表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
184/260

179 捕り物

ううむ、悲しいけど構想し切れなかった。

今度機会があればリベンジしよう。

SIDE窃盗団『神速の風』



・・・真夜中、最近取り付けられた魔道具(マジックアイテム)でもある街灯の明かりが薄暗い中、首都ランダナムの商業区画では店じまいがすでにされており、誰もそこを通ってはいなかった。


 他の区画では冒険者たちが起きていたりなどと、まだ明るく騒がしい者が居たが、夜間の商業区画だけは人っ子一人いない状態となるのである。


 24時間営業を試みた商人もいたそうだが、人が居なさ過ぎて儲けが出ないのを判断し、真夜中になるとどこの店も戸締りをしているのである。



 そんな中、人っ子一人いないはずの商業区画に十数人ほどの人影が現れ、集まっていた。


 彼らは窃盗団「神速の風」、この日に窃盗を働こうと決行し、散らばって隠れていた仲間たちが集まってきたのである。


 冒険者や飲み屋のおっちゃん、大道芸人などというのに偽装して、今日この日の決行を待っていたのだ。


「全員いるな?」

「ああ、いるぞ」

「きちんと衛兵とかも今の時間は別の区画を回っているのも確認しているぜぇ」


 それぞれ小声で確認しあい、来ている服装は特に目立つ様な格好でもなく、いざっていうときに冒険者として見られるような偽装として、適当に斧やナイフなどといった物を身に着け、中には窃盗したモノを運ぶために荷馬車を用意して、商人に偽装している人までいた。


 いや、偽装ではなく表の顔が商人であり、裏の顔が窃盗団の一員である者だった。



「それじゃあ野郎ども、仕事にかかるぞ」

「「「「ウィーっす」」」」


 小声で窃盗団のボスが号令をかけ、全員小声で返事をして戸締りしてある店へと静かに押し入った。



 戸締りは結構厳重にされているため、無理に侵入しようとすると大きな音が鳴って衛兵たちが駆けつけてしまう可能性がある。


 だが、ここは窃盗団の者たちは抜かりはない。


 唯一女や賭博に使わない金で、全員消音ができるような魔道具(マジックアイテム)を常備しており、こういう侵入の時は静かに忍び込める。


 中で売り上げを数えて明日の準備をしていた商人たちがいても、手早く薬で眠らせて、あっという間に奪っていった。



 慣れた手つきでもあり、ここまで鮮やかに行けるのは全員がこの窃盗を繰り返しているうちにいつの間にか得ていたスキルの数々のおかげであろう。



 


・・・・時間が経ち、計画していた以上にスムーズに仕事が進み、全員それぞれの金品を得ていた。


 そしていったん全員集まって、全部をまとめ、平等になるように再配分されていく。


 

 まとめて運び出すのもいいが、こうやって全員で均等に金品を持ち、逃走することによって万が一誰かが捕まったとしても、逃走先で集合した時にはある程度の金品は確保できるようにしているのだ。


 どれだけの価値があるのかを窃盗団のボスは「金品鑑定」という、「鑑定」のスキルの中でも価値のみを測るというスキルを所持しており、正確に配分できるのである。


「よし、全員にいきわたったな?ここからはバラバラになって逃走するぞ」

「「「「ウィーっす!!」」」」


 

 音もなく強奪していたとはいえ、この商店街の惨状を誰かが見ればすぐに衛兵たちが駆けつけてくるのは目に見えている。


 そして、バラバラになって逃げれば誰かが生き残る確率が高く、再び集まれば金品を再集結して換金し、それぞれの収入を得られるのだ。


 逃走しようと、窃盗団がそれぞれの一歩を踏み出した時であった。



ズドドドドドドド!!


