117 面倒ごとはつぶしたい
ちょっと帝国の事情がわかるかも
「・・・なるほど、そんなことがあったのかよ。しかも第2諜報部隊だと?」
「鑑定だとそういうことになっていたけど、詳しい目的とかは現在ギルドで取り調べ中なんだよな」
「まだわかってはおらぬがのぅ」
現在、帝国のギルド執務室にて、アルはそこのギルドマスターであるサイトウと、ついでに連れてきてしまったザップリンさんを交えての事情説明をしていた。
いや、連れてきてしまったというか、その場のノリでついザップリンさんも一緒に来たんだよね。まあ、詳しい説明などのそういう部分をしてもらうのにはいいけどさ。
元第5皇子ともいうサイトウの話によると、帝国の第2諜報部隊は皇帝直属のではなく、その皇帝の息子たちである皇子たち直属の部隊であり、その皇子たちの誰かが動かした可能性があるそうだ。
「って、元第5皇子という割にはサイトウさんって年取っていますよね?」
みたところ、30代なり立てっぽいが・・・・確か、第2皇子だっけ?覚える価値もないあの野郎はもっと若かったような気がする。
「そこはな、皇帝・・・元馬鹿親父のせいでもあるんだよ。大体、俺は今34だが、上の第1皇子は21歳だぜ」
「え?」
・・・・うわぁ、物凄くややこしい状態だったのか。
話を聞くと、帝国の皇子たちだが、実は現在第34皇子までいるらしい。
だが、年齢順ではなくその親の位によって、その基準が変わるそうだ。
親が高位であればあるほど、皇子のその第なんとかって部分は上になるらしい。
帝国の皇帝はどうやらたくさんの女性と関係を持っており、そのため皇子の数も増えたのだとか。異母兄弟が多いんですか。・・・一応、第3皇女まではいるらしいけど、継承権はないためこちらはこちらで好き勝手やっているらしい。
どこぞやの王女を思い出すのは気のせいだろうか?
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「へくちゅん!!」
ギルドで受けた依頼で、討伐に向かっているラン王女のくしゃみがあたりに響いた。
幸いにして誰も聞いていなかったようだが、誰かが噂しているのかなと思ったようである。
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まあ、色欲狂いではなく、きちんとそれぞれの妃たちをきちんと愛しているらしく、評判は悪くないようだ。・・・・評判は。
「でだ、俺の場合はその基準で行くと第5皇子の位だったようだったけど、母はそういう権力とかには興味がなく、ただ純粋に馬鹿親父の事が好きだったらしい。まあ、俺としてはそのへんが嫌だったから、こうして皇子を辞めて何やかんやで今のこの地位にいるってわけだ」
その何やかんやってところが一番大事な部分な気がするが、まあそこは後で聞こう。
「しかし・・・諜報部隊を動かしたとなると、しかもその相手が公認モンスターであるアルに向けたとすれば、絶対にろくでもない思惑が動いていると考えて良いと思うな」
「ろくでもない思惑か・・・面倒ごとには巻き込まれたくないんだけどな」
「まったくだ。自由気ままに生きている方が楽だというのに、今も皇帝の座を狙っての水面下での兄弟争いがあるっているのが本当にめんどくさいぜ」
はぁっと溜息をつくサイトウさん。この人はこの人で苦労性なように思えるな。
「お主の方では相手がわからんかのぅ」
ちょっと空気になり気味だったザップリンさんが思いついたかのようにサイトウさんの方に話しかけた。
・・・ごめん、存在を少し忘れていたよ。
「俺の方はわからんな。大体もう第5皇子ではないのに、今もなお狙っているのかと疑うバカとかいてそれはそれでいやなんだよな」
もう皇族から籍を抜けているのに、それでも復籍してくる可能性があるからいちいち邪魔をしてくるうざい奴がいるのだとか。
「まあ、そいつらが出してきた諜報部隊って可能性があるが、いくらなんでも公認モンスターのところに諜報部隊を送り込むほどの勇気はねーよ。いや、勇気じゃなくて愚かさか?いやそれだと言い方がな・・・」
で、そこから考えられる候補としては、第10~4皇子までが挙げられるようだ。
継承権もそこそこあるわけだし、もしかしたら愚かな貴族とカがそそのかして、つぶし合うためにわざと送らせたっていう可能性もあるようだ。
だけど、これ以上細かくは不明か。
「俺だって兄弟の事を一応は疑いたくはない。母は違えど、一応全員あのバカ親父から生まれているからな・・・・」
そう悲しい顔をしながら言うサイトウさん。結構まともな人である。
「あのー、アルや、そろそろ儂はギルドの仕事があるのじゃが」
「あ」
ごめんザップリンさん。本当に何のために一緒に来てもらったのかはわからないけど、忘れかけていて本当にごめん。
いったんザップリンさんをギルドに送りつつ、すぐサイトウさんの方へと俺は戻った。
「まあ、まだまだ分からないからそっちはそっちで調べてもらえるとありがたいかな」
「ああ、こちらとしても公認モンスターからの頼みだし、精いっぱいやってやるぜ」
この人本当に気さくに話しかけやすくていいなぁ。
「しかしなぁ、アルって名前ってまるで昔の友人の名前の様な感じがするぜ」
「いたのかよ」
「ああ、とは言っても・・・・俺の記憶も朧気でなまあ馬鹿らしい話だが、前世の友人って信じるか?」
「前世の・・・ってえ?」
この口ぶりから察するに・・・・
「ちょっと失礼。『鑑定』」
「え?」
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種族名:『人間』
名前:サイトウ(=バンダンガ)
性別:男性
HP:560
MP:345
スキル:「言語翻訳」「大斧使い」「大剣使い」「ロマン砲」
称号:「バンダンガ帝国のギルドマスター」「元Aランク冒険者」「転生者」
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「・・・転生者か」
「うおっ!?まさか本当に鑑定ってすごいな!!」
鑑定されてしまったことに気が付いたサイトウさんは驚いていた。
・・・というか、転生者の人って「言語翻訳」「転生者」って言葉をよく見るような気がする。
「こういう事を言うやつの中には、本当に転生者っているからな・・・・・」
「まだだれにもそのことを話していないのだけど、さすが公認モンスターと言われるだけあるなぁ」
驚き、キラキラとした少年のまなざしを向けてくるサイトウさん。
「まあ、いいかな。公認モンスターにバレても問題はない。いかにも、俺は転生者だ!!」
「うん、鑑定しているからわかっているからね」
「冷めた反応っていうのが寂しいな・・・まるで前世の友人の神無月の様な・・・・」
ん?今なんと?
「え?もしかしてお前って、高山か?柿眼と一緒にいることが多かったけど・・・」
「え?そういうってことは、もしかして神無月本人ですか?」
「「・・・・・・・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」
まさかの、前世からの友人でした。
そりゃ気が合うわな。
まさかの前世の友人である。
死亡時刻とかはアルとは違うのだろうか?
というか、前世からの友人に会えるのって、どのぐらいの確率ってことになるのだろうか?
なお、(=バンダンガ)ってなっているのは籍を抜けてはいるけど、一応まだ復籍できる可能性を刺しているのだったりする。結婚して名前が変われば消えるかもしれないけどね。