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166 自宅の縁側で

ちょっとしんみり

「・・・なるほど、そう言うことをしているのですか」

「ギルドのあの依頼って、やっぱりアルが出したところだったのね」


 今日はアルの家にいて、アリス姫とラン王女が遊びに来ていた。


 こうやって遊びに来てくれるついでに世間話とか最近あったことを話し、談笑しあうのだが、アルから出たその話を聞いて二人は苦笑していた。



「男としても、なんか気の毒だからな・・・どうにかしてやりたいとは思うのだけど、これがうまくいかなくてな」

「冒険者の大半がその依頼を見て受けていたけれども、基本的にバッホーンを欲しがるということはメスの方を狙うモノだと思って、オスの頭数減らしてしまう人がいたりするわよそれ」

「あ、やっぱり」



 冒険者業をしているラン王女からの情報曰く、バッホーンの捕獲の事についてより詳細に書かねば、さらにバッホーンのオスの捕獲が難しくなるようであった。


 どおりでオスの方がなかなか見つからないわけで、さらに入手困難になってきているわけだ・・・やっちまったな。



 とりあえず、携帯でファーストに伝え、すぐに変更要請をしておくように言っておく。



「これで良しと」


 携帯をしまった後、アリス姫とラン王女がそれぞれ思ったことを口に出した。

「本当にアルっていろいろすごいのですけれど、抜けているところもあるんですね」

「戦闘とかは私よりも上だけど、なんか安心できるわね」


 ・・・何気に二人のその一言が痛いな。何も言い返せねぇ。



「ボルドの場合はユニコーンのプラチナにも襲われて(性的に)いるからなぁ。種が違えど、モンスターは子をなせるようだし、そこを考えるとさらに悩むよ」

「・・・・ん?種が違ってもモンスターって子供がなせるのですか?」


 と、アルのその言葉にアリス姫が食いついた。ラン王女も興味を示したかのようにアルの方を見る。



「ああ、調べてみたところ案外そうらしいだよね。モンスター同士で種族が違えば、両親のどちらかの種族、ハーフの種族、全く別の新しい種族の3通りがあるようだよ」

「それって獣人や人間が相手だとどうなるの?」

「・・・さぁ?」


 そこまでは調べてはいない。


 あくまでモンスター同士の例を調べただけであって、モンスターと人との間に子供ができた倍はどうなるかまではまだよくわかっていないことが多いのだ。


「一応、ゼノ・・・つまり公認モンスターである知り合いに聞いてみたところ、そいつの生まれた子は・・・相手の種族と全く同じだったと言っていたな」

「え!?」

「それって人との間で!?」

「そうらしい」


 ゼノの場合、奥さんが二人いるようで、確か・・・・


「人間と獣人だった(・・・)らしいよ」

「『だった』?過去形のようですが・・・」

「同じ種族になってしまったとか言っていたな」



 ・・・いや、ならせたというかなってくれたと言った方が正しいらしい。


 ゼノの種族は吸血鬼(ヴァンパイア)。よく本とか漫画でも聞くように・・・・不老不死の種族だ。


 それはつまり、ゼノと同じ種族、もしくは長命か不老不死でなければ・・・・・・年月が経てば別れが来てしまうことになる。



 親しい人たちが死に絶えていき、結局は一人になってしまう。



・・・・それが嫌で、そのゼノの奥さんたちはゼノと同じ吸血鬼(ヴァンパイア)になったそうである。外見はほとんど変わらず、けれども同じ種族、同じ時を生きる存在に生まれ変わったとも言うのか。


 

「ゼノを一人にしたくなくて、ずっと一緒にいることを誓い合って、そこでやっと同じ時間を過ごせるだけの者になった・・・・と、話していたんだよな」

「ずっと一緒に居たいからですか・・・」

「・・・・気持ちとしては、わかるわね」


 なんとなく、しんみりとした雰囲気となってしまった。



・・・神龍帝であるアルも、その寿命はどうなのかは自身でさえわからない。


 さすがに不老不死ではないだろう。一応成長もしているし、けがとかもしたりはする。


 けれども、モンスターであるという時点で人とは違う。


 長い時を過ごすのかもしれないし、そうなれば・・・・今いる人たちも去っていくことになるのだ。


 そう考えると、少しアルは寂しいように思えた。



 今隣の方にいるアリス姫やラン王女だって、人間と獣人。寿命はしっかりとあって、いつかは必ずそばからいなくなってしまう。



「・・・・寂しく思えるよな」


 そう思わず、アルはつぶやいた。



「・・・大丈夫ですよ。私たちはこうして、今この時アルといますからね」

「ええ、いつか別れがあるとしても、この時間は無くなるわけではない。大切な時となるはずよ」


 アルのそのさみし気な気持ちを察した二人は、とっさにアルの手を握る。


 右にアリス姫、左にラン王女・・・・・それぞれ優しく包み込むように。



「・・・・そうだな。こうして今一緒にいる時間も一生心に残るようなものだしね」


 その手の暖かさになんとなくアルは照れる。


 一緒にいる友人は、記憶から消えるわけではないのだから・・・・



「・・・でも友人からもう少し上に行きたいですね」

「そこのところはまだまだ頑張らないと・・・」


「ん?何かつぶやいた?」

「「いえいえ何も!!」」


 そのつぶやきはアルには聞こえなかったが、アリス姫とラン王女はその「友人」の枠からなんとか抜け出したいと、アルの鈍感さに苦戦しつつ、努力を重ねていこうと改めて心に誓う。


 いつか来るかもしれない別れ。それでも、必ずその時まで、いや、それ以上先でも寄り添っていける存在になりたいと思いながら・・・・・・・



さてと、森の方に再び向かってみましょうか

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