122 争いとはくだらないものである
はっきり言って影が薄いところが今回でます。
SIDE魔道ギルド
・・・国からの独立機関であるギルドは主に3つに分かれている。
冒険者・商業・魔道の3つで構成されており、それぞれのギルドは役割を持っているのだが・・・ある問題があった。
そう、魔道ギルドの存在感が薄いという問題である。
魔道具の開発やその材料作製、新魔法の発見などを行うのが主な役割なのだが、数が多い冒険者の相手をする冒険者ギルドや、商業によって経済に影響をあたえる商業ギルドに比べるとほとんど目立たない。
また、商業ギルドにて魔道具の販売を行う際にはこのギルドをいったん通してその検査を行うのだが、現在ほとんどの物が保証されている品質であり、特に出番がなかった。
それに、今派閥争いが起きており、経営がほとんど今一つな状態で、下手するともはや魔道ギルドその物が立ち行かなくなる可能性があった。
・・とはいえ、実質そこまで困ることにはならないだろうという意見が多かった。
魔道具もその種類と数が増え、冒険者たちによって試供品のデータがとられて、それを売買する商業ギルドの方でもその扱いはすでに慣れたものになっている。
また、それらの管理や設計図などは厳重に保管はされていたのだが、派閥争いのせいで双方とも資金不足となり、各ギルドにその権限を売り渡してしまって、もはやあってもなくてもいいような状態であった。
けれども、その状況をよく思わない者たちもいる。
本来この世に出回るべき魔法や魔道具の普及や流通が滞ってしまい、このギルドの本来のありようを失っているように感じられており、出来るだけ派閥争い以前の、あの活気にあふれていたころに戻したいと思う者は多くいた。
そんな中、首都である魔道具が注目をされ始めた。
空中を行き来し、飛び回る馬車の様な魔道具であり、それなりに人々の目につく。
あちこちを縦横無尽に飛び回ってもいたそれは、この国の王女であるアリス姫が所持する魔道具だと判明した。
・・・この魔道具に対し、それが欲しいというものが出始めるのにはそれほど時間を要しなかった。
馬車代わりになり、空を行き来するので盗賊にも襲われにくく、山を越え海を越え谷も超えられそうな性能を持っている・・・・・。
移動手段としては優秀であり、貴族や商人たちの間で欲するものが出てくる。
だが、その魔道具はどこで作られたのだろうか?
人々は魔道ギルドに殺到したが、魔道ギルドからしてみれば全く知らない魔道具であり、同様の物を再現して作ろうと試みる者達がいたが、誰もが失敗し、同じものを作ることはできなかった。
そのうち、欲しい者たちは報酬金額を吊り上げて同様の魔道具を求めた。
だが、魔道ギルドではそれが再現できず、作成することができない。
・・・そこで、魔道ギルドはある結論を導き出した。
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SIDE冒険者ギルド:ザップリン
「ふむ、それでここの冒険者たちに依頼を出したいというわけかのぅ」
「ああ、魔道ギルド内での派閥争いなんて今はやっている場合ではないーんだよ。せっかくのこのチャンスをつかみー切れないということになったら、おわーりだからな」
冒険者ギルドの執務室にて、ザップリンはこの首都にある魔道ギルドのギルドマスターであるビーノに連絡を受けていた。
いわく、王女が使用しているあの魔道具の作成者の探索を冒険者たちに依頼したというものである。
普通に依頼として出せばいいものだが、わざわざ冒険者ギルドの責任者であるザップリンに話を通したのは訳があった。
「・・・・やはりまとまっていないんじゃな」
「・・・そのとーりだよ。争っている場合ではなーいというのに、本当にあきれーるんだよ」
魔道ギルドは現在、「魔法使い派閥」と「魔道具派閥」という2つの派閥が争っており、互いにこだわりが強い者同士が集まっている。
「魔法使い派閥」は魔法を扱える人たちが集まって、魔法は魔道具をしのぐと声高に叫ぶ派閥であり、「魔道具派閥」はその逆で魔道具こそ魔法を超えるものであると声高に叫ぶ者たちがいる派閥である。
そして今回の魔道具の話だが、その構造に特殊性があるので対立を深めたのだ。
・・・王女が使っているのは、馬車の様な感じだが「空を飛ぶことができる」ものだ。
空を自由自在に飛び回ることは・・・・実は、これまで人が使用したり作製した魔法や魔道具では無理に近かった。
それが今回、王女が使用しているのはその無理に近かったことを軽々とやってのけているのである。
そして、実は魔道具と言うのは魔法使いが作成することが多く、その魔道具も魔法使いが作成したようなものだと考えられたのだ。
・・・そこで、それを作製した人物の魔法がすごいのか、その魔道具がすごすぎるのかが話題となり、派閥内の争いを激化させたのであった。
その話しを聞き、ザップリンは少し頭を痛くした。
「あほぅか、そ奴らは?」
「めんぼーくないです」
ザップリンのその言葉に、ビーノもそう思えていた。
ビーノはどちらの派閥もどうでもよく、このような争い事が本当にくだらないと思えるまともな人であった。
「そのたーめ、その作成者を見つけ出して、自身の派閥へーと、無理やり引き込む可能性もあーりましたので、ここで私自らが依頼をして、優先してもーらおうとしたのですよ」
両派閥からも依頼が出されるだろうが、面倒ごとになる前にギルドマスターである自身が先に依頼を受けてもらうことによって早く接触をして、そのことを伝えようと思って行動したというのが、ビーノの理由であった。
「・・はぁ、そういう依頼であるのなら別にいいのじゃが・・・・出す意味ないぞ」
「へー?」
ザップリンのその言葉に、驚いてマヌケな声をビーノは出した。
「だって、その作成者の事は儂もよく知っておるもん」
「・・・はぁぁぁぁぁひぃー!?」
その時、ギルド中にそのアホゥな感じの声が響いたのであった。
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SIDEアル
「・・・あれ、今何か面倒ごとの予感がするような」
ゴーレムタウンで諜報部隊の部隊名を考えていたアルは、ふとその嫌な予感を感じたのであった・・・・。
主人公、出番少ない時があるよな。