表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
157/260

153 エーゼット王国:滅亡の前夜祭

今回はシリアスなのだろうか?

SIDEアル


「ゴーレムたち整列!!」


 神龍帝・・・・このゴーレムタウンを作ったきっかけでもあり、ゴーレムたちの生みの親でもあるアルが号令をかけると、今回の計画に携わるゴーレムたちが号令と共にきれいに整列した。



 場所はゴーレムタウンの一角に作られた広場で、まだ何を建設するのか未定の地だが、今回の号令のためにここにゴーレムたちが集められたのである。


 そのアルの横には、ゴーレムたちのもう一体の生みの親でもある、ファーストが立っていた。



 雰囲気的に、軍服のような物を着ているが、何気によく似あう。



 全部いることを確認し終えた後、アルは話し始めた。いつもはにこやかにやれるが、今回はマジでシリアスだ。



「さてと・・・今回、諸君たちにはとある国の滅亡という大仕事を頼みたい。本来であれば、俺のブレス一発で国はぶっ飛ぶだろうが、それでは破壊だけで能がないようなものだ」


 ここにいるゴーレムたちには集音機能がつけてあり、マイクなどはいらないのが助かるところである。


 普通に話す程度の声の大きさで、全員にきちんと伝わるからね。



・・・まあ、わざわざここに集める意味も本当はないよ?命令を出せば行動してくれるからね。でも一応、様式美と言うのは大切かもしれないと思ったのである。


 気持ちを切り替えて、演説をする。



「・・・今回滅亡させようと思った国は破壊以外のもっと恐ろしい恐怖を味わせなさねばばらない。なぜならば、親しい人たちを狙い、今どき物凄く遅れているかのような差別などもあるのだ。この国を根底から覆さなければ、悪い根を排除しなければまた同じことの繰り返しとなるだろう」


「『歴史から学ぶことは、一つしかない。それは、「人類は歴史からは学ばない」と言う事だ』というような言葉がある」


 ここで、昔聞いたことがある言葉を話す。


 深い言葉でもあり、真理を突いていると思えるんだよねこれ。いや本当に的確でぐぅの音も出ないな。



「この言葉から考えるとすれば、エーゼット王国をただ力づくで滅ぼしただけでは、この言葉の通り皮肉なものになるだろう」



 ここで力づくで滅ぼしたとしても、また自分たちに都合の良いように曲解して解釈し、学ばない第2、第3のエーゼット王国が出る。




「そこで、今回は根底から徹底的に滅ぼしていく。そう、時間がかかれど徐々に、されど確実に恐怖をしみこませ、国そのものをなかったことにするぐらいの滅亡をもたらすのだ!!」









 ・・・・演説終了後、ゴーレムたちは諜報部隊によってあらかじめ設置された転移版(ポータルプレート)によって各地へと散らばっていく。


 確実にエーゼット王国を根絶やしにするために、心の底から考えを覆すほどの衝撃を与え、滅ぼしてしまうために・・・・・





「・・・・・でも、救えるものは救えるようにしないとな」


 何もかも滅亡させるのではない。救いようのない者は徹底的にだが、きちんと救いようのある者たちは・・・救済の手を差し伸べるのがいいだろう。


 しかし、今のエーゼット王国にそのような人がいるのかどうかは、まだわからない。


 「ならば、探すためのきっかけを作ってみるのもいいだろう」とゼノは言っていたな。


 ・・・・・でも、このアイディアはどうかと思うぞゼノよ?


 吸血鬼(ヴァンパイア)って時点でアレだけど、コレってますます余計に不治の病とも言われるあれみたいじゃん。


 本人確認したら全くそういう事ではなく、自然とこうなっていたらしいけど・・・・あれ、なんかブーメランなような気がしてきた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

