197 明後日の方向を見て
あと数話ほどで200いくな。
SIDEアリス姫
「・・・・・う・・・ん」
アリス姫が目を覚まし、しばしぼうっとした後、何があったのかすぐに思い出してすぐに頭がはっきりとして周囲と自分の状況を見た。
風呂場で少々やりすぎたせいかのぼせたアルの身体を、ランと共に支えていたのだが、床が滑って気絶したのである。
そして、今の自分の状況を見るとバスタオルが賭けられた状態で、脱衣所に寝かされていた。
横にはラン王女も寝かされており、彼女も同様の状態・・・・ちょっと寝相が悪かったのかややはだけて見えている状態であった。
そして、そばには目隠しをしたアルがすでに着替えて浴衣を着て立っており、アリス姫たちが起きるまでとりあえず見守ってくれていたようである。
・・・・アリス姫としては、ここで襲ってほしいところでもあるような気がしたが、目隠しをしているところから配慮をしているのだとわかる。
気絶した女性に乱暴を働くほどアルは狼藉ものでもなく、理性を保っていたようだけど・・・アリス姫としては少し残念であった。
同様に、起きてきたラン王女も思ったようであり、2人とも顔を合わせてへにょっと残念な顔をした。
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SIDEアル
・・・・起きたようだな。
目隠しをしながらも、アルはアリス姫とラン王女が気絶から目を覚ましたことを、感覚的に感じ取っていた。
というか、早く着替えてください。平静を装っているけど内心やばいです。
一応モンスターですが、中身は健全な男子なので今の状況はかなりヤヴァイです。
あ、起きるまで一応何もないようにここで見守っていたけど、よく考えたら目覚めたならさっさと退散して部屋にいればいいじゃん。
目隠しをしたままくるっと俺は方向転換し、脱衣所から出ようとした。
が、ここでちょっとやらかした。
だいたいの感覚というか、そう言うのでモノの配置とか、出口とか人の居場所とかはまあわかる。
けれども、正確な距離感はつかめていないので・・・
がっ!!
「ッツ!?」
・・・・タンスのかーどに小指ぶつけた♪
いや、なんとなく某緑軍曹の歌詞を思い出したけど、タンスじゃなくて脱衣所の衣服を入れるロッカーだと思うけどその角に足の小指を思いっきりぶつけて鈍い音がした。
古今東西、万国共通、人の姿でいる時に限って痛い事象の一つである「小指を角にぶつける」。
アリス姫たちがいる手前、叫びはせず、その強烈な痛みのおかげでなんとなく悶々していたところで冷静さが戻って来たけど、激痛に耐えて歩く羽目になった・・・・。
部屋に戻ったら、回復魔法で痛みを直したけど・・・・・おおぅ、人化しているときに限ってなぜこんな地味な不幸が。
あれか、この状況(裸が見えてゲフンゲフン)に対する代償か。
女の子二人に混浴され、タオルがはだけてその裸体を見て、運ぶ際に不可抗力で触れたその代償というのがこれか。
小指を抑えつつ、アルはそう考えるのであった・・・・
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SIDEゴーレムタウン
「うわぁ・・・・アレは痛そうなのだよ」
タウンでは、そのアルの状況を「千里眼薬」で見続けていたミャルゲスが、思わず自分の足の小指を抑えてその痛みを幻視していた。
ミャルゲスでも、角に小指をぶつけたら痛いのはわかっている。
爪の間に針が刺さったり、ドアを閉める際に指を挟んだり、何かを食しているときに舌をかんだり、虫歯だったり・・・・
公認モンスターでも、日常生活でそういう地味な痛みというのは結構辛いものである。
というか、実力が極端に強すぎるがゆえに、そう言う地味な痛みには自身の力が追加されて、痛みを得てしまうようだ。
さながら、最強の矛と盾・・・・矛盾の、矛が盾を打ち破るという矛盾を崩すような物だろうか。
自分自身の力で、自分が傷つく・・・・要は、ブーメランのような原理が働いているともいえるのだ。間違っている気もするが。
「でも・・・これで意識をしあうかもしれないのだよ。夜の方もしっかりと見てみたほうが面白そうなのだよ!」
気を取り直して、再度見ようとした時、ミャルゲスはふと悪寒を感じた。
振り返ってみれば、そこには超・巨大なハンマーを構えたファーストが、その場に立っていた。
「・・・覗き見は厳禁デス。そのため、少々お仕置きしましょうかネ」
「それは流石に我でも死ねる奴なのだよ!?」
にっこりとファーストは「目以外は」微笑んだ顔で、死刑宣告にも等しい言葉を発した。
ミャルゲスは、ファーストが構えているハンマーを見て、流石に命の危機を感じたのであった。
・・・・数秒後、寸止めで済んだものの、ハンマーに付与されていた効果によって、ミャルゲスは丸焦げになったのであった。
「ふむ・・・付与は『雷落とし』デスカ。確か、マスターが言うにはどこかの世界の神話に出るような神が使うのをイメージして、ふざけて作ってみたと言ってましたっケ。『トールハンマー』という魔道具とかいう武器でしたっケ?」
黒焦げになったミャルゲスを見つつ、この程度でくたばることがないのはわかっているので、放置していくのであった・・・・・
「また・・・服の調達が必要なのだよ・・・・・・」
・・・部屋に戻って、どうなるだろうかね。
気まずさが漂うか、明るくなんとかやり過ごすか、それとも・・・・
ちなみに、ミャルゲスの衣服は自腹です。そろそろ衣装チェンジを考えていたところでこのお仕置きである。
なお、丸焦げになったのは外見だけであり、実質魔法を素早く使って防御されていたためノーダメージ。でも、精神的には少々こりました。少々・・・・・だけですが。