139 どこかでこういう光景見たな
たまに見せるアルの力
翌日、転移魔法でアルはゼノを連れてギルドへ出向き、ついでにいたガッバーナも一緒に、その穢れた大地とやらに向けて、飛び立った。
都合上、頭の上の方にザップリンさんとガッバーナに乗ってもらい、ゼノは蝙蝠の様な、黒い大きな翼を生やして自力で飛んでもらった。
ゼノの飛行速度はアルと同じぐらいは可能な様で、ついでだし目的地までザップリンさんの案内の元ほぼ最高速度で向かう。
・・・よくよく考えたら、結構な年齢なのにしがみついて平気なザップリンさんも十分人外のところにいるような気もするのだが。
一応鑑定しても人間だし、年をとってもさすがギルドマスターであるという事なのだろうか。
「うわぁ・・・近づくだけでもなんか気持ち悪くなりそうだな」
「流石にここまでのは予想していなかったな・・・」
「かなりひどい状態じゃな・・」
「うぇっぷ・・・アンデッド系にとっては穢れは他に比べて平気なはずなのに、なんか気持ち悪さを感じるでありますよ・・」
穢れた大地のすぐ手前に俺たちは着陸したのだが、なんというかかなり気持ち悪い。
見た目は普通の土地に見えそうだが、なんとなく靄の様なものがかかっているようで、しかも周囲にいるだけでかなりの嫌悪感というか、吐き気を催しそうなぐらいである。
俺以外の他の3人も顔を青くして・・・ガッバーナの場合おう吐したらどうなるんだ?デュラハンってそのあたりが少し気になる。でもやっぱりおう吐するなよ。
「さてと、ここで聖属性のものをぶっぱなせば浄化が可能なんだっけ?」
「そのはずじゃよ。・・・じゃが、このレベルの穢れは通常の聖属性の魔法とかじゃどれだけかかることやら・・・・」
「そこで、俺の『セブンズブレス(聖)』で一気に浄化できるかもしれないんだろ?」
とりあえず、聖属性が致命的な弱点となっているガッバーナと、かなりの耐性を持っているようだけどそれでも安全のためにゼノには後方の方に下がってもらう。
ザップリンさんも念のために後ろに下がってもらった。
一応、「鑑定」で俺の聖属性版セブンズブレスを見てみるか。
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「セブンズブレス(聖)」
聖なる属性と言うだけあり、大規模浄化が可能なブレス。他のブレスと大きく異なる点として、「破壊」という概念がこのブレスにはなく、傷一つなく済ませることができる。
ただし、悪しき心などを持っている人やアンデッド系モンスターにとっては致命的なものとなり、消滅をさせることができる。
例外はいるのだが、人は大抵小さな悪しき心を所持しているのでほとんどの場合致命的なものにすることが可能。
浄化のエネルギーそのものがすごすぎて、集中し過ぎた場合には純粋な「光」のエネルギーの塊となり「破壊」の概念ができてしまう。
神龍帝の「神」の名に恥じない、最も気高く、勇ましく、そして純粋なブレスであろう。
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・・・要約すると、何一つ壊すことなく、ただ浄化をすることが可能らしい。
しかし、集中させすぎると破壊のエネルギーと化すのか。うん、やっぱとんでもないレベルだよな。
すぅっと息を吸い込み、ブレスの範囲を軽く見渡す。
集中させすぎず、この大地その物を浄化するような・・・射程距離ってどのくらいかはわからないけどね。
「『セブンズブレス(聖)』」
ブレスを吐く瞬間、まばゆい光が口内からあふれ出す。
そして次の瞬間、一気に白く輝く光のブレスが広がりながら解き放たれた。
さながら、扇子のように下の持つ部分から徐々に範囲を広げて一気に大地を浄化していく。
ブレスを吐き終えた後、俺達は目を疑った。
先ほどまでは気分が悪くなるような、不快な印象を与えていた土地が、まるで光り輝くような大地へと変貌していたのであった。
「うわぁ・・・ここまで浄化するのか・・」
「清められ過ぎた大地じゃな・・・いや、むしろこれ違った意味で人が住めぬような大地じゃろ」
ザップリンさんのつぶやきに、俺達はうなずく。
清廉潔白すぎてさ、これ人が住むにはどこか遠慮がちになりそうな感じだよ。落ち着かないし、きれいになり過ぎた。
・・・やり過ぎた感が本当にすごいんだけど。
「流石にこの光景は俺でも初めてだな…」
ゼノも驚いたような表情を浮かべ・・・・あれ?ガッバーナは?
「あ~・・・なんか心地よ過ぎて天にまで上りそうであります・・・」
「うおっ!?」
「影響もろに受けて昇天しかけているぞ!?」
「戻ってくるのじゃよ!!」
地面に倒れ伏し、真っ白になって何やらあの世に召されかけていた。
・・・慌ててその場から離れて正気になってもらったけど・・・・アンデッド系モンスターにとってはむしろそのままにするべきだったかな?
とりあえず、いまのブレスのせいで逆にやり過ぎたらしく、このあたり一帯は清められ過ぎた模様。
なので、他の穢れている部分は加減してギリギリの状態にしたよ。しかし、デッドとやらに遭遇しないんだけど・・・最初のブレスの時に近くにいて巻き添えになって消滅したのか?
某宇宙戦艦の切り札の際に使用する対閃光ショック防御のやつみたいなのを作っておけばよかったかもしれないまばゆさである。
綺麗になりすぎると、逆に住みにくくなるのも困りものだよね。