012 ギルドマスターのザップリン
毎日投稿の予定はないのに、なぜか毎日投稿してしまう。
なんでだろうか?
ギルドの2階へ上がった俺たちは、そのギルドマスターがいるという執務室に入った。
「お久しぶりですねザップリンギルドマスター」
「これはこれは、お久し振りですよアリス王女様」
そこにいたのは、好々爺のようなお爺さんであった。
「おや、そちらの方はどちらで?まさか王女様の思い人だとか」
「ち、違いますよ!!」
爺さんが俺の存在に気が付いてそう言ったら、アリス姫は顔を赤くして否定した。
いや、そういうものではないけどさ、そうやって否定されるとちょっと心に来るな・・・
まあ気を取り直して自己紹介をするか。少しへこんでしまったけど。
「初めまして、今回アリス姫にお願いしてあなたに会いに来ました・・・えっと・・・」
いや、ここは正直に言えばいいかな?
「多分噂になっているかもしれないモンスターの神龍帝のアルです」
「おお、あの森に何やら物凄いモンスターが現れたらしいというが、その張本人か!!」
爺さんが驚いたかのように言った。
とりあえず、立ち話もあれなので部屋のソファーに座って互いに向き合った。
「儂はこの首都支部ギルドマスターのザップリン=ドメスティアンじゃ。大昔は冒険者としてそれなりに名をはせていたが、今はここのギルドマスターをしておるただのおいぼれじゃよ」
ふぉっふぉっふぉと笑うザップリンさん。なんかいい人っぽい感じだな。
「それにしても・・・開けぬ森からモンスターが最近よく出現して、何やら物凄いモンスターでも住み着いたのかと思って調査に向かわせようとしていた矢先に、まさかその元凶本人が現れるとはのぅ・・・・」
そりゃふつう思わないよね。俺がこの人の立場だったら同じように思っちゃうわな。
「して、神龍帝・・アル殿と名乗ったかな?」
「あ、殿とかそういう敬語は使わなくていいですよ」
「そうかそうか・・・・で、『人化の術』というスキルで今こうして人の姿になっておるのじゃな」
「そうですけど・・・・なんですぐにそうだとわかったんですか?」
いきなり使用しているスキルを当てられてびっくりしたんだけど。
「このザップリン、歳は老いても得た知識は忘れんよ。昔あった友人にな、モンスターの中にはそういうスキルを持っておるやつがいて、人の姿になって暮らす奴もいるという話を聞いたことがあるんじゃよ。まあ、実際に人化をしているモンスターに会って話をしたのは4人目だがのぅ」
「4人目ってことは・・・俺以前にもいるんですか」
「そうじゃな。というか、その友人本人も人化の術をしておった奴じゃったが。まあ、ついこの間その友人は旅に出てしまったが」
なんでも、その友人は『リッチキング』というアンデット系統のモンスターだったのだとか。
普通、アンデット系統のモンスターも普通に人を襲うそうだが、なぜかその友人は人を襲わずに人化によって人の姿になって諸国を旅しているのだとか。
「1か所の場所にととどまれん奴でな、放浪癖があって4年に1度ぐらいしか会うことができんのじゃよ」
オリンピックかよ。もしくは七夕の4年バージョンかよ。
「それであまり驚いた様子もないってか・・」
「まあ、モンスターの中にはそうやって人と変わらずに接触してくる奴がおる。まあ、中には悪用して犯罪を繰り返したモンスターもおったのじゃが・・・それは20年ほど前に討伐したのじゃ」
討伐もされるのか・・・・。
「で、それはそうとして、今日お主がここに来たのは儂に何か話があるのじゃな」
「あ、忘れていた」
というか、その最後の1人が気になるけどまあいいか。
とりあえず、俺はザップリンさんに用事を話した。
「なるほどのぅ。森のその湖で住み着いたのか」
「はい、このことは王族と、国の上層部しか伝わっていないことですが・・・」
ぶっちゃけ大半アリス姫が説明したのだが。
俺自身の強さとかチートじみているのは自覚しているけど、自分だと説明しにくいからね。
無詠唱魔法だの、回復魔法だのと言われているけど・・・神龍帝としての姿なんかはいいのかな?
