172 たまには悩む
ちょっと考えよう
翌日、アルは今日の予定も特になく、縁側の方でしばし座禅を組んで考え事をしていた。
・・・ファーストの話でちょっと意識し、これから先どうしていくのかをじっくりと構想することにしたのである。
今まではただ気ままに過ごしてきたのだが・・・・・
「・・・身を固める、要は家庭を築くことか」
結婚話とかは考えたことがなかった。
そもそも前世は高校生だし、精神年齢で言えばもう大人のような物である。
けれども、そう言ったことを考えたことがなかったのであった。
自由に気ままに生き、好きに過ごしてきたが・・・・寄り添ってくれる相手を探そうと思ったことがない。
まあ、そもそもそこまで寂しいと思ったことがないけどな。
この世界に生まれたからは、アリス姫とかそう言った人たちに出会えて話したりできるし、そもそも人ではない者たちとも知り合いになっているからね。
とはいえ、意識をいったんするとなんとなく悩んでしまう。
自分は転生して、今はこうして「神龍帝」というモンスターになっている。
人化して人の姿になるのだが、元はドラゴン。人の寿命以上は生きるだろうし、そもそも寿命自体どれだけあるのかもよくわかっていない。
身近なドラゴンとしては、地龍のドランがいるのだが、そんな寿命なんて知ることもない。
・・・なお、最近ドランはゴーレムタウンの栽培区画と、このアルの家の横の畑を行き来しているのだが、めっちゃ生き生きして働きにやりがいを持っているようである。
心なしか、ちょっと外観が変化しているようだが・・・・今度鑑定して見ようかな。なんか違う存在になっている可能性が否定できない。
話は戻し、考えを巡らせる。
モンスターの寿命についてだが、今はまだどれだけ生きるのかもよくわかっていない。
というか基準もよくわからないのだ。
何せ、討伐される、共食いされる、捕食される・・・・弱肉強食がはっきりしていて、寿命の限界なんて調べる人がいないのだから。
知り合いの公認モンスターは・・・
ガッバーナはデュラハンであり、とっくの昔に死んだ存在でもあるアンデッドゆえに寿命というのがあるのか不明。というか、アンデッドにとっての死は確か浄化されることだからな・・・浄化されて昇天してそれでやっと死んだと言えるらしい。死んだ存在なのに死んだと言えていないのはこれいかに。
ゼノは吸血鬼であり、ほぼ不老不死ゆえにものすごく長い悠久の時を生きている。
・・・・あれ?考えたら寿命がないやつしかいなくないか?
というか、知り合いの年齢ってよく知らないな。聞くのも怖いし、年齢だけならはるかに俺以上だろ。
答えが出ないようなその考えを、アルは一旦切り替えて止めることにした。
またいつか考える時にでも思い出し、その時こそ答えを見つけたらいいのかもしれない。
今はこの平和な日常を過ごしていくことだけを考えよう。
「その前に、冬支度がそろそろ迫ってきているかな」
季節は秋から冬へと移り変わり、木々の枯葉が舞い散って冬の訪れを予感させる。
・・・そういえば、空にあるゴーレムタウンの地面って雲で構成してたよな。いろいろやってみたら雨とか雪とか降らせることができるのでは?
そして、豪雪にしてかまくらとか巨大雪だるまとか作れるのではないだろうか。
ちょっとそこが気になり、そのことに関して調べてみようと思うのであった。
決して遊び心からではなく、ただ気になった探求心からきているのだよ。いやめっちゃ遊んでみたいけどさ。雪まつりのようなこともしてみたいじゃん。
ちょっと意識をし始めてきているけど、アル自身が恋心とかはっきり自覚するのはもう少し後の予定。
アリス姫やラン王女からすれば超もどかしいかもしれない。
忘れ去られていたあの組織もそろそろ活動再開する予定。