205 空に響くは彼の声
本日2話目!!
短いけど書きたくなった
「バッホーン用性転換薬」
オスならメスへ、メスならオスへと肉体そのものを変化させてしまうバッホーンにのみ効果がある薬品。
効果時間は永久的であり、計算上死んだときにようやく解除されるという。
一種の転換の呪いのようなものであるが・・・・
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「ボルドにとっては救世主となる薬だろ」
「バッホォォォォォォン!!」
ミャルゲスから聞いたアルがその軽い説明をすると、バッホーンのボルドは感涙にむせわびた。
物凄い号泣しており、来年度の秋の恐怖に備えて現在隔離して牧場区画の癒しの場にいたのだが、突如舞い込んできたこの救世主となる薬の話を理解して、もはやなんとも言えないほどうれしいようであった。
とはいえ、今はまだ使用するわけにはいかない。
バッホーンのメスたちは秋にボルドをからっからにさせたので現在妊娠中の様であり、使用できるのは子育てが終了する頃になる。
けれども、その時期にはこの薬品が使用できるので、ボルドはあの無間地獄のごとき秋の時期から脱出できるのだ。
「というか、これでボルドをメスにするって手段もあったか?」
「その方法はやめたほうが良いのだよ。あくまで言われたとおりの薬品・・・メスからオスへの方に特化しているので、少々その逆には向いておらぬのだよ」
完全な転換薬というわけではないと、ミャルゲスはいう。
まあ、ボルドだってさすがに男は捨てたくない。
けれども、その薬があるだけであの秋の地獄を逃れられるかと思うと・・・・ボルドは心から号泣していた。
「うわ、すっごい泣いているなぁ・・・」
「号泣バッホーン・・・・珍しいような気がするのだよ」
とにもかくにも、これでボルドは救われるかと思っていた時であった・・・・・
ふと俺はとあることに気がつく。
この薬品はあくまでバッホーン用であり、それ以外には効果がない。
けれども、この牧場区画にはボルドを好いているやつでも、過激かつ全く別の種族でもあり、春の時期に活発化する存在がいたことを。
そして、そのことを考えると・・・・・・・・うん、助かっていないのかな。
その事実を告げようかとは迷ったが、今のこの感涙にむせわびているボルドにくぎを刺したくないので、静かにその場を離れたのであった・・・・・・・・
「ヒヒーン!!」
「お?ユニコーンもそういえばいるのだよな。あの毛とかをちょっと薬品に使用できると思うのだよ」
「その言葉、今のボルドにいうなよ」
「ユニコーンの事な・・・・・・あ、そう言う事なのだよか」
アルがポンと肩を置いて言ったその注意にミャルゲスは一瞬首をかしげたが、すぐに理解した。
彼女はここに居候して日が短いが、ファーストからこの牧場区画のものたちの説明を受けている。
そして聞いているはずだ。
ボルドにそのユニコーンが好意を抱いており、秋にも迫っていた事実を。
そして、ミャルゲスはある程度のモンスターや動物の知識なら長年あつめているのでユニコーンに関しても当然の知識があるはずだ。
・・・・・その事実にミャルゲスさんも気がつき、ぽつりと「ユニコーンのデータは少ないので、まだどう作ればいいのかわかっていないのだよ」と言ったが、とりあえず気にするなと俺は答えた。
ああボルドよ、一難去ってまた一難という言葉を知っているか?
なんとなく、男としてボルドに物凄く同情したくなった冬の日であった・・・・・・・
バッホーンに関しての解決策だけならできた。
そう、バッホーン「だけ」の。
・・・・作者の作品の中で、一番女難なのはこのボルドではなかろうか?