SIDEエーゼット王国:国王の寝室



「・・・・・・ん?」


 エーゼット王国の城にて真夜中、病に伏せていた国王プリンゲスト=エーゼットはふと目が覚めた。



 自身の身体はすでに病によって侵されており、もう間もなく峠と言う時だったのだろうが、なぜかいま目が覚めたときには、いつもの病による苦しさがなかった。



「なぜだ?なぜ体の苦しさがない・・・・?」

『ソレ、スナワチ、オマエ、オ迎エ間近』

「!?」


 いきなり聞こえてきた不気味な声に気がつくと、枕元に何者かが立っていた。



 城の者に知らせようと声を出そうとしたが、小さな声は出るが大声を出せない。


 眼をそらそうにも、体の自由が利かないのである。


『ワタシ、死神。以上』

「し、死神・・・・!?」



 まさかもう自分は死んでおり、こうして迎えが来てしまったのかとプリンゲスはそう思った。



 その者は全身が真っ黒なローブで隠されており、背中には今まさに何かを刈り取って来たかのような赤いしずくを垂らす大鎌を持っていた。


 仮面をしているようで、顔が見えないが目の部分が人ではないような赤い光を発し、なぜか恐怖の威圧感がある。



『デモ、マダ時間、アル』

「時間がある・・・?この病にむしばまれた体でまだ苦しみの時は続くというのか?」


 恐怖と威圧に抑えこまれながらも、不思議とプリンゲスは冷静に返答できた。



『ソレモアル。ガ、別ノ理由モ、アル』


 別の理由と言われて、プリンゲスは何なのか首をかしげる気持ちになった。


 実際には体を動かせないので傾げたかのような感じになっただけなのだが・・・・



『コノ国、モウスグ滅亡。誰モイナクナル』

「なっ!?」


 その衝撃的な言葉に、プリンゲスは絶句した。


 まさかこのエーゼット王国が滅亡するという言葉が死神の口から出るとは思わなかったのだ。


『悲シイケド、コレモマタ、運命。コノ国、ヤリスギタ』




 死神は語る。


 この国は長い間予言者の予言に沿って政治をしたことによって国力が衰退しており、また、過度な人族主義故にさらなる滅亡をたどっているのだと。


『ソシテ、オマエ死。ソノ後、馬鹿争ウ。ソレデ滅亡早マル』

「馬鹿争う・・・・それはこの私の死後の王位争いでか」

『ソノ通リ。ドロドロ、血塗レタ争イ、滅亡』


 片言なしゃべり方のようだが、それでもプリンゲスは死神の言いたいことがよくわかった。


 現在、彼の弟と、自分の子供たちの間で王位継承争いが起きている。


 その争いが滅亡を早めると忠告をしに来たのだとわかるのだ。


『デモ、誰ヲ決メテモ、結果同ジ。何モカモ、コノ国スベテ、変ワラナイト、滅亡』



・・・・王位継承を決めても、結局はだめのようだと理解する。


 根底から、この予言者の予言で政治を行い、人族至上主義で、さらに腐敗し切ったこの国そのものが生まれ変わらなければ結局滅亡するのだという事である。



『・・・・馬鹿、スデニヤラカシテイル。コノ国、ヤヴァイ奴ラノ、逆鱗触レタ』



 そして、もうすでにその馬鹿とかがヤラカシテ取り返しのつかない状況になっているようだった。


『滅亡、モウ迫ル。デモ、セメテ、抵抗シロ。変ワラヌママ終ワル?変ワッテ終ワル?ドチラガ良イノカ、自分デ、決メロ』

「ま、待ってくれ!!」



 と、ここでプリンゲスはベッドから飛び起きた。


「・・・ゆ、夢だったのか?」


 あたりを見渡すが、先ほどまでいた死神の姿はどこにもない。


 けれども、先ほどまでの話はまさに本当にあったことの様で背筋が凍るかのように思えた。


「・・滅亡はすでに始まっているのか?」


 死神の話を思い出し、考えこみながらもう一度横になろうと枕を正しそうとして、プリンゲスは気がつく。


 自身の枕元が赤く染まり、首がある位置には綺麗な赤い線が引かれていた。


 まるで、首を切り落とすためのしるしのような・・・・・



 そして、そこには・・・・


『滅亡。腐レテカ?』


 と、一言だけ書かれた、血文字が残っていた。




 プリンゲスは悟る。


 先ほどまでの死神との会話は夢ではなく、現実なのだと。


 そして、この国の行く末に気がつき、どうすればいいのか悩み始めた。


 もう間に合わないかもしれない。けれども、腐れ切ったこの国をせめて正常な状態へと戻せたらという思いで・・・・・



 



・・・まあ、この死神って一応アルの良心的なもので知らせたゴーレムが扮したモノだったりする。

最後通牒を叩きつけはしているが、一応救いの手がないことはないぞと言うみたいな意味を兼ねて。


・・・アルの演説?の言葉はコメントでいただいたものを採用しました。考えてくださり、この場でお礼を申し上げます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