気軽にタウンと行き来ができるように魔道具を仕込み、なおかつ二人との居住スペースの増築及び拡張をしたいのである。
・・・・この世界に来てばかりの時は、特に誰かと住むなんてことを考えていなかったから、一人暮らし用のままであり、今の状態だとちょっと狭いからね。
とはいえ、増築のために予定部分の壁の撤去及び地面の整地が必要だ。
真横に畑があるし、その反対側の方へ家を伸ばせるのがいいだろう。
そこでまずは、畑の反対側に生い茂る木々の伐採である。
「こういう時は人化を解いた方が楽だな」
神龍帝の姿へと戻り、その体のサイズで扱える剣を取り出す。
某黒鉄のグレードアップしたやつが使用している剣みたいな形状だけど、切れ味抜群なのは間違いない。
ついでにゴーレムタウンの鍛冶区画にて、その作ったやつ全部鍛え直してもらったからね。もう豆腐のようにスパスパ楽に切れるのはなんか面白い。
切り過ぎ無いように注意しつつ、残る根っこの部分とかは・・・・
「ドラン、頼むぞ」
「グォォゥ!」
元迷宮ボスモンスターである地龍のドランに根っこ事地面を掘り返してもらい、そのあとはペタペタと歩き回ってもらって整地してもらう。
よく考えたらこいつもミャルゲスの様な居候みたいなやつなんだよな・・・・最近影が薄いような気もしなくないけど。
ただ、ふと気がついたけどなんかドランの姿変わってないか?
「なぁドラン、お前ちょっとごつくなってないか?」
「グォゥ?」
あまり姿を見る機会がなかったせいかもしれないけど、以前よりもなんか全体的にごつごつしているような外見になっていた。
足の爪とかが地面を掘るためかより鋭く伸びており、表皮の鱗もより深い茶色になって、硬さをうかがわせる。
気になったので「鑑定」をかけて見ようかな。
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「土龍帝」
・・・元は地龍だったが、神龍帝の眷族と化して影響を受け続けた結果、いつの間にか進化して土属性に特化されたドラゴンとなった。知能などは以前同様だが、能力は飛躍的に上昇しており、大地をつかさどるドラゴンとなって強大な力を得てしまった。「人化の術」は現段階では習得できていないが、長い年月をかければ習得することが可能になる。
その鱗は強固であり、質量もかなり重くなっている。
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・・・・・・進化してました。
しかも、神龍帝である俺の眷族というか、土属性の方でトップの奴に変貌である。
まさかの土龍帝とは・・・・これには驚きを隠せない。
そこで、とりあえずいったん増築用の作業を中断し、こういう事には詳しそうな人に話を聞くことに。
「なので、ザップリンさんに聞きたいんですが・・・」
「いやいやいやいや!?儂に言われてもなんだそりゃとかしか言えんのじゃ!!」
ギルドに訪れ、ザップリンさんに相談に乗ってもらおうかとしたけど・・・・これはこれで前例がないそうな。
「地龍にさらなる進化があるとは驚きじゃが・・・こういうことはあのリッチキングの方が詳しいはずじゃ」
「そこで、ミャルゲスさんに聞きに来ました」
「ふーん、まあザップリンさんなら知らなくても当然なのだよ」
研究区画で、なぜか爆発アフロ頭になっているミャルゲスのところへアルは訪れた。
「当然とは?」
「だって、そう言う事例ってあまり人には知られていないのだよ」
・・・・力の強いモンスターの下には、その同族か力に屈したモンスターが眷族としてなる例は普通にある。
そして、眷族となっている間にその力の強いモンスターの影響を受けて、自身に適した種族へと進化するのは当然のようにモンスターの常識としてあるのだとか。
「ただ、その進化した後に人に見つかってようやく存在が分かるようなものだから、そんな事例をまともに研究する人はほとんどいないのだよ」
「なるほど・・・・で、俺がドランの主人みたいなことになっていて、その影響で眷族となっていたドランが進化したという事でいいのかな?」
「まあ、そう言う事なのだよ。この我も一度眷族を持っていたことがあったのだけれども、今はもう音信不通の奴で、以前討伐してほしいとギルドから通達があった時があるのだよ」
なんか意外な話しだな。この研究馬鹿公認モンスターにも眷族とかがいたのか。
リッチキングはアンデッド系・・・・同族の可能性の方があるよね。
「ま、公認モンスターにする手続きはいらないのだよ。所詮眷族は眷族、その主を超える力までは身につかないようだし、飛躍的に能力が向上してもあと一歩ってところだからなのだよね」
ドランの公認モンスター手続きをしようかと思っていたけど、強さの条件とかで考えると微妙なところの様だ。
ただ、その公認モンスターの眷族と化したモンスターだというだけで、討伐しようとする人は出ないらしい。
「眷族の主が公認モンスターであるならば、討伐されりゃその主が怒る。それをわきまえぬほど愚かな人というのは極稀にしかおらぬのだよ」
「愚かな人って極稀にいるのか・・・」
「少なくとも100年に1度ぐらいは確実にいるのだよね。研究成果を一度滅茶苦茶にされて、激怒していろいろやった時があるのだよな・・・」
どこか遠い目をしてつぶやくミャルゲス。
何をやらかしたのかは・・・・聞かないほうが幸せなのかもしれない。
アンデッドだし、確実にえげつない方法をしているだろうな・・・・・・
まあ、別にドランは俺の家のすぐ近くに居を構えているので別に心配するようなこともないかな。
気持ちを切り替えて、我が家の増築工事を行うのであった・・・・・・・
・・・土龍帝へドランが進化。
他のドラゴンもそろそろ出るかな。結構遅いようなきもするけど・・・・・
ちなみに、ミャルゲスのアフロ状態の原因は育毛剤改良の実験だったようで、間違ってアフロを生やす薬がかかったらしい。
・・・・これはこれで悩める人に争いの火種を起こしそうな代物だな。