「なかなかの強者じゃな。これが下手に伝わればバカ者どもが名をあげるためにお主を討伐しに行こうとするじゃろう」
「やっぱそういう人は出るのか・・・」
まあ、来たところで返り討ちにしますが。畑の肥料にでもしたろうか。
「まあ、ともかくこうして話せておることじゃし、ギルド公認モンスターとして知らせておこう」
『ギルド公認モンスター』とは、ギルドが認めたモンスターで物凄い力を持ったモンスターが登録されるものらしい。
下手に小競り合いを起こして被害を出すよりも、適度な付き合いとして敵対しないようにするための制度だとか。
で、これの利点としては襲ってきた人たちなら問答無用でぎったぎたに出来るとかで、生死は問わないのだとか。怖いね。しかも、ギルド公認だからモンスター側には罪が問われずに、逆に襲い掛かて来た方を罪に問えるのだとか。
下手すると国一つが無くなるような相手にそんなことをしたら当然周囲を危険にさらすことになるからね。しかも、そういうことができるのはギルドは国からも外れた独立した機関だからってのもあるそうな。
「じゃがな、その代わり冒険者では無理なモンスターの討伐などを引き受けてもらう必要があるのじゃが・・・・どうかのぅ?」
「まあ、いいですかね」
たまにそういう事があるとしても、平穏無事で暮らせるならそれで。
ついでに、公認モンスターは戦争時の際はどこの国でもついていいそうな。
まあ、もともとモンスターはどこの国にも所属しないからねぇ・・・。
なお、手続きは全部ここで行ったけど、本来ならば調査隊が組まれて調べられて、そこで改めてこうして公認モンスターの説明などをするそうな。
というわけで、公認モンスターとしての登録も終えたので俺は森の家に帰ることにしたのであった。
門から出て森の中で人化を解いて素早く飛び立ったよ。
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「それにしても、中々理性的なモンスターじゃったのぅ・・・」
アルたちが部屋から出ていったあと、ザップリンはしみじみとつぶやいた。
モンスターとはいえ、あそこまで人の理性を持っているのは珍しいことである。
こうして話し合いをして共存できるのがいいことなのだが・・・
「相当な実力を持っておったな」
ザップリン・・・・昔は「爆裂剣舞」とかいう二つ名を持っているほどの実力のある冒険者だった。
好々爺な今の彼からは想像できないほど熱血漢で、熱く、物凄くモンスター討伐などに人生をかけていたのである。
ただ、引退して今ではこうしてギルドマスターの座にのんびりと居座っているのだが、それでもその昔からの感覚は衰えていなかった。
そして、アルの実力がとんでもないレベルだということも感じ取れたのである。
穏やかな話し合いであったのだが、機嫌を損ねたらまずいと思えるほど内心物凄く冷や汗ものであった。
ただ、乱暴者とかではないようなのは安心ができた。それに・・・
「王女様は隠しておられるようだけど、この儂からしたらまだまだ甘いのじゃ」
アリス王女がアルに好意を抱いているというのはすでに見抜いていた。
とはいえ、その好意を抱かれている肝心の相手は相当な強さを持つはずなのにそう言ったところは鈍感なようであったが。
まあ、こうして人と会話してくれるモンスターはどこかしら抜けている部分があるのは知っている。
それに、今までに見聞きしたことがない様な事を知っていたりするのだ。
「あの神龍帝・・・アルはどうなのじゃろうな・・・」
そこが気になるザップリンであった。
一応警戒しておくこととすれば、公認モンスターなのに討伐しようとする馬鹿が出ることぐらいか。
下手すると本当に危険なのに、そういう事をしようとする馬鹿がどこにでもいることも、彼は知っていたのであった。
ギルドでのいざこざテンプレはまだ先かな。
そろそろアルの存在を知る人が他にも出そうだけど