148 たまにはマジです
本日2話目
サブタイトル通り
SIDEザスト=ルンデバラート
ルンデバラート国の首都にある王城、アリス姫も暮らしているその城で、国王ザスト=ルンデバラートはその報告を聞いて驚いた。
「え・・・・・本当か」
「はい」
飾り物である王族だが、きちんとこういう重大な報告は知らされる。
そして、その重大な報告と言うのが・・・・・・
「現在、わが国で冒険者活動を行っていたラン=ジューメンダス王女が、襲撃された模様。ただのチンピラとかではなく統率されたどこかの組織の者達らしく、その連絡がギルドからなされました」
・・・・ルンデバラート国と国交があり、ついこの間も友好記念の式典があったジューメンダス獣人国の王女が、謎の組織に襲撃されたという報告があった。
大抵のチンピラとか盗賊程度ならぶっ飛ばすことができるラン王女でさえも、危ない目に遭わされたという事である。
「・・・・ラン王女は無事なのか」
下手すれば、国際問題にもなりかねない事件ではあるので、まずは安否の確認が重要であった。
「はい、危ういところだったそうですが・・・その」
どこか迷っているかのような表情を報告しに来た人物は浮かべた。
「何かあったのか!?」
「いえ、一応無事だそうですが、現在・・・・公認モンスター『神龍帝』が保護しているそうです」
「何がどうしたらそうなった!?」
まさかの公認モンスターが人を保護したことにザストは驚いた。
「神龍帝からの事情説明ですが・・・・」
もともとは何処かの場所にいたけど、親しい人に対しての危機察知ができるような魔道具をラン王女が所持していて、間一髪それのおかげで間に合って、他の襲撃者がないように一旦自身の住みかの方へ保護したのだという。
「ついでに、アリス姫もその連絡を先に受けていたようで、つい先ほどそこへ向かいました」
「なるほど・・・そういうわけか」
あとはギルドの方で神龍帝・・アルからの連絡を受けて今に至るという。
「現在その襲撃者たちは捕らえられ、情報を引き出されたのちにギルドへ引き渡されました」
「ん?情報を引き出され・・・って、ギルドでやったのではないか?」
「神龍帝・・・公認モンスターが何かしらの事をやって引き出したようで」
「・・・・深く探らないことにしよう」
神龍帝・・・アルの無茶苦茶さだが、アリス姫に渡されたネックレスや、あのエミューとかいう魔道具でザスト国王も充分理解していた。
何をどうやったのかは聞かなくてもなんとなく可能だろうという暗黙の了解を選択したのである。
「そこで、その情報によると襲撃をかけたのは『エーゼット王国』の極秘隠密部隊『ラウンダー』だそうです」
「エーゼット王国だと?」
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「エーゼット王国」
・ルンデバラート国のかなり北東にある王国。
・ルンデバラート国とは国交がなく、他の国からは嫌われている。
・国から独立しているギルド機関とはどういうわけか対立しあい、ギルドが設立されていない。
・王国と言うが、王が政治を行うというよりも「予言者」と呼ばれるものが政治を行うようで、宗教国に近い。
・差別が根強くあり、ジューメンダス獣人国やその他人間ではない種族の国からは拒絶されている。
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まさかの国にザスト国王は驚く。
「たしかエーゼット王国は・・・」
「はい、現在は旧ミッドナイト王国の領地を帝国と争っている国でもあるはずです」
エーゼット王国は現在、滅びてしまったミッドナイト王国の領地を帝国と奪い合いをしている国である。
なんでもかんでも、かつては自分の国の領土だったとかいうことを言っているようで、完全に対立しているのだ。
もちろん、そんな歴史的事実がないのは周辺国は確認済み。
大昔からいる公認モンスターの中には、ねつ造だろと言っている者もいるのだ。
「だが、そんな争いの中でなぜわざわざラン王女を狙って・・・・?」
攫って戦力的なものにしようという考えはまずないだろう。
エーゼット国はいわば「人族至上主義」と言う体制を取り、完全に差別をしているのだ。
帝国は帝国でそんなことはしていないのでまだましなのだが、エーゼット国は他国からも嫌われるような偏見の激しい国である。
そのため、獣人であるラン王女を狙う理由がわからないのだ。
「白状させても、『攫ってこい』と言うだけだそうです」
「うーむ・・・謎だな」
とりあえず、まずはジューメンダス獣人国にも連絡を入れることを決定したのであった。
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SIDEアル
「エーゼット国ってそういう国か・・・・そんなアホな国もあるのかよ」
「ええ、そのため我がルンデバラート国や、その他の国々は国交を取っていないのです」
「というか、向こうも取る気がないのよね」
アルの家にて、ラン王女と彼女を心配して訪ねてきたアリス姫を自宅に迎え入れ、アルたちは話し合っていた。
「今さら時代錯誤というか、なんというか・・・」
呆れかえるというか、めんどくさいな。
徹底した差別があって、そのせいで奴隷なども・・・いや、むしろいないそうだ。
差別しすぎて逆にそんな人間ではない奴隷を雇いたくないそうで、ほとんどいないらしい。
「でも、なんでラン王女を攫おうとしたのだろうか?」
ジューメンダス獣人国の王女であり、武闘大会の覇者でもあるラン王女を攫おうとするのは少々無謀じゃないか?
いや、襲ってきた手練れはかなりの腕だったようだけど。スキルも結構高い奴だったし。
「入念に準備をしてと言う感じだったが・・・・・・何を目的にしていたのでしょうか?」
「エーゼットは人族至上主義国。私を攫って例えば性的欲望を満たす・・・なんてことはないでしょう」
ラン王女はキツネの獣人だし、そんな潔癖症のこじらせた国が攫う意図が全く分からん。
「また潜入して探ってみようかな・・・」
百聞は一見に如かず。こういうのは自分の足で調べたほうがいいかも・・・・・あ、ゴーレム諜報部隊に調べさせればいいか。
一応今はそばを離れない方が得策のようだし、しばらくは・・・
「またこういうことがある可能性を考えて・・・ラン王女、ゴーレムタウンの方でしばらく暮らしてみないか?」
さすがに雲の上では手出しできまい。
今のところ行き来できるのは俺が許可した人たちとゴーレムたちだけだからな。ある意味最も安全な場所であろう。
「安全過ぎるような気がするのですが・・・」
「というか、誰がそんな所に行けるの?」
ちょっと呆れたような顔でアリス姫とラン王女はそう言うのであった。
ゴーレム諜報部隊って結構便利。
拷問部隊も時と場合によっては便利。
そして今気がついた。ルンデバラート国の国王って影薄いなと。