「い!?」

「ふぁっ!?」

「もへっ!?」



 突如として、空からいきなり大量の何かが足元へと降り注ぐ。


「な、なんじゃこりゃぁ!?」

「う、動けねぇ!!」


 窃盗団の全員の足が何かに絡みついたかのように動けなくなり、逃走ができない。



「・・・ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ」



 と、何者かの笑い声が聞こえてきた。


「何者だ!?」


 その声の方向に皆が叫び、見て見るとそこには好々爺に見えそうだが、その雰囲気は有無を言わせないような老人がそこにいた。


「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ、どういう手口でこれまで窃盗を繰り返していたのか、よーく観察させてもらえたのじゃ。後々の参考の例として、ありがたく記録に取らせてもらったのぅ「神速の風」とかいう窃盗団の方々や」


 面白がっているような声であり、その窃盗団の団名を言い当てた謎の爺さん。


 窃盗団の誰もが感じ取る、この爺さんは只者ではないと。



 だが、逃げたくても足が何かに巻き付かれて動けず、一歩も踏み出せない。



「にしてものぅ、これほどまでにスムーズにできたのはおかしいとは思わんかったかのぅ、お主らは?」


 その老人の言葉に、窃盗団のボスははっと気がつく。


 今回のこの窃盗劇だが、計画で立てていた予想以上に楽だった。


 薬がよく効いて寝る人が多く、留守だった店舗も多い。


 しかし、ここまで簡単に事が運ぶ自体・・・・・あらかじめ巧妙に練られていた罠だとすればつじつまが合う。



 そして、この罠を張る理由としては、全員集めたうえで実行をしていたことの確認の為であろう。



 もし、捕まったとしても現行犯でない限りは言い逃れできそうな手段はあった。


 だが、こうして実行して、今まさに逃走しようとしたところで捕まえられるのであれば・・・もう言い逃れはできない。




「ふふん、動けない相手を捕まえるぐらいなららくね」

「こういうことに呼ばれるっているのもなんだろうな」

「まあまあいいじゃないっすか、怪我せずに済みそうっすからね」


 と、その老人の背後からさらに誰かが歩み寄ってきた。


 普通の冒険者っぽい男性二人に、どことなく美しさを感じさせるような獣人の女性一人。


・・・・その普通っぽい二人を除いては、明らかにこの女性と老人は只者ではないと感じ取ることができた。



「くっ!!こんなところで終わってたまるかよぉ!!」


 窃盗団のボスは懐に持っていた、万が一のために使用するための薬品を取り出し、一気に飲んだ。




「ふんがぁぁぁぁぁあっ!!」


 薬は直ぐに効き、一気に筋力が増大し、足元に絡まっていた何かを引きちぎることに成功した。


 その代わり、膨れ上がった筋肉のせいで衣服がはじけ飛び全裸となる。


「うわっ!なんでっすかいきなり!!」

「ふむ、『筋肉増加薬(マッスルポーション)』かのぅ。確か禁止薬品じゃな」

「筋力増加と引き換えに全裸になるやつだったかしら?・・・気持ち悪いわね」


 普通っぽい冒険者たちは驚くが、老人と女性の方は何をしたのかがわかっているようで、落ち着いていた。



「わかっているならさっさとどきやがれぇぇえ!!」


 副作用で興奮状態にある窃盗団のボスはそのまま駆け出し、進行方向にいた老人たちに向かって殴りかかる。


「ふぅ、馬鹿な奴じゃのぅ」

「力任せの戦闘は好みじゃないわ」


 窃盗団のボスが殴ってくるスピードは速かった。


 しかし、老人と女性が避ける速度よりは遅い。


「なにっ!?」

「年寄りには荒事はきついからのぅ、まあこの程度なら問題ないわい」


 そう言ったかと思おうと、老人は素早く何かを詠唱した。


「~~~~~『強化消去エンチャントデリート』」


 魔法が発動したその瞬間、一気に窃盗団のボスの身体は薬の服用前の状態へと戻る。


「なんだと!?」

「驚いてばかりじゃ失格よ」


どごぅぅ!!

「がっ・・・・・!?」


 驚いたその瞬間、女性がいつの間にか窃盗団のボスの目の間にいて、その急所を、さらけ出されたところに強烈な蹴りを入れた。


「「「「「ひっでぇぇぇぇぇ!!」」」」」



 余りのひどさにその場にいた男性陣は叫び、窃盗団のボスはそのまま吹っ飛んでバウンドし、泡を吹いて気絶した。


 濡れているのは漏らしたのか潰れて血みどろになっているせいか・・・・



・・・・こうしてこの日、窃盗団『神速の風』はあっけなく全員の捕縛がなされたのであった。


 ボスが倒れた後、案外あっさりと全員諦めておとなしくなったというのも大きいだろう。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

SIDEアルの家



「で、結局そのボスっぽい人は・・・」

「ええ、やり過ぎちゃったわね」


 その窃盗団捕縛の翌日、神龍帝ことアルの自宅の縁側でアルはラン王女から捕縛後の事を聞いていた。


 ついやっちゃったと照れるラン王女。


「いやそれひどいような・・・・さすがにどれだけの威力で蹴ったんだよ」

「岩が砕ける程度かしら?」

「なるほど砕ける程度・・・・いやそれやり過ぎだろ!!」


 それ流石にその窃盗団のボスに男として同情しちゃうよ!!でもそのせいで男辞めたらしいけど!!




