152 エーゼット王国:滅亡の序章
本日2話目
今回主人公出番なし
SIDEエーゼット王国:国王の弟
「・・・ぐふふふふふ、ラン王女を手に入れるのには失敗したがうまいこと派閥争いの火種は燃え盛ったんやな」
エーゼット王国、首都のとある大きな屋敷の中で、ベッドに入りながら報告を受けていた人物がいた。
報告をしていたのは、彼の直属の部下であり、城内で侍女に扮して探っていた、諜報員だった。
「はい、ですがラン王女を捕らえるためにはなった戦闘部隊の数名が捕らえられたのは痛いかと」
「まあよい、あいつらはしょせん使い捨て、捨てておく手間が省けたというものだ」
にやりと不敵な笑みを浮かべるこの人物こそ・・・・現在床に臥せている現国王の弟であるブリーンデ=エーゼットという、現在王位継承争いに首を突っ込んでいる人物であった。
兄が病で倒れていつ死ぬかもわからない中、自身の欲望が燃えさかり、王位継承争いに飛び込んだのである。
人族至上主義をこの国は唱えており、ブリーンデもその考えはあるのだが、今ベッドの周りでぐったりと倒れ込み、生気のない目をしている女たちは・・・・獣人やエルフなど、奴隷商人たちから違法に購入して、己の慰み者にしているのであった。
彼の考えとしては、確かに人間以外は嫌悪するほど嫌なものだとは思えているが、人間と似たところがあるのであれば、別に自身の欲を満たせるのであれば構わないというものである。
要はゲスだということは自身でも理解はしているようであった。自覚のあるゲスだからこそ、よりねちねちねっとり嫌な策略を練るのである。
ここからどうやって王位についてやろうかと、そのまままた思索と言う名の享楽にブーリンではふけっていくのであった・・。
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SIDEエーゼット王国:神殿
エーゼット王国は予言者と呼ばれるものの予言によって国の政治が行われている。
そして、その予言を行う予言者は王国の城の地下の方に作られた神殿にこもって生活をしていたのだが、最初の頃は質素を好み、豪華な造りではなかった。
・・・だが、今の預言者は変わってしまった。
国の政治を操れる立場なので、その周りにいるものから腐心していき、そしてついには予言者まで腐ったのである。
予言はきちんとできるのだが、賄賂によって予言の内容を変更したりなどと好き放題。
そして、それが祟ったのか、実は今の予言者にはまったく予言の力というものはなかった。
それでも適当に予言し、国の政治を進めるだけの頭はあったのだが・・・。
「予言者様、今日の予言をお願い足します」
「うむ、予言を執り行おうぞ」
本日、予言がありそうだと予言者が言ったので、予言の儀式が行われることになった。
予言の力は今はない。けれども、それっぽいものを適当にやる必要があるので、わざわざ予言の用意をした。
「のためによからくべてはひにをさかえさげんのちせよわらまもざわいかれよすとのみ~~~~~」
一応昔からの予言のように、いつもの文句を唱えていく予言者。
相変わらず噛みそうでかまない預言者の文句に、周囲はそこは尊敬していた。
「~~~~すかべみこてはのまみのころま、ふあわっと!?」
と、ここでいきなり予言者が何か痙攣し始め、そしてぶっ倒れた。
「な!?」
「どうしたんですか予言者様!?」
いつもなら唱え終わった後に、何かを予言するのだが、このようないきなりの変貌は見たことがなかった。
あわてて周囲の者たちが駆け寄ると、予言者は白目をむいて気絶していた。
「な、なにが起きたんだ・・・・?」
「とりあえず今はお休みさせねば!!」
いつもとは違う事態に、周囲の者たちが予言者を自室のベッドの上に寝かせた。
数分後、予言者は目を覚ました。
「おおよかった!!」
「いきなり倒れたから心配しましたぞ!!」
むくりと起き上った予言者の姿に、周囲の者たちは安堵の息を漏らす。
だが、何か様子がおかしいことにすぐに皆気がついた。
予言者の顔が恐怖で歪み、ガタガタと震えているのだ。
「どうかしたのでしょうか予言者様!!」
「い・・・・いかん、このままでは・・・」
ガタガタと震えが激しく、何かにおびえているかのようなそのしぐさは演技でもないことがすぐにわかる。
「まさか、予言で何かやばい事でも!!」
「そ、そのとおりだ!!私は確かにあの時聞いてしまったのだ!!」
一人の言葉に、予言者は反応して、そう叫ぶ。
「何か恐ろしい災いがあるのですか!?」
「ああ!!そうだ!!私は今回の最後の予言とも言うべきものを聞いてしまった!!」
これまで予言の力がなく、適当だった予言者。
だが、今日行った予言は・・・・本物の予言であり、そしてこれで最初で最後になってしまう予言であることを予言者は悟ってしまった。
いや、悟らされたとでもいうべきだろうか。今までの自らの行い・・・いや、この国そのもの現状に、ついに神々が行動してしまったのではないかと未来を知るような「予言」ではなく、神託のような「預言」を得て、予言者の心は理解してしまったのだ。
「私が行える・・・これで最後の予言だ。『国、やってしまった、歯車はうごいてしまった。そして、圧倒的な力、国をあらゆるところから、滅亡させてしまう。過ちを、やってはならないことを、犯したゆえに・・・・』」
ぶっ倒れていた間に、予言者はその予言を意識のどこかで聞いてしまった。
そして、それがどれだけ恐ろしいものになるのかも、予言者の最初で最後のこの予言の力によって心底理解をして、感じ取ってしまった。
そして、その恐怖から予言者は予言を言い終えた後、すぐに倒れた。
倒れて、そのまま髪が恐怖からか真っ白になって、さらに一気の年老いたかのようにしわくちゃになっていき、そのままぽっくり逝ってしまったのである・・・・・・
その予言者の突然の死と、その最後の予言を聞いた皆は思った。
もしかしたら、もう何か取り返しのつかないようなことが起きてしまったのではないかと・・・・。
「次回予告」
最初で最後の予言の力で、預言者は理解をして恐怖からこの世を去った。
預言者の死は、この国に何をもたらし、何を起こすのだろうか、
エーゼット王国の滅亡は、ここから始まる・・・・・
・・・たまにはこういう予告もしてみたかった。某銀河鉄道の次回予告風に流せたら面白いなと思う。