193 お誘いって珍しい
ちょっとここで進展を
SIDEアル
「・・・え?温泉?」
『そうなのよ。アルも一緒にどうかと思って』
雪が降ってくる中、携帯でアリス姫から来たお誘いにアルは一瞬何を言われたのかはわからなかったのだが、すぐに思考が追い付いた。
なんでも、温泉旅行をアリス姫はラン王女と計画していたそうだけど、王族とか公認モンスターとか関係なく、友人として温泉へ一緒に遊びに行かないかなと誘われたのである。
馬車で2日ほどの距離であり、アルが飛んでいけばあっという間だが・・・・
「温泉か・・・・どこのだ?」
『「異界旅館」という物々しい感じの宿ですけど、今の季節では貴族とか王族とかが利用するところです」
どうも、最近できたばかりだが色々と物凄いサービスが満点らしく、あちこちの権力者とかも利用して、高い人気を誇る有名旅館のようである。
というか、異界旅館ってどこをどうしたらそういうネーミングになるんだろうか。転生者が関わっているとか?
とはいえ、この冬の時期に温泉というのはうれしいお誘いである。
特に断ることもないし、馬車に同乗しても良いみたいなので、馬車旅も楽しめそうだ。
ラン王女も一緒なので、3人での馬車の旅・・・・・うん、ちょっと護衛いるかなこれ?
アリス姫は普通のお姫様だからいいとして、ラン王女は冒険者登録をしているうえに高ランク冒険者でもあり相当な実力を持つし、公認モンスターである俺も一緒だと襲撃があったとしてもオーバーキルにする自信があるよ。
過剰戦力とはまさにこのことだろうか、とアルは思えたのであった。
なんにせよ、大体予定としては馬車の乗車時間を除いて、旅館での2泊3日ほどの旅・・・往復7日と考えればそう悪い物でもあるまい。
というか、異世界にある温泉とかってすっごい気になる。効能とかはどうなのだろうか・・・・・。
あと、一度その場所に行きさえすれば転移魔法でいつでも行けるようにはなるし、ファーストたちゴーレムタウンのゴーレムたちの慰安旅行とかにも利用できるだろう。
今タウンにいるミャルゲスはどうしようか・・・・いや、先日何かやらかしたらしく、ファーストが激怒していたな。
なんか人家の術とかが不安定だとか言って、怒るのにちょっとためらうような幼い姿になっていたけど、すぐに元の大人の姿になって反省の顔色見えなかったし・・・・あの人には無しでいいか。
とにもかくにも、友達と行く温泉旅行っていうのは楽しみである。
まあ、男湯と女湯で別れるだろうし、きちんと客室も別になるだろうけどね。
それでも温泉というのはこの時期に入りたいのだよ。
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SIDEアリス姫&ラン王女
・・・アルとの通話を終え、温泉へ一緒に行く約束を取り付けた後、アリス姫とラン王女は互に顔を合わせ、第1段階終了という事でぐっと互いに親指を立てた。
この温泉旅行、アルとの仲を深めるためにアリス姫とラン王女が考え出した物であり、5段階の過程で計画されているのだ。
まず、この「誘う」ということが第1段階である。
次に、馬車での旅が第2段階、温泉入浴が第4段階。
そして、第5段階でうまいこと行けば・・・・・・・・
「うまいこと行けば・・・そう、まだあくまでそこまで行けるとは決定していないですよね」
「ええ、そこまで行けるように今は互に協力し合いましょう」
がっしりと握手を互いにして、協力のために一歩を踏み出すのであった・・・・・・
その様子を見ていた国王と王妃は、娘とその友人でもライバルでもあるラン王女の計画がうまくいくように祈るのであった。
なお、国家的に公認モンスターとうまいこと縁を結べる可能性があるので、ジューメンダス獣人国の方でも連絡が来て同様にその計画がうまくいくようにと天へ祈るのであった。
・・・ある意味国家ぐるみの謀略になるのだろうか?
公認モンスターと友人関係(かなり親しい間柄)であるからこそできるようなお誘いであって、全くかかわりのない相手だったらさすがにやばいかもしれません。
因みに、この「異界旅館」はまあ名前の通りというか、他の掲載作品にも登場予定。全く異なる別の世界だろうと存在する都合の良い温泉旅館ですよ。