170 エルフの村のあれやこれ
予定とちょっと違う形になったような・・・・
SIDEアル
サインド村長と話はしたけど、結構まともそうな人である。
とはいっても・・・・なんとなくだけどやっぱり探っている感じも取れるし、なかなかいい身で腹黒そうな人物であるとも受け取れるなこれ。
「~~~、と言うわけで興味本位で来たのですが、それを承知したうえで村を見せてくれることには感謝いたします」
「ええ、こちらとしても公認モンスターと交流できる機会を持ててうれしく思えます。何せ森の奥地にある村ですので、閉鎖的なところがあるのでそこに新鮮な風尾浮かせることができるのは良いですからね」
互いににこやかに話してはいるけど、やっぱり油断できないような人にも思えるな。
「公認モンスター」のところを強調したようにも取れるし、今こうして交流することによって、俺との関わりがあったという既成事実をここに示したいのだろう。
そうすれば、もし外部からの侵入者があったときに、其の情報を流せば迂闊に攻められることもないだろう。
ただ、それでいて他の場所に対して強気に出る気もない様だ。
まあ自衛のためなら別に良いとして、よからぬ私欲で名前を使われるのは良い気がしないからね。そこのところはわかっているようにも思える。
まあ、今日のところは・・・日帰りかな?
「・・・ところでおひとつお聞きしたいところがあるのですが」
「ん?」
一息ついたところで、サインド村長が何やら質問してきた。
「神龍帝のアル殿・・・あなたから力を感じ取ることができるのですが、その力が妙にあるモノと似ているんですよね」
「あるモノ・・・ですか」
「はい、その似ているのが・・・・この森から感じ取れる空気のような物です。今我々が暮らしているこの森ですが、以前は砂漠でした。ですが今はこのような森ができていますがここまで一気に森ができたという話は聞いたことがありません。・・・・もしかしたら、何かご存じなのでは?」
・・・・へぇ、勘が鋭いな。
思わず、その言葉にアルは口端を上げた。
「ああ、ご存じどころか・・・・原因は俺だ」
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SIDEサインド=ガムドルート
「ああ、ご存じどころか・・・・原因は俺だ」
・・・・その言葉を聞き、やはりこの方が原因かとサインドは思った。
この森に住み着いてからわかってきたのだが、どことなくとある魔力の影響を受けて作り上げられたかのような、人為的な物を私たちは感じていた。
そして今日、目の前にいる相手・・・・公認モンスター「神龍帝」のアル殿の話を聞いているうちに、ふとその体から感じ取れる力が、この森が受けた影響の原因のように感じ取れたのだ。
もしかしたら勘違いかもしれないが・・・・そう思い、尋ねてみたら予想通りだった。
・・・砂漠だったこの地を、森へ戻した大きな原因は目の前にいる方が原因であると。
説明を聞くと、自身の力を以前試してみようかと思った際に、この地でその力の一部を試して、森を再生させてしまっていたのだとか。
ここまで聞くと、驚きを隠せなかった。
砂漠の地から森の再生・・・その意味をこの方は理解しているのだろうか。
木々を切り倒したり、燃やしたりするような「破壊」と言ってくくれるような行為は容易い事である。
だが、森の「再生」となると「破壊」以上に難しい行為であるのだ。
成長の促進とかなら、魔法や魔道具などでまだどうにでもなる。
しかし、ここまで大規模な森の「再生」となると、かなり難しいのだ。
それを、話によるとたった一息のブレスによって簡単に行ってしまっていることから・・・相当な実力を、目の前にいるモンスターは持っていることになる。
今さらながら言おう、「やっべ、敵対せずにこうやって和やかに会話できるような状況になって良かった」と。
公認モンスターの力のすさまじさを、改めて感じたような気がしたのであった。
そのあと、段々あたりが暗くなり黄昏時となった。
アル殿は「今日は楽しかった」と言って、また遊びに来ることを約束なされた。
・・・・・うん、これで間違っていないよな私の判断。彼をここに招待し、良い感じに話せた上に交流できたこの状況ってベストだよね?
その夜、外部からの者を招き入れたことに対しての会議が我が家で行われた。
「公認モンスターだからって入れて良いわけあるか!!」などと言う、アル殿が帰った後に文句をさんざん言うような、「誇り」を「驕りや傲慢」と間違えたようなやつらが文句を言ってきたが、この森の再生についての話をして、その力の強大さを語ると・・・・・あっという間に黙り込んだ。
これで愚かな行為を仕掛けようとするやつはいなくなるだろう。
「しかし・・・・また彼がここに来るとしても、何かの拍子に村が焼き払われるとかそう言った恐ろしいことにはならないだろうか」
それでも不安を口にする者はいる。
けれども、その不安は杞憂であろう。
・・・互いに話して、神龍帝のアル殿はそのようなことはしないだろうと確信が持てているのである。
彼は、彼自身の大切なものに手を出さない限りは誰とでも気軽に接するのだろう。
しかし、その大切な物に手を出せば、破滅を迎えさせるのだろう。
その例の最たるは、つい最近滅びたという愚かな国だ。
その滅びた原因と言うのは、「神龍帝の怒りを買った」という話があるようで、その国から戻ってくることができた同族の話もその通りだった。
「つまり、われわれが敵対行動などをとらぬ限りは、彼はこの地を滅ぼさない。それだけははっきりできるだろう」
そして、この場にはその言葉に反論を述べる者はいなかった。
皆、その事実をしっかりと受け止め、理解したのだ。
とはいえ、それでも少しの不安は残る。
その不安もなくすために、サインドは次回にアルが来た時に備えて、何かより交流を深める方法がないかと画策をし始めるのであった・・・・・。
そういえば、エルフの話で忘れていたけどバッホーンどうしよう。
ギルドの方で情報集まるか、それとも自然に巡り合えるのが先か・・・・
そろそろアルの周囲の関係に変化をつけてみようかね。