142 その頃ゼノは
本日2話目
なんとなくこちらの方も書いてみたくなる。
アルがゴーレムタウンでファーストから調査報告を受けていたその頃、ゼノは自宅に戻ってゆっくりといすに座って本を読んでいた。
ゼノの家は一件森の中にある小さな一軒家のようだが、実は魔道具の一種でもあり、部屋の数がかなりある。
そして、その部屋の中には書斎がいくつかあり、長い間をかけて趣味で集めた様々な本もあるのだ。
その膨大な蔵書の中から、今回の事について思ったゼノは、ふとそれに関連するようなことを記された本があったような気がして、こうして本を調べていた。
「あなた、コーヒーですよ」
「ああ、すまないなアリーシャ」
本を読んでいる最中に、妻の一人であるアリーシャがコーヒーを入れてきてくれた。
このコーヒーだが、実はゼノがこの世界に広めた一つの飲料だったりもする。
アルのように、前世の知識を生かして栽培して見て、ちょっと適当な商会あたりにその販売権をわたし、あとは野となれ山となれと思いながら放棄していた。
こうやって適当に前世からのものを人の手に渡すことによって発展させて、よりいいものを出来るようにしていたりもする。
長い年月を生きることができる吸血鬼だからこそ、おいしくなるまでの時間を待つことができるのだ。
「しかしな・・・あの穢れた大地の発生原因はやっぱり人為的なものになるか」
本を読み進め、結論は出た。
穢れた土地は様々な条件で発生することがあるのだが、その穢れ方によっても発生条件が異なる。
だけど、今回のタイプは人為的なものだと結論付けることができた。
「意図しないでのほうが可能性があるな・・・完全に死の大地でもあったからな」
「怖いですね、その穢れた土地って」
少し怖がるかのように、アリーシャは肩を震わせる。
少しふざけているのもわかるけど、どことなく可愛いとゼノは思った。
「そういえば、変えるついでだし、俺達の孫の孫の孫の・・・・・要は子孫の姿もちょっと見たぞ」
「本当ですか?」
せっかく遠出したので、ゼノは変えるついでに寄り道をしていた。
アリス=ルンデバラート、ラン=ジューメンダス。この二人は・・・・ゼノたちの遠い遠い子孫でもあった。アリスの方がアリーシャ、ランの方がミストとの子孫である。
王家の方にゼノたちが祖先であるようなものだとは長い年月の間にすたれて伝わっていないのだが、それでもゼノたちは自身の子孫がどのような行く末をたどるのかを見届けていた。
それに、真祖としての感覚か、自分の子孫だと血のざわめきがしてわかるのである。
とはいえ、流石に見知らぬ人が目の前に現れて「あなたのひいひいひいひい・・・・・・・・・・爺さんの様なものです」と言われて誰が信じられようか。
そのため、こっそりと覗き見する程度であった。
「アリスの方は、何やら神龍帝・・・アルからもらったらしいペンダントを磨いて、うっとりしていたし、ランの方はなぜか冒険者として活動していたぞ。王女なのになぜ冒険者をとツッコミ入れたくなったな」
「あなたの子孫だからですよ。そこまでじっとできるような人じゃないでしょう?」
と、いつの間にかミストが部屋に入ってきて、ゼノの隣にいた。
「・・・何も言い返せないのが辛いな」
「ふふふ、長年暮らしていると何でもわかりますからね」
「連れ添う相手の事は熟知するものね」
アリーシャとミストはちょっと悔しそうな顔をするゼノに対して、微笑む。
・・・・昔はゼノの奪い合いをしていた二人だったが、結婚してこうして一緒にいる間に性格が丸くなったよなとゼノは内心思った。
彼らの見た目は交わったその時、昔から変わらない。
永遠に生き続ける吸血鬼の種族の定めでもあり、受け入れた運命である。
それでも、永遠の別れが来ることがないので幸せを彼らは味わえる。
ずっと寿命という概念もなく、世界を見続け、その幸せを守るためにも動けるのだ。
「・・・そういえば、アリスもランも噂によると神龍帝のアルに恋慕したようだな。あいつも俺と同じで苦労するだろうな」
ふと、風の噂で聞いたその話を思い出し、そして同格の存在であるような友の事を思い出してゼノは笑う。
「私の子孫であるアリスの方が勝つかしら?」
「いや、こっちのランの方が勝つ」
ゼノのその言葉に、アリーシャとミストは互いの子孫を思ってつぶやき、互いに睨んだ。
自分の子供の方が可愛いと思えるのは、何処の親バカでも一緒かとゼノは思う。
そして、なんとなく苦労するであろう子孫たちを思うと、思わず苦笑いをするのであった。
いろいろ苦労するのはどこの主人公もその周りの人も同じである。
過去作品・・・リメイクしてみようかな・・・いやでも今3作品も連載しているからきついな。