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159 哀れボルド永遠に

なんかこのサブタイトルだけで映画のタイトルみたいになったような気がする。

エーゼット王国の話が重かったから、きちんと調子を取り戻して明るく書いていかないとね。

・・・・季節は秋となり、ゴーレムタウンのとある一頭にとっては恐れていた季節となった。



「ブモァァァァァァッ!!」

「バッホォォォォォ!!」

「バッブッホォォォォン!!」



「・・・すごい気性が荒くなっているな」

「この時期があの群れの繁殖期ですからネ」


 雲の上にあるゴーレムタウン牧場区画にて、現在隔離されている群れがあった。



 この秋になって繁殖の時期を迎えるバッホーンの群れである。



 リーダーは唯一のオスであるボルドなのだが、彼は現在全速力で、まるで恐怖から必死に逃げているような状態となっていた。


 その背後にいるのは、総勢20頭ほどのバッホーンのメスたちである。ついでにユニコーンのプラチナが混じっているのはなぜだろうか。



・・・・バッホーンは本来、メスがオスを囲う逆ハーレムの状態となるらしい。


 メスの方が数が少なく、普通はメスをめぐっての争いになりそうなものだが、なぜかメスがオスを囲うために戦うのだ。


 そして、このタウンのバッホーンたちはボルドを除く全員がメスであるため、彼をめぐるメスの争いが激しくなった。


 普段はおとなしいバッホーンだが、繁殖期の時のこの気性の激しさゆえに、こうやって牧場を作製するのが難しいらしい。


 一応、この牧場区画の柵などは飛び越えられないように設計されており、強度も完璧だ。



・・・それでもこの光景を見ると不安になるなぁ。


「争いに争いを重ね、バッホーンのメスたちは悟ったようデス。『ここはひとつ、全員で仲良く』ト」

「その結論が出たから、ボルドが追い回されているのか・・・」

「バッホォォォォォォォン!!」


 涙を流すように、必死の形相で逃亡するボルド。


 その後方をメスたちがさらに恐ろしい気迫で追いかけていく。



「そういえば、ユニコーンのプラチナが参加しているけど・・・ユニコーンの繁殖時期も重なっていたっけ?」

「いえ、ユニコーンの繁殖時期は本来春デス。ですが、プラチナはボルドの事が好きゆえに、他のメスに奪われないようにとあのように混じっているようデス」


 種族を超えた愛ゆえに、ああやって追いかけ続けるのか・・・・。



 言葉だけなら聞こえはいいけど、あの雰囲気だと恐ろしいことになるんだけど。


「バッホーンの子供はほとんどがオスで生まれマス。ですので数年ほどボルドが我慢できれば何とか負担は減るかと・・・」

「案外探すのが難しいからなぁ・・・」


 他のバッホーンのオスが見つかればいいけど、世の中ってうまくはいかない。


 神龍帝である俺の気配に気がついて、自ら逃げたりするようだし、無理やり攫うっているのも抵抗あるからな。


 ゴーレムたちに頼むという手段があるが、一頭捕まえるにも苦労はあるしね。



「というわけで、頑張って成仏しろよー」

「安らかな冥福をお祈りいたしマス」

「バッホォォォォォォォン!!」


 俺達の言葉が聞こえたのか、絶望の悲鳴を上げてボルドは今日も牧場を駆け抜けて逃亡していく。


 その後方はメスのバッホーンたちとユニコーンのプラチナが追いかけ、何処までも何処までも走っていく。



 秋名物「バッホーン逃走劇」だとこの場で思うのであった。



「・・・そういえばさ、子供が生まれたとしてバッホーンってどのぐらいで繁殖可能になるの?」

「記録によると、2~3年ほどの様デス。意外に早いのですが、理由としては速く逃亡できるようにとオスたちが絞り出した知恵の結晶とも学説で問われていマス」


・・・つまり、最低でも2年はこの光景があるのか。


 ボルドの寿命・・・・がりがりと削れそうだな。手を合わせて冥福を心から祈りましょう。



 そういえば、神龍帝の俺の場合ってどこから成龍となるんだろうか?ふとなんとなく疑問に思ったな。



 そう考えているあいだも、ボルドの悲鳴は秋一杯空に響き渡っていくのであった・・・・・・・



バッホォォォォォォォォォォォン・・・・・バッホォォォォォォォン・・・・・・

・・・バッホーンの繁殖時期は秋一杯。

果たして、ボルドはこの秋を乗り越えられるのだろうか。

なお、ユニコーンとバッホーンは単純に馬と牛のくくりで考えるのであれば子供はでき兄かもしれないけど・・・・まあ異世界だしなぁ。そのあたりは深く考えないほうが良さそうだ。

ハーレムの末路というものを暗喩しているかのような光景でもある。

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