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174 ・・・たまにはね

季節が冬へと移り替わる

 季節は冬へと移り変わり、ゴーレムタウンの牧場では現在バッホーンのボルドが療養中のために留守となっていた。


 ボルドの干からび具合と、その生命力がほぼ虫の息だったからね・・・・ちょっと療養のために特別な雲を魔法で作成して療養地としたよ。春までに元の健康状態に戻る見通しだが、どれだけ頑張ったのだろうか。


・・・・春になってバッホーンの出産シーズンがちょっと怖い。子だくさんもいいけど、それ全部がメスだったということはないよね?オスが多く生まれるよね?



 なんとなくフラグを立てたような気がしつつも、アルは今日、自宅で畑の手入れをしていた。



 ゴーレムタウンの方でゴーレムたちが農業区画でたくさんの作物を育て、出店している店にて販売をしているのだが、それでもやはり、最初に作ったこの畑にはどことなく愛着があるのだ。



 季節が冬なので特に育てるような物もない。


 それでも、また春には作物を育てられるように土の手入れをしているのだ。


 生えてきていた雑草を引き抜き、発酵させて肥料へと変える。


 硬くなりそうな地面も、適度に耕して柔らかくする。



・・・ここにミミズとかがいたらいいのだろうけど、この世界のミミズってちょっとトラウマレベルのがいるんだよね。



 いや、この間森を見回っていたら超・巨大な奴がいて・・・・・アレは気持ち悪かった。


 調べてみたら全くの別物だったけど、それでも気持ち悪かった。


 なので、ややトラウマになっているのだ。



 

 まあ、そのことは置いておこう。



 

 この冬の間は、家にこもりがちになることが多い。


 寒いのは嫌だし、雪が降ってないと出る気力がね。



 冒険者たちは冬支度を秋のうちにして、越せるようにはしているらしいが、それでもダメな人は冬の間でも必死になって依頼を受けて日銭を稼いでいる人がいるようである。



 そういえばゲバルトとラスランという、友達でもある冒険者の二人がいたのだが、あいつらはこの間久しぶりに会った時に話をすると、なんでも来年の夏までにはそれぞれ結婚予定だとか。


・・・彼女ができているのってなんか意外だと思える。


 結婚式は行うのかと聞いてみたんだけど、身内だけのささやかなものにするらしい。


 俺からの依頼を受けて、稼ぐことは稼いでいたのだが、その資金はきちんと貯蓄し、自分たちの子供のために使用するらしい。


 心は綺麗だと思うよ・・・・その嫁さんに尻に敷かれなきゃいいけど。


 


 嫁と言えば、ゼノの方は2人の奥さんがいるんだっけ。


 まだあったことがないけど、いつかはあいさつしに行くのも悪くないかもな。どんな家なのかちょっと気になるし。




 と、考えている時であった。


ブゥー、ブゥー、ブゥー


「お、着信きたか」


 懐にあった携帯が震え、誰かから連絡があるようだ。



「えっと・・・ザップリンさんか」


 見ると、ザップリンさんからの連絡の様であった。


「もしもーし、こちら神龍帝のアルだ」

『おお、出てくれたのか』


 そりゃきちんと出ますよ。


 ザップリンさんは何かと相談に乗ってくれるし、優しいからね。


 好々爺な見た目だけに、なんか前世の死んだ祖父とか思い出すな・・・・



「っと、何の連絡だ?」


 回想にふけりかけたけど、よくよく考えるとザップリンさんから連絡してくるのはちょっと珍しい。


 いつもはこっちから連絡をしているのが多いし、こうやって連絡を逆にしてくるって言うことは何かあったのだろうか?


『それはな、ちょっとしたことなのじゃが一応知らせておこうかと思ってな』

「何かあったのですか?」

『うむ、実はな・・・・』


 ザップリンさんのその微妙な声に、ちょっと気になったのでその理由を聞いてみた。


 なんでも・・・・



『・・・アル、以前にほれ、えっと、なんていうんじゃったかな・・・お主が滅ぼしたという国があったじゃろう?』

「エーゼット王国でしたっけ」


 今物凄く思い出すのに苦労したなザップリンさん。


 それはそうとして、なんで今その国の事を?


「その国が滅んだあとの領土争いに関してですかね」

『いや、その件に関してはすでに各国話し合いをして取り決めて問題はないのじゃ』


 もう決まっている事の様で、現在各国で最終的にどのようにしていくかでの調整がされているようである。


 そのことは良いとして、今回ザップリンさんが連絡して来たのはそのことではない。


『エーゼット王国の滅亡後結構経っているのじゃが、その国の王族と「予言者」の親戚と名乗る輩が出てきてな、今すぐにでも新生エーゼット王国としてその領土を返せと怒鳴っているようなんじゃよ』

「え?それ変ですよ。確か国内丸ごと滅亡したはずじゃぁ・・・」


 エーゼット王国はあの時完全に滅亡させたと思っていたけど、その生き残りがいたのか。


『それがのぅ、国外に出ていた一部の者たちだと言って、それでいて面倒くさいようなことになっておるのじゃよ』


 いくら腐れ切っていた王国とはいえ、国は国。


 王族が生きていて、再び国を興すということはそう珍しくはないそうだ。


 なので、今回のそいつらの言い分としても、滅びたのではなく生まれかわって新たな国として認めろと主張しているのだろう。



『もう終わったことじゃと言っておるのじゃが、それでも諦めずにめんどくさくなるほど食いつてきておって・・・』


 携帯越しだけど、なんとなく苦労している様子がうかがえる。


「・・って、そう言うのって国の方での話になるんですよね?なんでギルドの方・・・国とは関係のない機関のザップリンさんが苦労しているんですか?」


 ふとそこで疑問が出た。


 こういう国の話は国がやりそうなものだが・・・ギルドは基本的に国から独立しているし、関係なさそうである。


『それがの、どちらかと言えばこの件は冒険者との争いでもあるのじゃよ』



 ・・・エーゼット王国が滅びた後、領地が決まるまではその場所は無法地帯となる。


 エーゼット王国はギルドを嫌っていて、全く冒険者たちが寄り付かなかった場所だけに、今この時は好きなだけ立ち入ることができるのである。


 とはいっても、天変地異のようなことを越したので地形は相当ごっちゃになっているはずだが、その状態でもめずらしいモンスターや薬草などがあるので冒険者たちは向かう。



 そこに、その王族と「予言者」の生き残りとやらが出てきて、前面衝突ごとになったそうだ。



『どうにかならんかのぅ』

「・・・・そうですね、いっつもザップリンさんには相談に乗ってもらっていますし、何とかしたいですが・・・」


 何か報酬を請求するのが普通かもしれないが、ザップリンさんにはずっとお世話になっている。


 なので、出来るだけその件に関して協力はしたいけど・・・・エーゼット王国の生き残りか。


 調べたら本当にろくなのが居なさ過ぎて、逆にここまでひどいのかと感心しちまったよ。




 まあ、ザップリンさんが心底疲れているようだし、モンスターとかではなく友人として手助けしますか。

公認モンスターとしては軽く見られそうだけど、今回はあくまで友人として協力するという事である。

いっつも相談ごとに乗ってくれているザップリンさんの為にも、アルは行動を開始する。

それにしても、救いようのない国は滅亡しても面倒ごとを残す。こういった遺恨を処理し切れていなかったのが甘かったんだろうな。

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