 窃盗団の捕縛だが、今回は現行犯逮捕をテーマにして考えた。


 窃盗をしたという決定的瞬間まで待つという事だけど、成功したと思わせてからの一気に捕縛という転落を味合わせるのが今回の最も重要なところである。


 何せ、もうあとは逃げるだけだというところで捕まったらそりゃ絶望感はかなりあるはずだ。


・・・・本当は水戸○門みたいにしてみたかったけど、いまいち構想できなかったのが悔しいところである。


 カ○さん、○ケさんやーっておしまいって感じに・・・いや、何か違うやつが混じっているなこれ。


 とにもかくにも、今回の一件だけど楽に済ませるために出来るだけこういうことにすぐに依頼できそうな人たちに来てもらったんだよね。


 まずちょうどその時ギルドにいたゲバルトとラスランを引っ張ってきて依頼し、ついでにラン王女にも頼む。

・・・あとでラン王女になぜか買い物に付き合ってと言われたけど、装備とかの相談でもあるのかね。


 で、窃盗団確保のための小道具をタウンで生産しました。


 今回窃盗団の捕縛に使用したのは「水性トリモチ爆弾」!!


 強力な粘着性を誇り、ちょっとやそっとじゃとれないけれども水をかければあっという間に取れるという簡単な接着剤モドキである。


 窃盗団が忍び込むのはわかっていたため、商店街に店を構えていた商会の方々とファーストで話し合い、窃盗団を捕縛したらえられる賞金と、今後のゴーレムたちの方から得られる商品をいくつか互いに損はない価格で取引をするのを決めて、わざと当日窃盗されやすくしたのである。


 そんでもって、神龍帝でもある俺は今回わざわざ出ないで水性トリモチ爆弾を全員の足元めがけて撃ちまくるという脇役をやってみました。


 真夜中だから案外難しくて、2,3発は顔にあたっていたようで危うくその人たちが窒息死で死にかけましたよ。


 そんでもって、ここで楽に捕縛かと思われたけど窃盗団のボスが何か薬品を飲んでマッスルになってん逃げようとしたのは驚いたね。


 まあ、ボスだし何かしらの対策ぐらいはしているかと思っていたから予想通り。


 別に特に慌てることもなく、簡単に収まったのはいいことである。




「しかし、『筋肉増加薬(マッスルポーション)』って禁止薬品だったよね。なーんであんな窃盗団のボスが持っていたのやら」


 禁止薬品は当たり前だが取引が禁止されている薬品である。


 材料がものすごく希少なものがあれば、その効果が危険すぎてという理由で扱われない。


 でも、あんな窃盗団が持っていたということは、どこかそういう関係・・・禁止薬品が扱えるようなところとつながりがあるという証拠でもあるのだ。


 そう言うのは大抵ろくでもないような権力者というのはお約束だけど、その可能性は高いだろう。


 窃盗団がいままで捕まっていなかったのも、そのつながりがあったせいかもしれない。




 なので、厳しい取り調べが待ち受けているだろうなぁ。無くなったのでできない拷問の人がいるだろうけど。


 まあ、そう言うところはザップリンさんとかそう言うことに担当する人たちに任せましょう。


 そうむやみやたらと探る意味もないし、終わったことだしね。


「・・・でアル、いつ一緒に買い物いってくれるかしら?」


 そうにこりと微笑むラン王女を見て、アルはその窃盗団について考えるのを止めたのであった。



・・あ、これってもしかしてデートにならない?いやいや、まさかね。

次回、デート回かな?

一国の王女だけど冒険者やっているラン王女にだって、女の子らしいところはあるんですよ。

しかし、少し書いてみて気がつく。アリス姫の方からも同じようなことを言われそうだと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