195 異界旅館到着
温泉旅館といえるのか少し怪しいような気もしますが、そこは気にしないでください。
・・・・異界旅館にようやくアルたちは到着し、馬車旅で凝った体を思いっきり伸ばした。
「あー、馬車の旅ってやっぱかなりこるな」
「いや、アルは途中から人化を解除して飛んでいたでしょ・・・」
「並走してみた私が言うのもなんだけど、馬車の必要性あったかしらね?」
なかったようなと言われると、少々複雑である。
いやね、王族が使う馬車という事あって居心地とかはいいよ?
でもやっぱり体を動かしたくなったというか、途中から上空の方に飛んでました。
ラン王女の方もじっとしているのが耐えられないのか、同様に並走したりしていたし・・・・王女って何だっけ。
この中じゃアリス姫が一番まともだなうん。
一応王族の護衛の役割を果たす棋士の方たちからしてみれば、こんな人たちで護衛が必要なのかと自問自答し始めた人もいたが。
道中特に盗賊とかには遭遇しなかったから別にいいかな。
とにもかくにも、ようやく異界旅館という温泉旅館に到着である。
外装はなんというか、日本風の旅館・・・・転生者とかがものすっごい関わっていそうな気がする。
内装も和風だし、畳とか障子とかふすまとか完備されている。
なんとなく、故郷・・・前世の日本に帰ったような気持にもなるからいいような気がするなぁ。
「でも、なんで同室?」
「いやですかアル?」
「別に嫌というわけじゃないけど・・・・」
・・・・なんでかアリス姫とラン王女と同室で泊まる羽目になったのですけど。
他の部屋は護衛の騎士たちが泊まるようで、今回貸し切りのようだけど・・・・いいのか?
モンスターゆえに、その危険性も考えられていそうなものだけど、普段から親しいから安全みたいな認識があるのだろうか。
まあそれはさておき、寝れば別に気にするようなことでもないので入浴へと向かう。
この異界旅館の温泉は効能が配置されている湯船によって違うようで、匂いとか色つや、お湯の温度もたのしめるようになっているそうな。
しかも、公認モンスターでも利用する者は結構いるようで、モンスターにとっても良い効能がある湯もあるらしい。
そんな都合のいい湯があるのかよとツッコミを入れたいけど、あるんだから仕方がない。
男湯と女湯でのれん分けされており、とりあえず脱衣所で衣服を脱ぎ腰にタオルを巻いていざ入浴!!
むわっと蒸気が漂い、あちこちに様々な色をした湯が張られている。
うん、思いっきり「毒の湯」って書いてあるのが混じっているのは大丈夫なのだろうか?そんなもん何故設置した。
それは放っておいて、とりあえず温泉を巡って見る。
肌がつやつやになる湯、髪の増毛効果があるといううたせ湯、甘い香りがする疲労回復の湯。
中にはアンデッドが昇天する効果のある湯なんていうのがあったけど、鑑定して見たら聖属性を濃密に帯びた湯のようである。そりゃ浄化されるわ。というか、そんなもんが本当になぜこの温泉にあるんだよ。
謎が多いけど、結構様々な効能がある湯が多くてこれはこれで楽しいかもしれん。
「やっぱ温泉と言えば露天風呂も外せないか」
露天風呂もあるようで、見てみれば外の景色が・・・綺麗だけど、お湯の色が金色である。
純粋なお湯の色のようで、効能は「癒し」だとか。
軽い擦り傷とか捻挫ならすぐに治るような回復効果があるようで、なんかRPGとかでよくあるような回復の泉の温泉版かとツッコミを入れたくなった。
でもほんのりとじわじわ回復されているかのような心地よさがあるな。何がどうなってこんな温泉になったのかはわからないけど、これは効くわー。鑑定して見たら初級回復薬ぐらいの効果は保証されているようだし、効能は本物だよ。
「・・・アルも入ってきたのですね」
「まあは入ってみたくは・・・・・ん?」
と、名前を呼ばれたのでつい返事したけど・・・・・今の声って。
いやな予感がしたので見て見ると・・・・・そこにはタオルで体を隠しているアリス姫とラン王女の姿が。
なんで男湯に、というか露天風呂ってもしかして繋がっているのか、いやいやそれ以前にこの状況っていろいろまずいような、俺モンスターだから大丈夫、でも人化しているから人の姿だしアウトと言えばアウト、ちょっとタオルで見えているけど二人とも結構良いスタイルだしいや何考えているの!!今それ考えるどころでは、いやでも・・・・・・
この間、わずか0.0001秒ほど。人生最高速度で思考が駆け巡った。
いや本当にまさかとは思ったんだけど・・・・・この旅館、もしや露天風呂は混浴ですか?
混浴・・・・アリス姫とラン王女が企んでいた「距離を縮める」作戦の一つであり、重要なイベントでもある。
予習済みであり、アルが露天風呂に入るタイミングを見計らっていた。
つまりまあ、なんというか罠にはめられたという事でして・・・・・・だから悲鳴とか上げていないんですよ。