130 夏祭りセカンド 初日の裏側
裏側・・・・?
と言う感じの2段構えで今回の夏祭りのお話は展開させていただきます。
同時期に主人公とそれ以外の話を出してみたくなって試し中。
「ふぅ、どうにかこうにかして祭りに間に合ったでありますなぁ」
愛馬をとりあえず借りた宿屋の馬用の小屋へとめ、デュラハンであり公認モンスターのガッバーナは祭りの屋台をめぐっていた。
各地を放浪し、武者修行として己の力を高めることに専念している彼だが、毎年のこの祭りの参加は欠かさなかった。
アンデッド系と言うこともあり、彼の死の定義は聖属性の魔法によるもの以外ではほとんどない。
つまり、それだけ長い長い時間を過ごすことになり、その時間に対してたまに逃避したくなることもあるのだ。
そんな中で行われているこの夏祭りは彼のその逃避に役立つのである。
もうすっかり町の人にもおなじみになっており、特に恐れられることもなく祭りの屋台をはしごしていた。
・・・・顔は無駄にイケメンなのだが、食べ物をほおばる姿はある意味台無しにしていた。あと、鎧の上からレンタルした浴衣を着ている変人のようにも見えるのである。
というか、頭と胴体が離れていて、頭の方はわきに抱えているのに下からは何も出てこない。
どういう構造になっているのかは、自身にとっても謎であった。
まあ、おいしければ気にしないという結論にすでに達していた。
「しかし、今年は屋台にゴーレムが多いでありますな」
毎年この祭りに参加しているガッバーナは、今年と去年の違いを明確に見抜いていた。
気になって屋台を経営している一体のゴーレムに聞いていたところ、アルが原因らしい。
公認モンスター仲間でもあり、実力も知っているガッバーナは物凄く納得できた。
抱擁している魔力も膨大で、人化しているときの強さもあったのでこのぐらいは朝飯前だろうと思えたのである。
・・・正確には、アルが作ったゴーレムがゴーレムを生み出しまたそのゴーレムがゴーレムを・・・と言った過程を経ているのだが、それでもアルが創り出した存在であるのは間違っていなかった。
回復魔法を使われてしまって、天に召されかけたのは今となってはいい思い出である。アンデッド系のモンスターにとっての死でもあり、最後の幸福とも言われる魔法が回復魔法であるからだ。
「今年はスリもいないようでありますなぁ」
そうガッバーナがつぶやいたときに、近くにいた数人の人達がびくっとしていた。
過去にガッバーナがスリを捕らえる際にちょっとばかしやらかしたことがあり、そのことはその業界で有名だったために、この祭りの期間は確実にスリは自主規制するのである。
あと、祭りの後なら別に大丈夫だろうと思っていたやつが、偶々ガッバーナに見つかって・・・と言うこともあり、ガッバーナの姿が完全にこの首都からいなくなるまではスリは当分活動停止状態となるのであった。
ふと、祭りの中で歩いているとガッバーナは思うことがある。
・・・ガッバーナ自身、自分がどこでどのようにして生まれたのかはよく覚えていない。
気が付いたときには、自身はデュラハンと言うモンスターであることを自然と理解し、首なしの愛馬を所持して各地を放浪していた。
だが、それはそれでまた良し。人生・・・いや、モンスター生は人とは違う。
己の出自や過去と言ったものよりも、ガッバーナはこれから先である未来の方に目を向ける。
過去よりも現在、現在よりも未来。そのことを彼は重視する。
ガッバーナが生まれた理由を知ることになるのは、また別のお話。
ガッバーナが生まれたその理由や、彼の過去についてはまだまだ先になりそうだ。
2日目の夏祭りは果たしてどのようなものになるのだろうか。
・・・・ゴーレムがやっている屋台が普通に受け入れられている事実の方に驚きそうなものだけど。