188 互いに損がないと思いたい
公平なのか、不公平なのか。
SIDEアル
・・・・ようやく解呪できたようだけど、ミャルゲスはそのあとゴーレムタウンの研究区画に居つくことになった。
公認モンスターの下の方に公認モンスターが付くような形となるのだが、まあ悪い待遇はしていない。
というか、こいつ見張っておかないと後々大変なことを引き起こしそうだと思ったのが理由なんだけどね。
禁止薬物を平気で製造するわ、研究したいリストとやらを見てみたら、成功すれば結構いいことが多いのに、失敗すればやばいことを引き起こすようなものは多いわ・・・・むしろ管理下にいないと絶対大変だろ。
そのため、一応このゴーレムタウンの研究区画に住んでもらうことを提案したんだよね。
ミャルゲスさんからは、既存にないような発想で物凄いものを作ってもらう代わりに、こちらからは研究費用やその材料などを提供することにしている。
三食昼寝付きというところが一番目を引いたらしいけど・・・そこが一番重要なのかこの人。
「まあ、過去にはこの条件以上の好待遇をするから働いてくれという国があったのだよ」
「だったら、そこで働いていればいいんじゃないか?」
「でも・・・面白みを感じないのは嫌なのだよ。我は孤高を愛し、そこから見つける様々な研究対象を求めし狂気のモンスター。一か所にとどまってとらわれるように思えるのが嫌なんだよ!!」
・・・・アルの作り上げたこのゴーレムタウンならば、そんなとらわれたというような想いが起きないらしい。
拘束というか、そう言うことを嫌うようで、そのため各地に様々な自身の研究施設をこっそり立てて、そこを転々として来たそうなのだ。
ついでに、「転移板(改良型)」を各研究施設についでに設置して、そこも行き来できるようにしてあげたらすごい喜びました。
ここまで世話役つもりはなかったけど、ほっとくと何をしでかすかマジでわからん。
研究リストとやらを見せてもらっていたけど・・・・「超増毛薬」「豊胸剤」「脱毛剤」「エリクサー」とかそういうモノを作る目的もあるようで、これらも下手したら争いを引き起こすよね。しかもその最後のほうのが得にシャレにならん。
まあ、「超増毛薬」というのもちょっと個人的に欲しいというのもあるけど。今はまだ若いからいいけど、将来的に禿げないとは限らないし・・・一応保険をかけときたかった。
ついでに、バッホーンの問題についての解決する方法も考えてもらうことにした。
「性転換薬」は製法が難しくてすぐにはできないそうだが、このタウンの研究区画にあるものを使いまくれば、より早く作ることができるらしい。
「想定では、来年の秋前までに一気にできるはずなのだよ」
「ぜひそれを最優先で!!」
ようやく、バッホーンの問題に希望の光がさした。
こいつを一応管理下に入れておくのは英断だっただろう・・・・いや待てよ?
そもそもこの人がバッホーンの群れに薬品をかけなければ、この手間がなくともオスが増えてボルドの負担がより早く軽減されたのでは・・・・・・。
「まあ、そんなことよりもこれからここで研究をさせてもらうことに感謝するのだよ神龍帝。・・・ついでに興味も沸いたし」
にやりと笑うミャルゲスを見て、アルは少し寒気を覚えた。
あ、これもしかして俺も研究対象に見られてないか?・・・・英断ではなく愚策だったかもしれないと後悔しました。
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SIDEミャルゲス
(これはこれで面白そうな場所なのだよ。こういうのを創り上げているその力にも興味は湧くのだよねぇ)
悪寒に震えた神龍帝を見て、ミャルゲスはそう思った。
自身も公認モンスターのリッチキングとはいえ、異なる公認モンスターに実は前々から興味を抱いていた。
なぜ、モンスターなのに人と変わらないような思考を持ち、桁外れの力を持つのだろうか。
その力はどこからきており、何が原因でそうなったのか。
・・・・ミャルゲス自身の生い立ちは、自分が一番よくわかっている。
けれども、他の公認モンスターについてはまだまだ不明なところが多いのだ。
そして今回、このゴーレムタウンとか言う、雲上に作られた都市に住むことができるようになり、研究設備も整っており、この公認モンスターの一体に接触する機会をミャルゲスは得ることができた。
自身の貯まっていた研究を消化できそうだし、神龍帝のアルの依頼の薬品を素早く製造することだってできる。
けれども、今こうして公認モンスターを調べる大チャンスをつかんでいるのではないだろうか。
・・・・神龍帝についての話は、ミャルゲスも耳にしたことがある。
割と新しくでてきた公認モンスターではあるのだが、その力の強大さは目の前にしてよく理解できる。
では、その力の源や、神龍帝自身の特性とかスキルとか、そう言った秘密とかも何がるのだろうか。
ミャルゲスの研究者魂は叫ぶ、「ここで機会を逃せば、もう公認モンスターについて調べる機会は絶望的になるぞ!!」と。
この研究区画には神龍帝の鱗やら、その他希少な素材もあるようなので、研究者にとってはものすごく冥利に尽きる。
アルに頼まれたことはきちんと受ける。
なぜならば、呪いを解呪する方法を伝えてくれただけではなく、このような素晴らしい場所へと招いてくれたのだから。
けれども、自身が抱く研究対象としての興味はまた別だ。
やや腹黒い笑みを浮かべながら、ミャルゲスはアル自身も研究対象として考えるのであった・・・・・。
・・・・研究区画に、公認モンスターリッチキングのミャルゲスが居ついた。
ボルドの負担軽減のための薬品づくりを依頼したが、なんとなく寒気を感じる。
そのことを、アルはその日の日記に書き綴るのであった・・・・・。
コレ、このタウンに居つかせて良かった選択なのだろうか?