129 夏祭りセカンド 初日
セカンド・・・アルが転生して2年目だしね
去年も参加した夏祭りであるが、アルは今年の光景を見てこう思った。
「・・・ゴーレム増殖しているな」
今年も無事に夏祭りが開催され、出展されている屋台も去年以上に増加し、さらに参加人数が増えているのである。
・・・しかし、よく見ると人ではなく、ゴーレムたちがやっている屋台が多く見られた。
「結構いますね・・・」
「これはこれで面白そうよね」
アルの横には、浴衣を着たアリス姫とラン王女がそろっていた。
アリス姫が着ているのは淡いピンク色の浴衣で、ラン王女が着ているのは薄い黄色の浴衣である。きちんと尻尾の穴も通してあり狐っぽい。
あ、ラン王女って狐の獣人だった。間違っていない認識だな。
初日は一緒に回ることを約束しており、とりあえず集合してから各屋台を巡りに行くのであった。
「綿あめやベビーカステラとかはまだわかるけど、なんだありゃ?」
アルが指さした先の屋台にあったのは、香ばしい香りはするのだが・・・謎の果物を焼いている屋台である。
ゴーレムがいるのでゴーレムタウン産の物だろうけど、果物ってこんな匂いしていたっけ?
「『スタリヤ焼き(たれ付き)』か」
「スタリヤって、確か南国の方にしかない果物ですわね」
「収穫してから3日で腐ってしまい、原産地の周辺諸国でしか食えない物よ」
・・・なるほど、ゴーレムタウンの農園地区に確かにそのような果物を植えた覚えがある。
それに、転移板があるから時間を置かずにすぐにこうして調理ができるのか。
ゴーレムたちが屋台で出しているのをよく見ると、既存の屋台と被らないような物ばかりである。
めったに手に入らない果物を利用したものや、バッホーンのミルクを利用したアイスクリームを販売していたりなどと多種多様だ。
また、射的もやっているようだけど・・・
「すんごい列が並んでいますわね・・・」
「あの景品が魔道具だものね・・」
ややひきつった表情で、アリス姫とラン王女がそうつぶやく。
どうも射的の景品が魔道具の様で、タウンでも通常生産が可能なものを通常価格よりも安い値段で挑戦できる射的で出しているようなのだ。
そして、狙う人が多くて列が長く着いてしまったようなのであった。
ゴーレムたちちょっとやり過ぎたかな?明らかに異常なレベルにまで熱意が高まっていると思うぞ。
考えるのをいったん放棄し、とりあえずアルははアリス姫とラン王女と共にこの祭りを楽しみ始めるのであった。
いちいちツッコミを入れていたら、確実に物凄いことになりそうだしね。これでも常識は学んでいるよ。
「本当にですかね?」
「ゴーレムたちの時点で桁外れよね」
アリス姫とラン王女の半目攻撃・・・地味に辛いな。
規模が明らかに変わっているな。ゴーレムたちの影響力かなりありそうだ。