017 主人公以外の人視点4
まあ、わかる人はわかるか。
SIDEゲバルト&ラスラン
「『転移魔法』」
アルがゲバルトとラスラン、それに縛り上げているレバータカを周りに来させてそう唱えると・・・
「へ?」
「え?」
ゲバルトとラスランは目を丸くして驚いた。
先ほどまで彼らは湖の近くのひらけた場所にいた。
だが、今の魔法によって一瞬にして・・・
「ふぉっつ!?」
ザップリンさんが飲んでいたお茶を吹き出す。
そう、彼らがいるのはギルドの2階、執務室の中であったのだ。
「お、成功成功♪」
アルはなにやら成功して嬉しそうな声を上げたが、その場に気絶しているレバータカを除いては全員驚いたままであった・・・・・。
「なるほどのぅ・・・まさか魔道具とかではなくて、魔法で本当に転移の魔法を使用できるようになったとは・・・・お主どれだけ無茶苦茶なんじゃ」
「何となく『亜空間収納』のスキルとかがあるので、それをちょいちょい試してたらなんか行けたんだよね」
事情を話し、とりあえず執務室のソファーに4人は座った。
レバータカは、ザップリンが呼んだギルド職員たちの手で連行されており、この場にはアル、ザップリン、ゲバルトス、ラスランの4人だけである。
「で、それの一発目で使ったのが・・・あの馬鹿者問題児の輸送というわけか」
「まあ、その方法が一番楽だったもんで」
運ぶのがめんどくさいなら、そのまま目的の場所に転移しちゃえという発想で使用したそうだけど・・・・転移魔法ってのはほぼ幻に近い魔法である。
辛うじて魔道具で似たようなことができるものがあるのだが、それらは固定設置型のためにむやみにあちこちで使えるものではないのだ。
それをいとも簡単にやり遂げたアルに対し、その場にいた全員が驚くのも無理はなかった。
(この人・・・いや、モンスターと言えばいいのかわからないけどすごすぎるだろ・・・)
(一瞬過ぎて・・・よくわからなかったっすよ)
とりあえず、物凄い人というかモンスターであるということは認識できた。
「そういえば、あのレバータカとかいうやつどうなるんですかね」
ふと、アルが思い出したかのように尋ねた。
すると、先ほどまで好々爺の感じだったザップリンが急に真面目な顔になった。
「うむ、その件に関してだが・・・・むやみに公認モンスターを討伐しようとした違反、新人潰しの称号が付くほど迷惑をかけている点などから考えると・・・冒険者登録抹消&永久禁止処分が妥当じゃろうな」
「そういうもんで済むんかね」
「公認モンスターの事をよく理解していないバカ一号としていい例となるからな。そもそも、国をも滅ぼせるようなやつが公認モンスターになるんじゃ。機嫌を損ねて・・・なんて怖ろしいことになるのは避けたいからな」
結構、厳しい処分が下されるようであった。
「さてと、お主はもう帰るんじゃろう」
「ああ、これで用事は今のところないからな。何か依頼とかそういうのを受けたくなったりとか、そういう事があればここに来るよ」
といって、アルがその場から先ほどの転移魔法でその場から消えた・・・・。
「さて、お主たちもちょっとな」
「はい?」
・・・・その後、ゲバルト&ラスランも注意を受けた。
理由としては、公認モンスターの住処に無断で行ったことである。
厳重注意で済んだし、一応神龍帝は特に気にもしていなくて客人という程度にしか思っていなかったようで良かったのだが、下手したらレバータカ同様の処分が下されていた可能性に、二人は恐怖したのであった。
「まあ、一応彼も友人みたいに思ったようじゃが、これからはしっかりと考えてやるんじゃぞ」
「はい・・」
「わかったでやんす・・・」
とにもかくにも、これから一応友人として訪ねることができるようなので、時々遊びに行って機嫌でも取っておこうかと考える二人であった・・・・。
チートな性能を持っているのに、そこまで見せつけるとかではなくて自然に行っているんだよね・・・。
自覚ないチートでなくて自覚あるっていう点もね、なんというか・・・